人権救済申し立て書 データ (ダウンロード) | 政治を市民へ 供託金を見直す会

政治を市民へ 供託金を見直す会

世界一高い供託金を見直しましょう!
日本の国会議員選挙の供託金は、世界で一番高額です。
その壁を崩し、政治を市民の手に取り戻すために、
まずは全国都道府県の弁護士会に人権救済の申し立てを行います。
皆さんのご協力をお願い致します。

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人権救済申し立て書
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人権救済申し立て書

平成  (201 )年  月  日 
           弁護士会 御中

第1.人権救済申立人 氏名             生年月日
住所
連絡先
職業

第2.相手方   国 内閣総理大臣 安倍晋三
           総務大臣   高市早苗 
           〒100-0000 東京都千代田区霞が関一丁目1番1号


第3 申立の趣旨
 現行の公職選挙法は,とりわけ国政選挙の立候補者に不当に高額な供託金を課し,日本国憲法が保障する選挙権・被選挙権等,基本的人権を侵害するものであるから,これを是正し,供託金制度を廃止するか,少なくとも大幅に引き下げるよう,国に勧告されたい。

第4.申立の理由
1 公職選挙法における供託金制度の概要

(1)公職選挙法92条の供託金に関する規定
 公職選挙法92条第1項は、同法86条第1項から第3項まで若しくは第8項又は第86条の4第1項、第2項、第5項、第6項若しくは第7項の規定により公職の候補者の届出をしようとするものは、公職の候補者一人につき、同項各号の区分による金額又はこれに相当する額面の国債証書を供託しなければならないと定めている。
すなわち、衆議院議員小選挙区選出の選挙の場合は、1人につき300万円(同法92条第1項1号)、比例区選出の場合は1人につき600万円(同法92条第2項)、選挙区と重複して比例区に立候補する場合は、別途300万円の供託金を要することになる。参議院選挙区選出議員の選挙の場合は、1人につき300万円(同法92条第1項2号)、比例区選出の場合は1人につき600万円((同法92条第3項)の供託金を要することになる。

(2)上記規定の沿革
ア 供託金制度の導入
選挙供託金制度は、1925(大正14)年に衆議院議員選挙法の改正(通称:男子普通選挙法)のさいに採用された立候補制度と同時に、泡沫候補の排除を目的として導入されたものである。同年、多くの国民及びその世論を背景とした野党からの、強い民主化への要求(以下、この時代の民主化運動を「大正デモクラシー」と呼ぶことがある。)を受けて、男子限定とはいえ、普通選挙が実現した。一方、当時の政府は、普通選挙と引き替えに、無産者の支持を受けていた思想及びその団体の言論を弾圧する目的で、治安維持法を制定した。現行憲法において、治安維持法のような思想弾圧立法が許されないのは言うまでもない。
選挙供託金制度が出来た時代とは、1918(大正7)年の米騒動から広がった社会運動から、民主主義の思想が広がり普通選挙運動が活発となると共に、社会主義思想への激しい弾圧が行われた時代である。名目上の立法目的は「泡沫候補の排除」であったが、こうした時代状況に鑑みれば、むしろ、無産者の支持を受けていた候補者の立候補を制限する目的を持って導入された制度であることは明らかである。それにもかかわらず、公職選挙法が制定された後も、現行憲法が制定された後も、この制度が一度として廃止されたことはない。

イ 供託金の増額
 1925(大正14)年に供託金が導入された時点では、衆議院選挙における供託金の額は2000円(初任給は概ね40~55円)であった。その後、供託金の額は、増大の一途をたどった。
 1950(昭和25)年に公職選挙法が制定された際には、衆参両院選挙において候補者が支払うべき供託金の額は候補者一人につき3万円(初任給は4000円程度)に増額された。もっとも、初任給の額を基準にすると、40~50倍程度から7.5倍程度になったため、無産政党排除という趣旨はわずかながら弱められたとも言いうる。

 一方、その2年後の1952(昭和27)年には、物価の急激な高騰を受けて、供託金が10万円に増額された。初任給は6000円程度であるから、給与水準の上昇と比較しても、更に高い比率で上昇したことになる。こうした経緯は、独立前後、民主化への動きが後退・逆行した、いわゆる「逆コース」の一環として見ることもできる。
 その後も、物価水準の上昇に応じて、1962(昭和37)年には15万円(初任給は13,000円程度)、1969年(昭和44)年には30万円(初任給は27,000円程度)、1975(昭和50)年には100万円(初任給は8万円程度)と、供託金は増額の一途をたどった。もっとも、この間、概ね供託金の額は、初任給の10倍強で推移してきた。

