3月2日(土)の「星空の下の朗読会」に向けて、「杜子春」の稽古を重ねています。
文量が多いので、それだけでも大変です。
しかし、それ以上に、内容的に、朗読が難しい作品ですね。

まず、芥川龍之介の文章が難しい!
一文が、やたらに長いのです。
なかには、200字を超えるような長文があります。
ここまで長いと、文字を目で追う分には付いていけますが、耳で聞くと意味が分からなくなりがちです。
主語がどれで、修飾語がどういう掛かり結びをしているか、きちんと伝えられるように読まなくてはいけません。
ましてや、使われている単語が古い言葉なので、スラスラ読んでしまうと絶対に意味が分からなくなります。
しつこいぐらいリフレインするのも、大きな特長です。
その辺りをきちんと理解して、とにかく分かりやすく読んでいく必要があります。
かなり緻密にプランニングして、朗読に当たらなくてはいけません。

また、登場人物の演じ分けも、ポイントになっています。
セリフのあるキャラクターは左程多くはないのですが、後半に、似たような性格の人物が立て続けに登場してきます。
要は冥界の魔物なのですが、聞き手が混乱をきたさないよう工夫しなくてはなりません。
ちょっと”くさい”ぐらい特長を付けて、演じ分けていくつもりです。

そして、なにより、クライマックス・シーンの母親(馬)のセリフが、信じられないほど難しい!
たった一言なのですが、それだけに、絶望しそうになるほど難しく感じます。
このセリフが決まらなくては、「杜子春」を読む資格はありません。
すべては、このセリフに掛かっています。

技術的なプランは既に立ててありますが、あとは、本番時のテンションです。
これは、当日のお客様の空気に合わせるしかありません。
しかも、プラネタリウムでの上演ですから、読み手の僕にはお客様の顔が見えないのです。
うーむ、これは厳しい条件です。
集中力を最大限発揮して、作品の世界を体現していきたいと思っています。

朗読というメディアは、視覚を封じられている以上、そもそも難しいものです。
ましてや、芥川龍之介作品という高いハードルが掛けられています。
なんとかそれを乗り越えて、「面白い!」と思って貰える朗読に出来るよう、最後まで考えていきますね。