フェニーチェ歌劇場来日公演、ヴェルディ「オテロ」をオーチャードホールにて(17日)。
演出:フランチェスコ・ミケーリ
指揮:チョン・ミュンフン
フェニーチェ歌劇場管弦楽団・合唱団
オテロ:グレゴリー・クンデ
デズデモナ:リア・クロチェット
イアーゴ:ルーチョ・ガッロ
カッシオ:フランチェスコ・マルシーリア
ロデリーゴ:アントネッロ・チェロン
ロドヴィーコ:マッティア・デンティ
エミーリア:エリザベッタ・マルトラーナ 他
うーん…昨日のガラ、デッドな東京文化会館でオケと合唱の粗が目立つと思っていたが、今日の良く響く(といっても私はここの残響が好きではないが)オーチャードホールでも同じ。
ネガティヴなコメントばかりから入るのもどうかとは思うのだが、オケの音はスカスカでヴェルディ独特の腹の底にずしりと響く重さもなければ、イタリアオペラならではの切れ味の鋭さもない。天使のような大胆さも、悪魔のような細心さもまるで感じられない、大味な演奏である。1幕冒頭の合唱は粗く音程も悪い。
これだったら、昨年の新国立劇場のオテロの方がオケも合唱も遙かにレベルが高いし、ヴェルディらしい音が鳴っていたと思う。
これがもしベッリーニ大歌劇場とか、スポレート歌劇場とか、マッシモ歌劇場とかの、イタリア準一級のオペラハウスの来日公演でS席2万円前後であれば、今日はいい歌手がいてよかったな、で終わるだろう。しかし、仮にもイタリアンの名門オペラハウスと言われるフェニーチェ劇場である。今日のS席は45,000円、私が座ったA席でも39,000円。それでこのレベルでは、正直かなりがっかりだ。耳の肥えた多くの日本のオペラファンがこの程度の水準で満足し、高いカネを払うと思ったら大間違いである。
チョン・ミュンフンの指揮、3階バルコニーから見下ろす限り、いつもの彼らしい俊敏な指揮ぶりで、しかもいつも通り完全暗譜である…すごいことだ。にもかかわらず、出てくるこのオケの音はアマオケのようだ。
オケと合唱はさておき、主役級の歌手はそれなりである。オテロ役のクンデ、軽めの声ゆえ、低音域では若干聞こえづらいところがあったけれど、高音域の伸びの良さは見事で聴き応えがあった。まあ、私の好きなずしりと重いオテロの声ではないが。
ガッロのイアーゴ、彼は新国立劇場でもいろいろな役で何度も聴いているので、声質の良さはもちろん知っているが、もうちょっとワルモノに見えてもよかっただろうか。
この二人が歌う、第2幕最後の復讐を誓う場面が引き立たなかったのはやはりこれもオケが原因のような気が…
デズデモナ役のクロチェット、サンフランシスコ・オペラの歌手だそうで、アメリカ人らしく明快で力強い声はなかなかではあるし、こういう声は好きである。が、デズデモナにマッチした声なのかというと…ちと微妙。さらに、貞淑なデズデモナのイメージからはまあ、ちょっとかけ離れた太めの容姿ではある。
ミケーリの演出、新国立劇場にありそうな青を基調としたモダンなイメージ。中央に、シューボックスを横にしたようなハコがあって、その中に寝室や居間が据えられている。第4幕、デズデモナが殺害されたのち、ふと見るとなぜかデズデモナはオテロの左側に立っていて、オテロが自害した後、二人は手をとって闇に消えていくという演出。トリスタンとイゾルデ同様、死によって究極の愛が成就されるということだろうか。今日の演出、オテロがイアーゴの奸計によって不信感を持ってデズデモナを殺害した、というより、オテロもデズデモナも、こうなることを予期したというか、期待していたというか、全てが予定されていたのだ、というような気すらしたのである。
演出:フランチェスコ・ミケーリ
指揮:チョン・ミュンフン
フェニーチェ歌劇場管弦楽団・合唱団
オテロ:グレゴリー・クンデ
デズデモナ:リア・クロチェット
イアーゴ:ルーチョ・ガッロ
カッシオ:フランチェスコ・マルシーリア
ロデリーゴ:アントネッロ・チェロン
ロドヴィーコ:マッティア・デンティ
エミーリア:エリザベッタ・マルトラーナ 他
うーん…昨日のガラ、デッドな東京文化会館でオケと合唱の粗が目立つと思っていたが、今日の良く響く(といっても私はここの残響が好きではないが)オーチャードホールでも同じ。
ネガティヴなコメントばかりから入るのもどうかとは思うのだが、オケの音はスカスカでヴェルディ独特の腹の底にずしりと響く重さもなければ、イタリアオペラならではの切れ味の鋭さもない。天使のような大胆さも、悪魔のような細心さもまるで感じられない、大味な演奏である。1幕冒頭の合唱は粗く音程も悪い。
これだったら、昨年の新国立劇場のオテロの方がオケも合唱も遙かにレベルが高いし、ヴェルディらしい音が鳴っていたと思う。
これがもしベッリーニ大歌劇場とか、スポレート歌劇場とか、マッシモ歌劇場とかの、イタリア準一級のオペラハウスの来日公演でS席2万円前後であれば、今日はいい歌手がいてよかったな、で終わるだろう。しかし、仮にもイタリアンの名門オペラハウスと言われるフェニーチェ劇場である。今日のS席は45,000円、私が座ったA席でも39,000円。それでこのレベルでは、正直かなりがっかりだ。耳の肥えた多くの日本のオペラファンがこの程度の水準で満足し、高いカネを払うと思ったら大間違いである。
チョン・ミュンフンの指揮、3階バルコニーから見下ろす限り、いつもの彼らしい俊敏な指揮ぶりで、しかもいつも通り完全暗譜である…すごいことだ。にもかかわらず、出てくるこのオケの音はアマオケのようだ。
オケと合唱はさておき、主役級の歌手はそれなりである。オテロ役のクンデ、軽めの声ゆえ、低音域では若干聞こえづらいところがあったけれど、高音域の伸びの良さは見事で聴き応えがあった。まあ、私の好きなずしりと重いオテロの声ではないが。
ガッロのイアーゴ、彼は新国立劇場でもいろいろな役で何度も聴いているので、声質の良さはもちろん知っているが、もうちょっとワルモノに見えてもよかっただろうか。
この二人が歌う、第2幕最後の復讐を誓う場面が引き立たなかったのはやはりこれもオケが原因のような気が…
デズデモナ役のクロチェット、サンフランシスコ・オペラの歌手だそうで、アメリカ人らしく明快で力強い声はなかなかではあるし、こういう声は好きである。が、デズデモナにマッチした声なのかというと…ちと微妙。さらに、貞淑なデズデモナのイメージからはまあ、ちょっとかけ離れた太めの容姿ではある。
ミケーリの演出、新国立劇場にありそうな青を基調としたモダンなイメージ。中央に、シューボックスを横にしたようなハコがあって、その中に寝室や居間が据えられている。第4幕、デズデモナが殺害されたのち、ふと見るとなぜかデズデモナはオテロの左側に立っていて、オテロが自害した後、二人は手をとって闇に消えていくという演出。トリスタンとイゾルデ同様、死によって究極の愛が成就されるということだろうか。今日の演出、オテロがイアーゴの奸計によって不信感を持ってデズデモナを殺害した、というより、オテロもデズデモナも、こうなることを予期したというか、期待していたというか、全てが予定されていたのだ、というような気すらしたのである。
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