心は振り子 | 江口昌記の 月のうさぎ

心は振り子


雨の日に 気持ちが内をむくのはなんのせい?

音のせい?

ポツリポツリとザーザーと
この身を囲む音たちから
耳をふさぐように内をむくの?

水のせい?

雨の水滴たちが立ち込めて
体と気持ちを圧迫するから苦しくて
気持ちを内へ内へと雨宿りさせるの?

冷気のせい?

冷え冷えと天の原から降りそそぎ
まだらに肌をたたく水滴が熱を奪うから
ぬくもりを閉じ込めておこうと気持ちを内へ押し込むの?


 雨の日はだれもが押し黙り
 押し殺した眼に愁いを宿す

 音にぼくらは沈黙し
 水にぼくらは立ちつくし
 冷気に胸の火種は立ち消える


それでも
悪いことばかりじゃない

心は振り子

ぼくらのまわりにはいつだって
いくつもの解答が
揺れている

悪いことに気がつくなら
良いことにも気づくはず
影が見つかればいつも
姿が見つかるようにね


耳をふさぐから
内に鳴る想いが響く

立ち止まるからまた
歩き出す嬉しさに満たされる

熱を失くすから
わずかなぬくもりさえありがたい

そうやって

ぼくらのまわりにはいつだって
いくつもの解答が
揺れている

心は振り子
悪いことばかりじゃないのさ






心は振り子

photo by unknown
Visual edited by MasakiEguti



0092015