東日本大震災から13年
努々忘れることなかれ
この一枚の写真を紹介され、調べるうちに心を揺さぶられれてしまった。
お写真を一度はちら見したことはあるのですが、こんなに奥深い僧侶だとは思わなかったものです。
以下、「山本宗補の雑記帳 」より引用
2011年4月18日 (月)
鎮魂の読経~生きた仏教
大震災3度目の取材で撮影した若い禅僧の写真を紹介したい。
写真は津波被災地で「鎮魂の読経」をし続ける禅僧。撮影地は宮城県気仙沼市本吉町。禅僧は小原宗鑑さん(28歳)。小原さんは、4月2日に宮古市から読経行脚を開始した。4月6日の朝日新聞の一面に、雪の降る釜石内で読経する小原さんの写真が大きく掲載されたため、全国の読者が感動したに違いない。
私もその写真を見て心を動かされ、小原さんの取材をしたくなり、取材に行ってきたわけだ。ともかく、取材させてもらい、小原さんという若い僧侶の存在と活動、彼の生き方に直に触れることができた収穫は計り知れない。「生きた仏教」を目の当たりにした気持ちだ。これほど一心不乱に読経を続け、歩きつづけ、合掌し続けることができるのかと心で感動しながら、彼に密着させてもらった。いまでも小原さんの写真をセレクトし、色調整をしているだけで、突然ジ~ンときて目頭が熱くなってしまうほどだ。
被災地は小原さんが毎月のように、鉢を持ち網代傘で托鉢に歩いた馴染みの街だという。小原さんはひたすら歩き、鈴を鳴らし、立ち止まり深々と頭を下げる。歩きながら読むお経は「舎利礼文」。火葬場などで遺族が骨を拾う際に唱えられるお経だという。「師匠から、私は何もできないことを学びなさいといわれた。瓦礫を前にして、何か知らないけど、ただ謝るしかない」。小原さんはそうした思いで読経行脚を続けながら、被災地を南下しているのだが、初日はあまりに圧倒されて、無言で頭を下げて回っただけだったという。
小原さんは岩手県盛岡市内にある臨済宗系の石雲禅寺で修業する副住職。石雲禅寺は単立寺院ということで、臨済宗の妙心寺派とか南禅寺派とかに属してはいない。小原さん自身は京都の大徳寺(訂正済み)僧堂で3年間の修行を積んだ。彼の活動が伝統仏教の枠にはまらないのは、石雲禅寺とその寺を創立した小原さんの師匠によるところが大きい。ここでは師匠については、まだきちんと書くほどの情報も持っていないので触れないでおく。
彼の鎮魂の読経こそが、日本仏教界に属する数多いるお坊さんたちの切羽詰った行動として、この大震災の被災地で私が期待していたものだった。 3万人に及ぼうとする死者行方不明者。家族や親族を失い、住むところも、収入を得る場も全て失った膨大な被災者。これほどの悲しみや苦しみの現場を前に、伝統仏教界は僧侶としてできることをきっと果そうとすると期待した。先月24日からの二度目の被災地取材では、都内の5人の僧侶に同行して釜石市に入ったが、現地での地元仏教会などとの入り組んだ事情のために、結果として5人の僧侶は被災地での読経奉仕を形にできないまま帰京した。5人の若手僧侶の積極的な動きは早すぎた一面もあったかもしれないが、そうした活動を生かすことのできない仏教界の現実を知ることにもなった。そうした経緯もあり、残念なことだが、60余りある伝統仏教各宗派の集まった全日本仏教会は、僧侶ならではの取り組み、存在感を被災地でいまも見せることができないでいる。もちろん、個々の目に見えない活動、たとえば遺体安置所で読経奉仕をする、土葬の現場で読経奉仕をするとか、檀家の期待に応えて葬式に立ち会う、寺を避難所として解放するなどに専念されている僧侶も数多くいるだろう。
それでも仏教のあり方に関心を持ちながら、傍観者のような私に不思議に思えるのは、宗派仏教界の事情はさておいても、全ての宗派が一致して、死者の魂を鎮魂し、行方不明者家族を思って悲嘆する人々の痛みを和らげようとする積極的な取り組みが被災地で見えないのはどうしたことだろうか。
全日本仏教会は、大震災から49日となる4月28日にの午後2時46分に鐘をつき、49日法要を全国で実施すると呼びかけているが、それが十分な取り組みとはどうしても思えない。おそらく、普段から仏教に関心を持たない一般の人こそが、小原さんのような誰に頼まれたわけでもなく、ただひたすら頭を下げて読経して歩く姿に心を癒され、失われた膨大な命や形あったものに対しての悲しみを身近に感じ、無常の意味を自問しているのではないだろうか。
(4月22日付記:下の写真は宮城県女川市の仮埋葬地。宗鑑さんと二人の尼僧さんが、一体一体、丁寧に弔いの読経を上げた。尼僧さんは、石雲禅寺の吉田慈光さんと、京都の京丹後市から駆けつけた荒川宗範さん)
関連写真
被災地で祈りを捧げる僧侶たち
被災地で祈りを捧げる僧侶たち 東日本大震災で被災した宮城県女川町で、埋葬された犠牲者らに祈りを捧げる僧侶
http://www.paparaginosato.org/ を運営しているとのことです。
再掲載 2015/1/108
追画により再々掲載 2015/2/15
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