第34回霧島国際音楽祭2013東京公演を、東京オペラシティコンサートホールにて。
指揮:下野竜也
管弦楽:キリシマ祝祭管弦楽団
ソプラノ:エカテリーナ・シマノヴィチ
テノール:アレクセイ・ステブリアンコ
バス:パーヴェル・シムレーヴィチ

ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調作品21
ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」第1幕

3人のロシア人歌手、名前を聞いたこともないのだが、全員マリインスキー劇場の歌手。正直、あまり期待していなかったのでチケットを買うのも迷っていたのだが、やはりワルキューレは聴いておかねば、と購入。
結果として、期待以上の満足度!ワーグナーの音楽にしっかりと酔うことができた一夜となった。

後半のワーグナー、歌手は予想通り声量が大きく、かなりの迫力である。ワーグナーを歌うにはやはり最低限の声量は必要なので、この点は問題なくクリアだ。ただし、こちらも予想通りなのだが、繊細さにはやや欠けているし、ドイツ語のディクションもなんとなくちょっと違和感がある。
以前、マリインスキー劇場が来日してゲルギエフのもとワーグナーの指環全曲を上演したときも同じ感想だった。すなわち、若干の違和感はあるが期待以上の出来で満足、というものである。
ジークリンデ役のソプラノ、シマノヴィチは大きい声はしっかり出ているのだが、音を抑える部分ではやや緊張感を欠く。ジークムント役のテノール、ステブリアンコは最初登場したときに見てびっくり。見た目60歳は超えていそうだったが、1950年生まれだから実際63歳である。やはりそれなりの熟した声であり、ジークムントの「春と愛の歌」なんかも、叙情的ではなくて渋い中年の歌だ。フンディング役のシムレーヴィチ、見た目もかっこいいが、割と鋭く切れ味がある声。なかなかよい。

しかし、個人的に今日最大の驚きはオケである。ベルリン国立歌劇場のコンサートマスター、ローター・シュトラウスをコンマスに据え、都響のメンバーを中心としたアンサンブルだが、これが巧い!ちゃんとワーグナーの音が出ていたのだ。
弦は14型、弦の音はとても深く、味わいがある。アシスタント・コンマスに元読響コンマスの藤原浜雄氏(前半はコンマスだった)、元イ・ムジチのコンマス、アゴスティーニの姿も見える。Vnに金髪痩身の外国人女性がいたが、メンバー表になくいったい誰だろうか?ヴィオラトップは店村氏。チェロのフォアシュピーラーに日フィルソロの菊池氏。コントラバストップはN響首席の吉田氏。基本的にはとにかく都響メンバーが多いが、目立つところではフルートのトップにコンセルトヘボウのエミリー・バイノン!木管はもちろんだがホルンセクションを始めとする金管もレベルが高い。
下野さんの指揮、今回は結構見直した。とても手堅く安定感がある指揮ぶりである。ひとつだけ欲を言えば、ジークムントがトネリコの樹からノートゥンクを引き抜くシーンにもう少しドラマティックなクライマックスを持って来て欲しかったのだが。

前半のベートーヴェンも秀演である。弦は12型でコントラバスが3本、木管がとても力強く、また弦セクションも雄弁。音楽がとても引き締まっていて、こちらも期待をはるかに上回る演奏だった。

会場は鹿児島県人会のような様相。ホワイエは鹿児島物産展だった。
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