いつも熱いブログを書いてくれるTUG‐manさん
ついにモナコの試合記事が出来上がりました。

熱い熱い記事です。


是非見て下さいパー





舞台裏⑧ WBA世界ミドル級タイトルマッチ
試合開始~真のファイト~3.30モナコ

(傍でカメラを回し続けたTUG_manのブログより)

$石田順裕オフィシャルブログ 「そんな時もあるやんか」by Ameba


石田順裕は右の拳を胸に当てている。

日本国歌斉唱。観客全員がその場に起立し、その厳かなるメロディーラインを聴いている。美しい旋律が奏でられ場内を包み込んでいく。

“君が代は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで”

さざれ石とは小さな石ころという意味だ。それがコケが生えるほどの年月をかけ、やがて大きな岩となる。日本国の未来永劫に続く発展を願う歌だ。
$石田順裕オフィシャルブログ 「そんな時もあるやんか」by Ameba

石田順裕は少しうつむき、左右に揺れながら深呼吸をしている。

“スーッフゥ~、スーッフゥ~”

そうして荒ぶった熱い身体を自在にコントロールできるよう精神を研ぎすましていく。これまでの長く険しい道のりが走馬灯のように頭をよぎる。テンションが上がる。戦う想いが高まっていく。

「まさかこの年まで、海外に来てまで、現役を続けているとは、続けられているとは思いもしませんでした」

石田順裕は自身のボクシング生活をそう振り返った。

所属するジムがないという環境、ホームにすら立てないと言う状況。戦うリングがない。後ろ盾は何もない。明日が見えない日々が続いた。

“あきらめるな。戦い続けろ”

そう自分に言い聞かせ、必至でもがき続けた。

石田順裕は“KEEP FIGHTING”と大きくバックプリントされたTシャツを着ている。一度それは“UPSET AGAIN”と入れる事に決まっていた。もう一度大番狂わせを起こしてやる、との意気込みからだった。

しかしその文言はやめた。なぜならゴロフキンを倒す事は番狂わせではないからだ。勝利を信じ、勝つために戦うからだ。

背中にはこれまで海外で奮闘する日々を支えてくれた言葉を入れる事にした。その言葉の下にズラリ応援者の名前が連なっている。今日と言う日を支えてくれた人たちだ。

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モナコ決戦のリング。世界戦。日の丸が空高く掲げられている。

国を背負って戦う、と言うと大げさに聞こえるだろうか。日本からの応援を受けて石田順裕は立っている。みんなの想いを背負てっ戦う。

石田順裕の一つ一つ小さな積み重ねが、人を呼び、大きな流れを生んで今ここに夢が現実のものになろうとしている。

再びベルトを、WBA世界ミドル級新チャンピオンになるんだ。

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“WBAエンドIBO、ウォーズ、ミドルウェイチャンピオンシップ!チャレンジャー、ノブッヒローイッシダァー!”

リングアナウンサーが挑戦者石田順裕をコールした。

ここまで34戦して24勝8敗2分け、9つのKO勝利を飾っている。敗れた試合はいずれも何かしらのベルトがかかった試合だ。その戦績に残された8つの爪痕が石田順裕イバラの道を物語る。これが6度目の世界戦のリングだ。

“チャンピオン!ゲンナディーゴッロフッキーン!”

迎え撃つ王者ゴロフキンは25戦全勝22KOのパーフェクトレコードを誇る。テレビ画面紹介テロップに“ONE BROTHER”と表記された。家族に1人双子の兄弟がいる。兄2人は戦場で命を落とした。その兄たちから教わったボクシング、双子の兄弟と腕を磨いたボクシングで世界の頂点を極めた。

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両者リング中央でトンとグローブを合わせた。青コーナーに戻る石田順裕。その対角線上、ゴロフキンを睨みつける。

ボクシングで使用するリングの広さは一辺5.47m~7.31m以内と定められている。モナコのリングは規定の下限近く設置されてるようだ。

望むところだ。手間が省けていい。

リングはよく四角いジャングルと形容される。一歩踏み込む度に数々のトラップが待ち受けている。猛獣の強打に襲われる。しかしその密林を突き進んで行かなければお宝にはありつけない。


“カーン”

運命の開始ゴングが鳴った。

石田順裕はガードを上げ、左拳をスッと前に指すようにしてリング中央へ出た。赤コーナーからゴロフキンが解き放たれる。

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“さあ始まりました。WBA&IBOミドル級タイトルマッチ。トリプルGはパウンドフォーパウンド、世界最強のファイターです!”

