準メルクル指揮PMFオーケストラ演奏会をサントリーホールにて。
ブルッフ: ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 op.26(Vn:ワディム・レーピン)
(アンコール)パガニーニ:ヴェニスの謝肉祭
ベルリオーズ: 幻想交響曲 op.14
(アンコール)
ホルスト/田中カレン編:組曲『惑星』から「ジュピター」(PMF讃歌)

音楽界の巨人、レナード・バーンスタインの提唱により1990年に創設されたPMFも、既に24回目。まさか日本の地方都市札幌に、世界中から若者が集まるクラシックの教育音楽祭がこれだけ根付くとは正直思わなかった。1990年の開会式におけるバーンスタインのスピーチは、今読んでも実に感動的だ。当時71歳だったバーンスタインは、神から与えられた残りの時間を教育に費やすと宣言しているのだ。結果として、そのわずか3ヶ月後にバーンスタインは他界してしまったが、その精神は脈々と息づいて後の世代の一流の音楽家たちに引き継がれている。素晴らしいことだ。

創設当初から私はこのPMFの東京における最終公演をかなり聴いているが、当初の熱気はあるもののただばかでかい音を出してがなり立てるばかりの演奏から、ここ数年は若々しい熱さに加えて、音楽的に非常に洗練されたハイレベルの演奏を繰り広げるようになった。
今回の演奏も、なかなかのものがある。

前半はレーピンのソロによるブルッフ。レーピンはいつもながら美音で、マイルドな切り口の表現である。オケともども、ゴツゴツしたドイツ的な演奏というよりは割と軽めのエレガントな演奏である。レーピン、だいぶ安定していたが最後になってやや音程に甘さが見られたか。
オケは12型、弦楽器は艶を持ちながら力強さも兼ね備えており、弱音のセンシティブな表現もなかなかである。
アンコールは弦セクションのピッツィカートの伴奏に乗せた、ヴェニスの謝肉祭。

後半は一気に18型に拡大した幻想。
メルクルは前半同様、音量をとことん抑える部分を作って大きなディナーミクを表現する。前半同様弦の艶がよい。パートによって巧拙は若干むらがあるが、オーボエ、イングリッシュホルンなどは中でも見事。ちなみに3楽章の舞台裏で奏されるオーボエ、今日は2回LDブロックで演奏されたので相当はっきりと、しかもかなりの音量で耳に入ってくる。
正直アンサンブルは最高とは言えないが、常設のオケではないし、多くが学生であることを考えれば当たり前かもしれない。やはり、日本のオケを含む、我々が日頃聴いているオケというのは相当熟練している集団なのである。打楽器の音量や出だしのタイミングなど、日頃素晴らしい演奏を聴いている我々はうまくいって当然だと思っているけれど、やはり今日のオケを聴くとあれは当たり前のことではないのだな、と痛感する。
最終楽章のエンディング、相当な熱気であるが音はややつぶれている。

アンコールは、準メルクルが”Pacific Music Festival Music!”と紹介して演奏されたのだが、ホルストの木星が無理矢理短めにつぎはぎされて、打楽器のちょっと違和感感じるリズムが加えられた編曲。演奏はちょっと粗いなぁ…後で知ったが、田中カレンの編曲!驚きだ。