当方の外壁塗料選定遍歴


当方の記憶を辿ると、先代が商売を始めた頃は神東塗料のラバロンという単層弾性アクリル塗料とアクリルリシンの2本立てでした。


その後、日本ペイント製に切り替え、DANユニ、DANフレッシュRなどの単層弾性を経て、

弱溶剤ウレタン樹脂のファインウレタンU100発売(平成8年)を気にウレタン樹脂仕上げへ、

オーデフレッシュシリーズが発売になったのを機にシリコン樹脂塗料への切り替えを果たし、

その中での中枢を担うオーデフレッシュSi100というシリコン樹脂グレードのものを当方として初の4工程塗装としての提案を始めました。


しかし非常に高価であった材料であるにも関わらず激しい雨垂れに見舞われ、

施主様の事後の評価も悪かったことから材料変更を決断。


当時の水性塗料は雨垂れに関しての性能が十分では無く、どう頑張って施工してもうまくいかない。


この時にモルタル用外装材に関しては日本ペイントさんを卒業させて頂きまして現在に至ります。

(私の中ではオーデフレッシュショックがあまりにも尾を引いていますから。)


仕方なく、弱溶剤シリコン樹脂という方向に向かいました。


外壁塗料専門メーカーであった旧恒和化学工業(現ダイフレックス)の2液ナチュラルシリコンに接着力最強のカチオン型エポキシ樹脂ワイドシーラーホワイト&シリコンエポキシ樹脂系アクレスエポという鉄板仕様。


この仕様を組んだ時にはオヤジと大いに喧嘩をしました。

何せ下塗りと下地調整塗材の価格が、当時使っていた日本ペイントのウルトラシーラー&アンダーフィラー弾性エクセルとはケタ違いのびっくり価格だったもので。。。


ただ、恒和さんとの交渉でアクレスエポに大規模仕入れ特価を常用使用するというお約束で納入して貰い、この方法が一番だよ、オヤジと説得して。


この方法で塗った塗膜は煌びやかな艶が出て施主様も大喜び、艶を追いかけていたオヤジも大喜び。


唯一臭気がかなり出る仕上げ塗料である為、苦情が出る事もありましたが、

高い艶感で施主様の納得の方が上回り、長きに渡り当方の鉄板仕様でした。


ただ、時代が移り変わり、低臭化を他社が導入を進めるなか、臭気による苦情も出やすくなり、

水性の高級グレードに再び挑む事を決意。


同じメーカーのセラナノンというナノ技術を用いた水性シリコン塗料に切り替える事となりました。

こちらも非常に高い材料ではありましたが、オヤジが亡くなった後という事もあり、新しい事にチャレンジする意味での導入でした。



その後、私の中での衝撃の塗料に出逢います。

ナノコンポジットWと関西ペイントの下地調整塗材群です。


お付き合いする塗料販社が変わったことから、

オヤジが一度も使わなかった関西ペイント製を私としては初めて使う。


こんなに素晴らしいんだ。。。



アクレスエポを常備使用していたことから、同系統シリコン系微弾性下地調整塗材シリコンクラフトを手にしてびっくり、弾性系の弾性ホルダー防水型を使ってびっくり。。


そこには価格以上の価値がありました。


これなら施主様の笑顔が見れる。



ナノコンポジットWは艶消しは耐久性に問題がという市場の一般論と私の想いを打ち破る素晴らしい塗料。


マット仕上げが求められる最近の塗替え市場にもマッチして、当方としては大ヒット。

特に若い施主様に大変喜ばれた事で、私としてもお勧めしやすい塗料となりました。


そして関西ペイントさんが現場に遊びに来て下さり、是非一度ツボイさんに使って貰いたいと提案されたのがアレスアクアセラシリコン。


関西ペイントとしてもかなり力の入った塗料で、

塗料製造3部門が横断的に開発に加わり作り上げた画期的な塗料だそうです。

実際に塗ると高弾性の安定感と水性とは思えない煌びやかな艶感、汚れの落ちやすさ。

水性なのに2液反応硬化型という荷姿、硬化剤という名目であるものの、

塗布直前に超低汚染化を実現する添加剤という考え方。


建築塗替え市場に王者が本気で挑もうとする意気込みを感じた瞬間でした。



現在の当方の外壁用メイン仕上げとしてはアクアセラシリコン、ナノコンポジットW、断熱塗装のキルコート、遮熱のアレスクールウォールなどをベースとして、施主様の趣向に合わせお選び頂く体制を築いております。



