【25カ月目の福島はいま】原発から100km近く離れた県南地域の汚染も忘れるな~西郷村、天栄村 | 民の声新聞

【25カ月目の福島はいま】原発から100km近く離れた県南地域の汚染も忘れるな~西郷村、天栄村

福島の県内地域。白河市に隣接する西郷村では、中学校の校庭に汚染土の入ったフレコンバッグが200以上も並べられていた─。福島原発から100km近く離れ、汚染の存在が忘れられがちな同村や天栄村、須賀川市を廻った。そこにはたしかに高濃度の汚染が存在しているにもかかわらず、事故前と変わらぬ日常生活もまた、続いていた。地元男性の協力を得て村々を巡って見えた25カ月目の現実。放射能汚染は決して、距離に等しく拡散するわけではない。そしてまた、現在進行形だ (写真はすべて2013.04.16撮影)


【6μSV超す西郷第二中学校のテニスコート】

高線量の小国小学校(伊達市霊山町下小国)かと見紛うような光景だった。

西郷村の西郷第二中学校。校庭の一角には、真っ黒いフレコンバッグが200以上も並べられていた。ロープが張られ「立ち入り禁止」と書かれているが、中学生たちの学ぶ空間に〝同居〟していることに変わりは無い。

同校によると、校庭ではなく裏山を除染した分だという。しかし、教諭に声をかけても「赴任してきたばかりで良く分からない」、事務室で尋ねても同様の回答。別の教諭に聞いてもらって、ようやく得られた回答だった。

この日はちょうど、校舎の裏手にあるテニスコートの除染作業中だった。真っ青なフレコンバッグが14個、積み上げられている。それぞれに放射線量が記入されており、ほとんどが2.0μSV以上。線量計を近づけると、やはり書かれている数値とほぼ同じになった。中には6.0μSVを超す数値も。福島原発から100km近く離れているのにこの放射線量。汚染が同心円状には拡散しないことが良く分かる。

現場監督に聞いた。「表土を5-10㍉剥ぎました。それをフレコンバッグに入れてから測定した数値を記入しています。6.0μSV?まあ、日常的にそんな高いわけではないですからね、ちょうど汚染濃度の高い土が集まったんじゃないですか?ただ確かに低くは無いですね。除染するまで子どもたちはこのテニスコートを使っていたわけですし…。これらは明日にも運び出します。どこに運ぶかは、運搬業者でないと分かりません」

村役場の放射能対策課によると、村内の独立行政法人芝原牧場から20ヘクタールの土地を提供してもらい、汚染土の仮置き場として使用することを決定。東京ドーム4個分の相当する広さ。現在、搬入のための道路を整備しているという。「なるべく早くしたいが、仮置き場への搬入は早くても7月上旬になるのではないか」(同課)。それまでは、子どもたちとの〝同居〟は続く。テニスコートの汚染土は、村が別に確保した仮仮置き場に一時保管するという。「少しでも子どもたちから遠ざけたいということです」と担当者は話す。仮置き場に搬入された汚染土は、国の中間貯蔵施設が整備された際には、すぐに運び出すという。

25カ月経って、ようやく実施された除染。2-6μSVにまで汚染されたテニスコートを使用していた中学生の身体に悪影響が出ないことを祈るばかりだ。
民の声新聞-西郷村二中①
民の声新聞-西郷村二中②
民の声新聞
(上)西郷第二中学校では、校庭の一角に200以

上のフレコンバッグ。除染で生じた汚染土が詰め

込まれている

(中)(下)校舎裏のテニスコートでは、ちょうど除

染作業中だった。真っ青なフレコンバッグには放

射線量が表示されている。中には6.11μSVに達

する汚染土も

=西白河郡西郷村大字小田倉字上野原


【1年半以上も汚染土と〝同居〟続く福祉施設】

知的障害児入所施設・白河めぐみ園では、半年前と同様、敷地内の一角に独自に除染をした際に生じた汚染土が積み上げられ、ブルーシートで覆われた状態が続いていた。

「持って行き場が無いですからね。結局こうして、利用者と同じ空間に置き続けるしかないですよね」。男性職員があきらめ顔で話した。

同園では福島原発の事故から半年後の2011年9月、除染作業を行った。それから1年半余。結局、運び出すことはできなかった。「まさか、このまま〝永久仮置き〟が続かなければ良いけれど」と職員。ようやく村の仮置き場が確保されたが、それとて、小中学校が優先でいつ移送できるのか分からない。

園内に設置されたモニタリングポストは、0.4μSVを超えていた。男性職員が苦笑する。「今日は低い方で、普段は0.5μSVぐらいありますよ。下がったとはいえ、まだまだこの値ですからね」。これが、福島原発から100km近く離れた村の現実だ。

同村では、やはり半年前にも訪れた馬場坂集会所付近(小田倉馬場坂)で0.5μSVに達した。小田倉稗返の車道脇では、地表真上で2.0μSVを超した。中通りの汚染と言えば福島市や郡山市ばかりに目が向きがちだが、ここにも忘れてはならない汚染が存在する。そして、隣は栃木県那須町。汚染が県境で止まらないのもまた、現実だ。
民の声新聞-めぐみ園①
民の声新聞-めぐみ園②
民の声新聞-小田倉稗返
(上)白河めぐみ園では、除染で生じた汚染土が

1年半余も敷地内に置かれたまま運び出せない

でいる

(中)施設の雨どい直下では6μSVを超えた

(下)小田倉稗返の車道脇では、地表真上で

2.0μSVを超した


【地表真上で2.0μSV超す天栄村】

天栄村も訪れた。

農地が広がる中、空間線量は高さ1㍍で0.8μSVを超えた。畑とアスファルトの境目に線量計を近づけると、地表真上で5.0μSVに達した。

村役場横にある「総合農村運動広場」では、ジョギング用の周回コースで0.4μSV(高さ1㍍)だったが、駐車場のアスファルトの切れ目では2.0μSVを超えた(地表真上)。これほどの汚染地域を、中学生たちがヘルメット姿で自転車通学している。
今回の取材では、昨年8月に訪れた須賀川市長沼のショッピングセンター「アスク」にも立ち寄った。前回、地表真上で18μSVを超した駐車場の一角は、今回も14μSVに達した。除染など全く行われていないことが良く分かる値。日々、幼い子どもも買い物に訪れるスーパーマーケット。汚染が確かに存在するにも関わらず放置されている現実。福島原発事故はまだ、終わっていない。

民の声新聞-天栄村
民の声新聞-アスク①
民の声新聞-アスク②

(上)天栄村内では、高さ1㍍で0.8μSVを超した

(中)(下)須賀川市長沼のショッピングセンター

「アスク」。駐車場の地表真上で14μSV超の高線量


(了)