【読書】正しい判断は、最初の3秒で決まる / 慎 泰俊 | THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

「40歳からの〇〇学 ~いつまでアラフォーと言えるのか?な日々~」から改題。
書評ブログを装いながら、日々のよしなごとを、一話完結で積み重ねていくことを目指しています。

正しい判断は、最初の3秒で決まる 投資プロフェッショナルが実践する直感力を磨く習慣 / 慎 泰俊



この本の根底にあるものは、目に見えるものや論理的に通じるものしか許さない「知性」に対する異議申し立です。(p235)

あとがきの冒頭近くに書かれている一文ですが、この一節に僕は激しく共感しました。もちろん、論理的に考えることは大切です。日本人は一般にロジカルに考えることが苦手だと言われています。情緒に流されず、論理的なコミュニケーションをとっていくことはグローバル化するこれからの時代に必要なことです。そう思って「ロジカルシンキング」の講座にも通いました。しかし、それが偏重され過ぎて「論理的でないものは間違いだ」という話になるとそれは違うだろう、と思うのです。論理は直感を精査する道具だと考えているからです。

目次
第1章 その判断は、間違った思い込みかも?
第2章 直感が課題解決をするメカニズム
第3章 実践!直感力を高める習慣
第4章 「競争優位の源泉」としての直感
第5章 直感を活かす組織の7つの条件


直感と信念はどういうものか、それが個人や組織の発想や意思決定にそのような影響を与えるのか、直感や信念をより優れたものにするのはどうすれば良いのか、(p8)

この本に書かれていることを一文にまとめるとこうなります。少し言い換えると「イノベーションを起こすためには、直感と信念が決定的に必要であり、それは高めることができる」ということです。

直感と信念を一緒に論ずることに違和感を覚える人がいるかもしれません。なぜ直感と信念を同列に扱っているのでしょうか。この本では、直感と信念を下記のように定義しています。

直感:経験に基づき。無意識のうちに最善の選択肢を選びとるものであり、人の「発想」を左右するもの。
信念:経験に基づき。無意識のうちに最善の選択肢を選びとるものであり、人の「行為」を左右するもの。


直感から生まれる発想は、最初は周囲になかなか理解されません。直感は暗黙知であり身体知であり、言葉にしにくい。それを正しいと信じ、自分なりに精査し、言語化し周囲を巻き込んでいけるようになるまでには時間がかかります。そのためには「信念」が必要になるということです。直感と信念は表裏一体、ということです。

「知行一致」という言葉がありますが、想いと行動を一致させる、それがイノベーションを起こすため必要不可欠なことなのだと思います。

直感は、経験の積み重ねによって湧き出てきます。経験に基づかないひらめきは直感ではない。ただの「思いつき」に過ぎません。どのような経験を積んでいけば直感が鍛えられるのか、その考察が第3章に書かれています。

それをひとことで言えば「幅広くときに深く」。T型人間という言い方がありますが、そのイメージですね。雑多なことを浅く広く、でもその中の特定分野については深い体験をすることが直感力を鍛えるのだと言われています。そのための具体的な方法にも触れられています。

その中には「読書」について書かれた部分がありました。
「読書も経験になりうる」ただし、条件付きで。

ショウペンハウエルの『
読書について』を援用してこう指摘しています。
「読書だけしていては、自分で考える力が失われていき、ほとんど1日を多読に費やす人勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失っていく」(p143)

多読・速読が奨励される風潮の逆をいっているわけです。読書好きとしては耳が痛い指摘ですが(苦笑)熟考する、という過程を抜きに血肉化することはない、というのは間違いないことのように感じます。

「浅く広く」という経験のためには多読も必要ですしょう。でも、それがすべてではない。自分が深堀をしていこうとする分野については、熟考を重ねながら読む、ライフネット生命の岩瀬社長の言葉を借りれば「脳に負荷をかける。脳に汗をかきながら読む」ということが必要なんだと思うのです。

その後の第4章・第5章では「組織」における直感の大切さが書かれています。

伸びている組織(企業)には必ず、論理では割り切れない不合理ともいえる「理念」がある、ということです。それはなぜか。

一方でいわゆる「大企業病」に陥るような組織は、イノベーションの基となるような個人の直感をくみ上げられなくなるのはなぜか。そうしたことが書かれています。

全編「直感」の大切さが書かれています。すべての人に是非読んでほしい本であるのですが、少なくとも「あとがき」だけは読んでほしい。立ち読みでもいいので目を通してほしい、と思っています。

私がプライベート・エクイティの仕事や自分で興した事業を通じて得たのは、目に見える論理の鎖だけをたどるっても、結局何も行き着かないという確信でした。本当の論理、世界を前に進める論理は、おそらく、目に見える論理を飛び越えたところに存在しているのだと思います。真理にたどり着き、世界を前に進めるためには、私たちは時に勇気をもって飛躍しなければいけません。それがたとえ、一部の「賢い人々」から笑われることになったとしても。
体験に根づいた直感と信念があってこそ、世界は前に進みます。「できるかどうかじゃない、やるんだよ」と、それができない100の理由をなぎ倒しながら前進する人々こそ世界を進歩させるのだと、私は強く主張したいのです。
(p235~236)


何か感じるものがあるはずです。いままでの自分と同じではいられない、と思ったら、全編読んでくだい。きっとなにかが変わるはずです。