実況が王者ゴロフキンを賞讃した。

リングのど真ん中。ベストショットを打ち込むにはまだ距離がある。

トントントン。石田左でリズムを取りながら距離を詰めていく。ゴロフキンは左右に回りながら飛び込むタイミングを計っている。

オープニングブローは挑戦者だ。石田ジャブを出すとゴロフキンこれをかわす。石田踏み込むフェイント。瞬時に反応するゴロフキン。ジャブ。パリ。お互いにまだクリーンヒットはない。30秒が経過した。

プレスをかける石田順裕。下がるゴロフキン。

日本からの応援団が“いいぞ!”と声を張り上げ石田の攻勢に拍手を送った。日の丸ハチマキを絞めた女性が手を拝むようにして戦いを見守っている。

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“ヘイ!見てくれ。イシダがGGGをコントロールしようとしている。背が高いイシダがゴロフキンより長いリーチで左を打って出たぞ”

戦前、石田順裕は足を使ったアウトボックスを展開すると見られていた。想像とは違うアグレッシブなファイトに実況が沸いている。

もちろん足は使っている。しかしそれはプレスをかけるためだ。そして左で翻弄するだろうと思われていた。そう左で翻弄している。しかしそれはさばくためじゃない。カウンターを強打するためだ。

ボクシング観戦に慣れないモナコセレブたちは固唾を飲んで試合を見ている。時おり“オウ!”と唸るような低いうめき声を漏らす。

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石田順裕が尚もにじり寄る。ゴロフキンはガードを堅めその隙間から覗き込むようにしている。距離を奪い合う両者。ギリギリの緊張感。駆け引き。ゴロフキンロープ際まで下がった。もう後がない。

石田勢い良く踏み込んで左ストレートを放った。一気にパンチの制空権に入る。ゴロフキン後ろ足を強く蹴り上げ身体ごとブチ当てるようにして右フックを振って出た。

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石田バックステップしてこれに左フックを合わせる。そのまま接近戦へ。左フックの相打ち。試合が早くも動き出す。

リング中央。一撃KOの距離。一瞬で勝敗が決する戦い。

仕掛けたのは石田順裕だ。この戦いは石田順裕のファイトプランだ。

世界戦は12ラウンドの長丁場だ。大抵の場合、おおまかな流れがある。通常、試合序盤はお互いの出方を探る事に費やす。そうして相手を量り、勝利への方程式を組み直しながら戦局を進めて行く。

石田順裕がその様子見ラウンドをカットさせた。開始直後から激しい主導権争い、勝負ラウンドを迎えた。

石田順裕はスタンスを広く保ちドッシリと構えている。後ろ足を踏ん張り壁を作った。石田がジリジリと寄るとゴロフキンはジリジリと引いた。

石田順裕の左ストレートがゴロフキンの顔面を捉えた。これは浅いか。腕が伸びきらないうちにヒット。

とその時、

ゴロフキンの左フックが外から大きく弧を描くようにして放たれた。石田順裕は瞬時に反応し右テンプルをカバーした。

“ガッツン!”