フッ素とシリコン樹脂


ツボイさんはフッ素を提案しないんだね


そんなお話も良く伺います。


フッ素を塗るなら溶剤系フッ素が最も安定感があり、価格もびっくり価格です。

私もどうしてもフッ素をというご希望があれば溶剤系を迷わず勧めますし、

一般住宅用では日本ペイントが先行(4化フッ素という塩素を含まないもの)しています。


ただ、何点か気になる事があり、現状ではシリコン上級グレードに絞りご提案を進めています。



一点目は耐久性の差異の縮小と当方がお世話になる施主様の塗替えタイミングです。


一般的にシリコン樹脂の耐久性は最大15年(実際に当方での実現数値)、フッ素樹脂に耐久性は20年。

当方がお世話になる物件は初回塗替えで築後10年~15年後の状況、

又は初回塗替え築後10年塗布後の2回目の塗替えとして築後20年前後でです。

初回塗替えの場合、築後10年でお世話になる事が出来て次回の適性塗替え時期は築後25年、

2回目塗替えの場合は、築後20年での塗替えとして築後35年が次回塗替え時期。


当方のお世話になる施主様の平均建て替え時期は築後30年~35年。


そう考えると2回目の塗り替えでフッ素を塗るのは明らかなオーバースペック。

初回塗装であれば2回目の塗替えタイミングを伸ばすと言うことであれば有用で、

築後10年で次回塗装適性期が築後30年、次の塗替は状況によっては不要にはなります。。。が。



二点目はフッ素だからと言って汚れないと言う事は無く、あくまで汚れにくい


フッ素といえども汚れます。

特に施主様が気にされる雨垂れ汚れに関してはフッ素であっても難しいと言わざるを得ません。

これは建物の構造に非常に左右されます。

また、庇が浅い、又はビルのような建物であれば全体の雨掛りがするため親水性が発揮されます。

が、庇や軒が深い建物では雨掛りが少ないため、防汚機能を発揮させるための雨水が付着せず、

汚れが落ちないまま定着してしまう為、意味なく汚れてしまう状況となります。

またフッ素樹脂の系統によっては空気中の油分と反応して油分汚れが定着してしまうもの、

フッ素樹脂内の塩素が悪さをして自己破壊を起こすものなどがあり、

万能ではない事をここでお伝えしておきます。


三点目は塗替えが非常に難しくなる


何事も無く無事に20年の耐久性終焉を迎えられれば恩の字です。

しかし、建物には様々な事が起こります。

下地変動による割れ、地震による割れ、先ほど申し上げた汚れの吸着、趣向変化による塗替え。

そうした時にフッ素は他の塗料も基本的に弾いてしまう為、塗替えに手間を掛けなければなりません。

補修塗り、塗替えに難易度が増してしまう、そのリスクを三割増し程度の耐用性延長で負うのか。



以上の点から当方ではあえてフッ素を主体とした塗料提案は行っておりません。

フッ素を塗れば当方も儲けは当然増します。

しかし、事後に負ってしまう施主様のリスクを考えますと、

自分が施主様側として本当にフッ素に行くかな?そう考えるのです。


フッ素同等のものとして光触媒がありますが、変色をしてしまい途方に暮れている方、

私は多く見ています。


営業会社は当然トップグレードのフッ素や光触媒を勧めてくるでしょう。儲かるからです。


当方は施主様のご意見を聞きながら、施主様のお顔を見ながら今日まで営業しております。

フッ素が更に進化を遂げ、施主様側に立つ事を私は待っていますが、

現状で私として強力にお勧めするに至っておりません。


これはあくまでも私個人の見解ですので色々なご意見があるのは承知しております。


ただ、大学卒業後、真摯に塗膜と向き合い間もなく21年目を迎える塗装職人の言葉として

皆さまの耳に届けば幸いと思っております。


2015年1月16日 ツボイ塗工

http://www.tsuboi-toko.net/