ステファヌ・ドゥネーヴ指揮シュトゥットガルト放送響の来日公演1日目をサントリーホールにて。
ベルリオーズ: 序曲「ローマの謝肉祭」 op.9
ラヴェル: ピアノ協奏曲 ト長調 (Pf:エリック・ル・サージュ)
(アンコール)モーツァルト:ピアノ・ソナタK330~第2楽章
ラヴェル: マ・メール・ロワ
ドビュッシー: 海
(アンコール)ビゼー:アルルの女~ファランドール

ステファヌ・ドゥネーヴ、都響への客演で名前は知っていたものの、実演を聴くのは今回が初めてだ。CDでは音楽監督を務めたロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管との演奏がナクソスレーベルから発売されている程度だったので、日本での知名度は今一つ。そのようなわけでチケットも売れなかったらしく(ドイツのオケがフランスものばかり、というのも売れなかった理由では?と私は思っている)、10日くらい前にイープラスで、もともと外来オケとしてはそんなに高くはないS席12,000円とA席10,000円がなんと半額に…正価で買った私のことはどうしてくれるんだ!そんなわけで、行くつもりがなかった明日のS席を半額で買って平均購入価格を下げた。
客席、1階の通路より前は半額購入者が多かったからか結構埋まっていたが、1階の通路よりずっと後ろのほうがガラガラ、2階の通路より後ろはそもそも売り出していないのか誰もいない。
ノリントンの時代だったら、もう少し売れていただろう。

オケの編成、弦楽器16型だが、驚いたことにコントラバス8本は舞台最後列横一線に並んでいるし、第1Vnと第2Vnは対向配置、チェロは向かって左手奥、ヴィオラは右手奥、ティンパニは右袖。この配置は前任の首席であったノリントンの遺産だろうか?

冒頭のローマ謝肉祭、ドイツのオケながら意外に音が明るいのはフランス人ドゥネーヴの功績だろうか。音は明るいが、テンポは指揮者の趣味なのか、重くややもったりしている。イングリッシュ・ホルンが非常に表情豊かで巧い!弦楽器も艶やかでいい音を出している。しかし、エンディングはややうるさくて音が飽和状態。
続くラヴェルのコンチェルト。私よりちょっとだけ年上のル・サージュ、猫背だがすらっと痩身でとても若く見える。彼のソロは軽妙洒脱、エレガントでタッチも軽やかだが、このコンチェルトにおけるオケはいただけない。やはり指揮者の意向なんだろうか、とても重く、その上アンサンブルが粗くてぎこちなく、1楽章や3楽章の木管はついていけてないところもあったし、1楽章終わりではトランペットの音が完全に欠落。ドゥネーヴ、特にパッセージの終わりの部分で驚くほどテンポを落とし、響きの美しさを確かめるかのような指揮ぶり。細かいところをじっくりと歌わせたいという気持ちの表れかと思うが、これによって音楽の活気や躍動感は後退している。
ル・サージュのアンコールはモーツァルト。

後半のラヴェル、繊細な響きを目指していることがよくわかるのであるが、ドゥネーヴの意志が透徹するにはもう少し時間が必要かと思った。
最後のドビュッシー、ここでは音が割と普通にドイツの中堅オケの音になっていて、今一つ特徴がない。昔チェリビダッケが振っていたころの録音の、地味な音色をちょっと感じてしまった。ちなみにチェロは10名(楽譜では16名必要とされている)。
各パートで特段に巧いという奏者はあまりいない。感心したのはイングリッシュ・ホルンとホルン、弦楽器もとてもいい音を出している。コンミスの音はきれいだが線が細いか。
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