一瞬何を食らったのか分からなかった。左が飛んで来る。それは分かった。フックだ。それも見えた。ガードした。防いだと思った。しかし食らっていた。こんなフックがあるのか。

戸惑ってはいられない。これも想定内だ。想定外もあり得ると言う想定内だ。規格外の強さ。そんなものはやる前から分かっていた事だ。

1分が経過した。

ゴロフキンが左を揺らしている。

その左にカウンターを合わせてやる。タイミングが合った時、それはゴロフキンが倒れるときだ。左カウンターが決まったその瞬間に、その顔面に、ガラ空きのアゴ先に、右ストレートをぶち込んでやる。

ゴロフキンの身体が低く沈んだ。飛び込んでの左フックか。いや今度はストレートとのスリークォーター気味に真っ直ぐ飛んで来た。

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これを逃してたまるか。石田順裕左フックカウンター。決まったか。ショルダーブロック。顎先を狙った石田のパンチはゴロフキンの左肩を強く叩いていた。

ストントントントン。

両者見合った。

ゴロフキンワンツー。強く、速く、そして恐ろしく堅い。ガツンとした衝撃。石田順裕の上体が大きくのけぞる。そこへゴロフキン追撃の右フックがテンプルめがけて飛んで来た。

“バシン!!”

相打ちだ。石田はゴロフキンの右腕が持ち上がったその隙間に左フックを滑り込ませた。すかさず左右フック。これをゴロフキンウィービングでかわす。石田が距離を詰める。左のダブルがクリンヒット。

“イシダハブ、グッドジャブツー!”

実況が叫んだ。

石田順裕さらにプレスを強める。ゴロフキンの危険な領域に入ってはパンチを出させカウンターを返して行く。

ゴロフキンが打てば石田順裕も打ち、ゴロフキンがかわせば石田順裕もかわす。ゴロフキンがヒットさせれば石田順裕もヒットさせた。

そうしてゴロフキンがハードパンチを繰り出して来たその時、石田順裕はその力を利用し、倍の威力にして強打を叩き込むつもりだ。

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“イシダを見てくれ。彼はファイトするためにここへやって来たのだ!これは大きな驚きだ”

2分経過。始まりからクライマックス。息詰まる熱戦。

ゴロフキンのジャブを石田が肩越しにスルー、左ストレートカウンターがヒット。さらにゴロフキンの左フックをダックしてかわし、左フックカウンターもヒット。テンプルを捉えた。

“ナイスヒットツー!イシダ!”

ゴロフキンはグッと両腕を腰のあたりまで下げ、拳を握り直した。

来る。これは来るぞ。さあ来い。

第1ラウンド残り43秒。ゴロフキンいきなりの右フック。一撃で仕留める渾身の力を込めたハードパンチだ。

ドンッッッ!

入った。よろめいたのはゴロフキンの方だ。石田順裕の左フックカウンターがモロにゴロフキンのアゴ先を捉えた。右のフォローを打て。しかしゴロフキンがのけぞった反動で距離ができてしまった。

石田順裕は右拳を小さく回した。分かっているだろ。後ろへ吹き飛ばなければどうなっていたかを。石田の拳がそう語っている。

ゴロフキンも負けじと左を強振、石田ガードして左カウンター。これもクリンヒット。

“グッドレフト、ツー!ビューティホー!”

石田順裕は打たれては打ち、距離が詰まれば押し返した。

残り10秒、石田順裕左のダブルフック。空を切る。ゴロフキン左ジャブダブル。空を切る。

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リング中央、睨み合う両者。そのまま第1ラウンド終了のゴングが鳴った。石田順裕は闘志剥き出しの表情のままコーナーへと戻って行った。

勝負をかけると言っていた序盤の速攻。石田順裕の戦いだ。このラウンドは獲ったか。いやこの試合にもはやジャッジペーパーは必要ないだろう。

石田順裕のカウンターが勝つか。ゴロフキンの強打が勝つか。

リングで拳を合わせ今ハッキリとした事がある。確信した。ベルトをもぎ獲るにはこの道しかない。気持ちで負けていない。行くぞ。ファイトする。

“ゴロフキンを倒す”と語っていた。そして“必ず勝利します”と誓っていた。


見よ、これが石田順裕の戦いだ。


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