光の中の光 | 江口昌記の 月のうさぎ

光の中の光


闇の中の光を見つけることは
むずかしいことじゃない

光の中の闇を見つけることは
ちょっとむずかしいことだけど

光の中の光を見つけることはさてどうだろう


夏の終わりと秋の始まり
教科書に欲しい答えはないし
数字はあっても線は引けない

それでもぼくも君もきっと感じとる

終わりと始まり
交わりとわかれ
嬉しさと寂しさ
わだかまりと
ちょっとした ちゅうちょ

ぼくらが心にいくえものヒダを持てるのはきっと
「察する」というシルクの手ざわりのアイマイを感じとれるからだろう

”0と1”で作られるだけではお化け屋敷のトキメキは語れないようにね
手垢のついたちゃちな飾りがなによりの宝物になることもあるようにね
夏の匂いのしみこんだシーツになにより顔をうずめたくなるようにね
ぼくらの心にあるラクガキがこらえきれずに踊りだすようにね

見つけることや教わることの約束に慣れてしまったものだから
感じとることや察することに臆病になってしまったんだ

きっときっとそういうことなんだ


夏と秋が頬寄せあって
昼と夜が盃酌み交わす

そんな晩に
そう想った




光の中の光

Photo by MasakiEguti




0432015