【ボス『リマスター制作秘話』その1】:プランジェント・プロセス

ブルース・スプリングスティーン初期名盤7Tが初のリマスター!実際にリマスターを行なった、巨匠ボブ・ラドウィックがその制作過程を語る!何はともあれ、この言葉がすべてを語ってる気もします!

「違って聞こえるかって?勿論だよ!自分でも新しいヴァージョンを買いに行きたいくらいだよ。これはマーケティングの人間としてじゃなく、いちファンとしての意見なんだ」

●リマスターへ至る過程

多くのファンがデジタル時代におけるスプリングスティーンのカタログのリマスタリングによるアップグレードを望んできた。これまでリマスタリングが施されたのは、ボックス・セットがそれぞれ発売された『明日なき暴走』と『闇に吠える街』のみ。今回、これまで使用できなかったテープ変換技術の恩恵により、前述の2作のフレッシュなリマスタリングを含めた再発がようやく行われることになる。

全7作に新たなリマスタリングが施されており、うち5作は初めて。また、アナログは全タイトルが初のリマスタリング盤となる。7作のアルバムはオリジナル・パッケージを復刻し、付随する60ページの冊子には、レア写真、グッズ、スプリングスティーンのレコーディング・アーティストとしての最初の10年間に出たオリジナルの記事などが掲載されている。

オーディオに関しては、著名なマスタリング・エンジニアのボブ・ラドウィックが再び舵を取っている。’82年に『ネブラスカ』という試練のアシストをして以来スプリングスティーンのパートナーを務めるラドウィックは、この30年間スプリングスティーンの大半の作品のマスタリングとリマスタリングを手がけてきた。『明日なき暴走』の’92年のマスターサウンド再発盤や、30周年記念盤のリマスタリング盤、2010年に発売されたボックス・セット『ザ・プロミス』における『闇に吠える街』のリマスタリング盤を手掛けた、ボス・サウンドをキメる「耳」を持つ男。

●プランジェント・プロセス

「ブルース、ジョン・ランダウ、それから(エンジニア兼オーディオ・アーカイヴィストの)トビー・スコットは、初期のカタログの品質を最適化させたいと考えた」

とラドウィックは語る。この最適化の鍵となったのが、アーカイヴやリマスタリング目的に最近開発された、オリジナルマスターからデジタル・マスターへの変換法だった。

「前回カタログをリマスタリングしてから今までの間に、ジェイミー・ホワースが考案したプランジェント・プロセスという技術が生まれた」とラドウィックは説明する。

「このプロセスのおかげで、テープ再生時の音がミキシング・コンソールの出力に今までにないほど近くなったんだ。セパレーションが良くなり、歪みが少なくなり、驚くほど音がソリッドになった」。

失われた周波を修復したり、ワウ、フラッター、その他タイミングの問題をデジタル的に修正しているうちに、プランジェント・プロセスが「オリジナルのミックス・ダウン時には聞くことのできなかった深みと透明感のある音」の存在を明らかにしたとラドウィックは語る。ニール・ヤングとグレイトフル・デッドも、再発にプランジェントを採用したアーティストたちである。

数年前に試験的に行われた『闇に吠える街』のプランジェント変換を聴いたあと、ラドウィックはこう語った。 「ブルースに、カタログ全体のリマスタリングを勧められたんだ」。

幸い、オリジナル盤のステレオ・マスターの発掘には何の障害もなかった。
「マスターテープを紛失したとか火事で破損したとかそういう状況が最近は増えてきていたようだったけれど、トビー・スコットがブルースのレコーディングのデータベースを作っていてくれたのと、ソニーの保管システムが良かったおかげで、テープはみんなあるべき場所に見つかったんだ。トビーによると大半のテープは状態が良かったらしい。中には倉庫から出したときにマスターテープの再生ができなくなる“粘着テープ現象”を取り除くためにマスターテープを“焼く”必要があったけどね」。

再生に必要な“焼き”を施したのち、スコットがマスターテープを変換のためにプランジェントの施設に輸送したが、テープがそこから直接ラドウィックの手元に渡った訳ではなかった。

「マスターはブルースに送られたんだ。試聴と承認のためにね。それから私が高音質のプランジェント変換のテープを受け取って、それまで学んできた知識やテクノロジーの進歩をフルに活かしながら、アルバムのサウンドが当初意図したものを維持できるようなリマスタリングの指示を受けたんだ」。

「プランジェント変換の音を初めて聴いたとき、最初の3作があれほど急に透明感と深さを増した音になるとは思わなかった。DNAに組み込まれているほどではないにしろ、私もあの3作は熟知していたのに。でも、それまで際立つことのなかったパートが聞こえてきたり、アレンジが文字通り初めて聞こえるような形で聞こえてきたりした。「Eストリート・シャッフル」のホーンやパーカッション、「ロザリータ」のギター…すべてが素晴らしかった」。

その2へ続く。

遂に霧が晴れた!
ボスの名盤中の名盤初期7タイトルが初リマスターで甦る!


ブルース・スプリングスティーン
『アルバム・コレクションVol.1 1973-1984』

BRUCE SPRINGSTEEN: THE ALBUM COLLECTION VOL. 1 1973-1984
12月10日発売 完全生産限定盤 SICP 4351~8 CD7枚組(8CD) ¥15,000+税



●豪華60Pブックレット付き(レア写真満載,貴重なメモラビア、プレス・クリップなど).
●日本制作紙ジャケット 
●30周年復刻帯 :各紙ジャケには1984年『ボーン・イン・ザ・USA』発売時に全面改定した共通デザイン帯を復刻。
●解説・歌詞・対訳付 :各アルバムに投げ込み(三浦久氏による歌詞の世界から見たアルバム解説も)
●ボックス用新規解説:五十嵐正氏による、このボックス用の新規ライナー
●収録アルバム
アズベリー・パークからの挨拶 Greetings From Asbury Park』(1973年) *
『青春の叫び The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle』(1973年) *
『明日なき暴走 Born To Run』(1975年) **
『闇に吠える街 Darkness on the Edge of Town』(1978年) **
『ザ・リバー The River』(1980年) *(2枚組)
『ネブラスカ Nebraska』(1982年) *
『BORN IN THE U.S.A. Born in the U.S.A.』(1984年) *
(*初のリマスタリング盤  **再新リマスタリング)

詳細はこちら
http://www.sonymusic.co.jp/artist/BruceSpringsteen/info/445016

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