裏稼業のさらに裏を突く! 繁華街の裏通りに現れる、クスリの売人を襲う無法者集団 | a.k.a.“工藤明男” プロデュース「不良の花道 ~ワルバナ~」運営事務局

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■警察に泣きつけないクスリの売人

 最近の不良のシノギといえば、薬か詐欺かの時代になってきている悲しい現実がある。そんな今の不良たちの隙をつき、売人を襲って金を奪ったり薬を奪う新たなシノギが無法者集団の間で流行っている。

 そう、無法者集団は売人を狙い襲撃するのである。筋もへったくれもない話であるが、そんなことを平気でやってのけるのだ。金になれば何でもする。情の欠片も義理の欠片もない仕業である。


 売人は違法な薬を持っているし、警察には逃げられない。被害届などまず出せるはずがない。騒ぎになって通報でも入れば終わりだ。無法者集団はその弱みにつけこみ襲撃をする。売人は抵抗もできない。ボコボコにして金を取るのだ。薬も持っていれば奪う。不良同士の島(縄張り)云々など関係ない。


 万が一、売人が後で警察に駆け込んでも、捕まらないように顔を隠している。帽子、サングラス、マスクなどをして顔を覚えられないようにしている。繁華街に最近増えている防犯カメラだが、売人がいくら被害を警察に訴えても映像では無法者集団の顔が分からない。なので犯人特定の証拠にならない。売人は泣き寝入りするしかないのだ。



■売人時代の経験が売人襲撃の発想につながった

 筆者は知人の紹介で売人叩きを1つの生活の生業とする、元ヤクザの松田(40歳・無職・仮名)にインタビューをした。金色の短髪でサングラスに派手なジャージ。みるからにいかつい風貌である。


「俺ら不良にとって一番恐いのが警察だからね。でも、売人ていうのはどんなに襲われようがトラブルに巻き込まれようが警察に泣きつけない。元々は自分なんかもヤクザで食えなくて薬さばいたりしていたんだけど、そんな時に喧嘩してる相手とかに今狙われたらヤバイなと当然考えるわけだよね。そこからだよ。このシノギをやろうと思ったのは」


 大体の稼ぎを松田に聞いてみた。


「あんまり言いたくないんだけどね。襲ってだな。相手は財布に3万円ぐらい入ってることが多いかな。売人が所持してる薬も略奪する。それを知人の不良に回すんだ。1回襲って、儲けは10万円てとこかな。月2、3回やればまあ飯は食えるね。
 薬さばいて捕まるリスクあるよりは断然こっちが楽だね。だけど、複雑な心境だよ。何の恨みもない人を傷つけてシノギの材料にするんだからね。でもさ、俺は昔、義理人情に熱い極道に憧れてヤクザの世界に入ったんだけどね。現実は違ったんだよな。
 今のヤクザは薬売るか詐欺するかだったからね。上納金も馬鹿みたいに高くてね。すぐに辞めたよ。だから、ヤクザより俺のほうがマシだと思うよ。腐っても売人退治してるだけなんだからさ。仲間も同じようなヤクザ崩れとか多いんだけど、気持ちの良い奴らばかりだよ」


 そう語る松田は、自慢気ではなくどこか吹っ切れた表情をしていた。



■ただでは転ばぬ売人叩きのリスク

 しかし、数週間後、著者は松田と病院で会うことになった。松田はリンチをされ大怪我を負っていたのだ。売人の上にいるヤクザに目をつけられヤキを入れられたらしい。


 松田は全身の骨を折られて包帯ぐるぐる巻きでベッドに横たわっていたが、ギラギラした目でこう筆者に言った。

「被害届出して高額の示談金取ってやったよ。もう、ヤクザなんて古いんだよバーカってな。俺はこれからも売人狩りを続けるし、今後はヤクザ狩りも考えてるよ」

(取材・文 山口祐二郎)