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『日銀当座預金の正体①』三橋貴明 AJER2015.5.19(7)

https://youtu.be/I8KgC0MxR_w

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 「経済」(経営ではありません)を理解するには、最低でも二つのことを理解する必要があります。逆に、この二つを理解すると、経済は相当程度理解できることになります。


 一つ目は、
「生産者がモノ・サービスという付加価値を生産し、誰かが消費・投資として支出することで所得が生まれる」
 という、所得創出のプロセスです。所得創出のプロセスを学ぶと、「生産」「支出」「所得」の三つが必ず等しくなる国内総生産、すなわちGDPの理解に繋がります。


 そして、もう一つが、「需要」と「供給能力」です。この需要と供給能力を混同し、経済について語る人が本当に多いのです。

 特に酷いのが、人口について語る自称識者たちです。何しろ、需要である総人口と、供給能力である生産年齢人口をごちゃ混ぜにして経済を語るわけで、彼らの頭の悪さには率直に言って絶望したくなります。


 人口問題を語る自称識者が、「総人口」と「生産年齢人口」を区分しているか、注目してみてください。恐らく、両者を分けて語っているのは、わたくし以外には誰もいないのではないかと思います。


 最近、エマニュエル・トッドに関連した書籍を二冊読みました。「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書) 」と「グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書) 」の二冊になります。


 両書でトッド(やハジュン・チャンや藤井先生や中野先生や柴山先生が)強調しているのは、
現在は需要不足である
 という現実です。需要不足である以上、解決策は「需要創出」以外にはありません。ここでいう需要とは、上記所得創出のプロセスにおける消費と投資の合計のことです。


 ところが、現実には経済対策と称するもののほとんどが「規制緩和」「市場化」「民営化」「競争原理導入」等の供給能力拡大政策であるわけで、本当にあきれ返ってしまいます。お分かりでしょうが、わたくしは別に規制緩和等の供給能力拡大策を「悪」と言っているわけではありません。単に、処方箋としてタイミングを間違えているという話です。


 現在が世界的な「供給能力不足」であるならば、規制緩和等の政策が正当化されるかも知れません。とはいえ、現実には違います。


 ところで、需要が存在している中、供給能力がいきなり「削減」された結果、インフレギャップになったとします。これは、国民経済にとって善でしょうか、悪でしょうか。

 無論、当初は需要が満たされないわけで、インフレギャップが拡大し、国民は「欲しいものを買えない」状況になってしまいます。とはいえ、その時点で国内の企業や人材が、
インフレギャップを埋めるために、供給能力の拡大、生産性の向上に努力する
 をやった場合、これは単に「経済力の強化」という結果をもたらしてしまうのです。ここで言う経済力とは、モノやサービスを生産する力という、本質的な「経済力」のことです(おカネの話ではありません)。


 何を言いたいかと言えば、この記事。


コラム:対ロシア制裁の「予期せぬ結果」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OR0CF20150611?sp=true
 ロシア国家統計局によると、2015年1─4月の同国のチーズ生産量は、前年同期比30%増の18万トンとなった。これは、ウクライナ問題でロシアに経済制裁を科している西側にとって、数少ない「予期せぬ結果」の1つだ。
ロシア国内のチーズ産業が隆盛を見せているのは、同国政府が昨年8月、西側による制裁への報復措置として、幅広い食品や農産物の輸入を禁止したからだ。スイス産エメンタールチーズなどを輸入する抜け穴はまだあるものの、愛国心を背景に、国内チーズ生産者は自分たちの手で、イタリア産パルメザンのような各種チーズを作っている。
 こうしたチーズ産業の急成長は、プーチン政権の中枢を狙って制裁を科した西側の意図とは程遠い(後略)』


 それはまあ、経済制裁で欧米の「供給」が消えたとしても、ロシア国民のチーズに対する需要が消滅したわけではないので、ロシアの企業や人材が「その気」になって努力すれば、こういう結果になりますよね。対ロシア経済制裁は、同国のチーズに関する供給能力を急拡大させたわけです。

 改めて考えてみれば、イギリスの綿産業がインドのキャラコを壊滅させるまでの生産性を手に入れたのは、同国が「インド産綿製品の禁輸」に踏み切ったおかげです。イギリスの綿製品の「需要」は存在する中、強制的にインドからの供給を停止した結果、イギリス人たちの投資を活性化させ、綿製品の生産性が急速に上昇していったわけです(これが「産業革命」です)。


 無論、外国の供給能力を遮断したとしても、国内で投資が起きなければ、インフレギャップは埋まりません。とはいえ、少なくともロシアのチーズ生産者や、産業革命期のイギリスの綿製品従事者たちは、

設備投資や技術開発投資で生産性を高め、国民の需要を満たし、儲ける
 という道を選択したわけでございます。


 上記の通り、「需要」と「供給能力」をきちんと分けて様々な「情報」に触れると、これまで以上に「真実」が見えてくるのでございます。皆様も、お試しあれ。


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