ウ 近年における供託金の大幅増額
 この流れは、中曽根康弘首相の時代になって以来、大きく転換された。
まず、1982(昭和57)年には、供託金が従来の2倍、200万円に増額された。この時期において初任給は、10~11万円程度に上昇したに過ぎない。1992(平成4)年にも、供託金は300万円(初任給は18~19万円程度)に上昇した。
 そして、1994(平成6)年、細川護煕首相の時代、小選挙区比例代表制の導入を柱とする、いわゆる「政治改革」諸法案が成立した。この制度は、従前の選挙制度と比較して、少数意見を国政に反映することを困難とするが、そうした少数意見排除の目的は、供託金制度においても貫徹された。
同時期の公職選挙法「改正」により、比例代表選挙における供託金は、第86条の3第1項の規定により届出をしようとする政党その他の政治団体の、当該参議院名簿の参議院名簿登載者一人につき、600万円又はこれに相当する額面の国債証書を供託しなければならないことになった。

(3) 諸外国の規定
主な諸外国の国政選挙における供託金は、以下のとおりとなっている。

イギリス …約9万円
カナダ …約7万円
韓国 …約150万円
シンガポール …約79万円
オーストラリア(上院)…約2万5千円
オーストラリア(下院)…約5万円
インド …約2万5千円
マレーシア …約90万円
ニュージーランド …約1万5千円
アイルランド …約5万5千円

このように、特に欧米諸国においては、日本の数十分の1ないし、数百分の一の供託金であり、近隣のアジア諸国においても、日本の数分の1の水準である。これら諸外国の例と比較すると、いかに日本の供託金制度が異常であるかが良く分かる。

 更に、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどには選挙の供託金制度がなく、フランスに至っては約2万円の供託金すら批判の対象となり、1995年に廃止している。 

申立人の主張-公職選挙法の違憲性、人権侵害性-
以下の理由により、国政選挙における高額な供託金制度は、人権侵害にあたるものである。

(1)概要
現行の供託金制度は、立候補に莫大な資金を用意しなければならない点で、事実上立候補の自由を不当に制約するものであり、供託金制度を肯定する理由は憲法理論上許容されないと考えられる。また、たとえ供託金制度そのものが憲法上許容されるという立場に立ったとしても、少なくとも現行のように高額すぎる供託金では実質的に不当な立候補(被選挙権)制限となっている。そもそも、憲法14条は法の下の平等を定め、信条や社会的身分等により、政治的関係において差別することを禁止している。また、憲法15条3項は、国民の固有の権利としての参政権を保障し、公務員の選挙につき、成年者による普通選挙を保障している。
 更に、憲法44条は、両議院の議員及びその選挙人の資格につき、社会的身分、財産、収入などで差別することを禁止している。
現在、公職選挙法は、選挙区につき一人300万円、比例区につき一人600万円という、諸外国と比較して、また中低所得層の収入と比較して、著しく高額な供託金を規定している。
これは、事実上、中低所得層を被選挙権の行使から排除するものであり、社会的身分による差別を禁じた憲法14条に違反する。また、被選挙権の行使について、普通選挙が保障されないことになるので、憲法15条3項にも違反する。そして、議員たる資格につき、明らかに財産、収入によって差別するものであるから、憲法44条に反することは明らかである。

(2)立法事実の欠如
参政権のような国民にとって重要な権利を制限するには、立法事実に基づいた議論が国会において十分になされ、慎重の上にも慎重を重ねた上で立法がなされなければならない。しかるに、この選挙供託金制度は、大正14年に立候補制が採用されるのと同時に導入された制度であり、それ以前に泡沫候補の立候補により公正な選挙が妨害されたなどの立法事実を欠いており、立法府の裁量の範囲を逸脱していることは明白である。
そして、この制度が成立した背景は、同年に治安維持法が制定されるなど、無産者に支持を得ていた思想及びその団体を政治的に弾圧することに政府が力を注いでいた時代であることは歴史的事実であり、この制度をお手盛り的に成立させた議員は納税要件のある選挙権による制限選挙により選出されたのである。よって、無産者に配慮を欠いた立法がなされるのは当然であるのはもとより、無産者に対するいわば政治的弾圧のための立法であった。この事は、単に立法事実を欠いていて立法府の裁量権の濫用というに止まらず、その後も供託金額を増額し続けてきたことは、公職選挙法における供託金に関する規定の立法行為自体が時代遅れであり、違法かつ違憲であると言わざるを得ない。

(3)立法目的に正当性がないこと
少数意見だからという理由で、参政権の行使を制限することは民主主義国家として許されることではない。この選挙供託金制度における、泡沫候補の排除という主目的は、少数意見を持つ者に対する政治的弾圧であり、民主主義国家において、到底許されない合理性を欠いたものである。

(4)目的と手段の関連性の欠如
また、選挙供託金制度の泡沫候補の排除という目的が、仮に立法府の裁量の範囲にあると仮定しても、その手段は一定金額の金銭を供託することによって達成されるものではない。なぜなら、この手段は資力がある者に対しては全く無力であり、過去幾多の国政選挙や知事選挙で売名行為と思われる出馬が繰り返されてきたかは、誰もが知るところである。
つまり、この制度は、目的と手段との合理性を欠いているのはもちろん、目的すら達成していないのである。

(5)より制限的でない他の選びうる手段(LRA)の存在
例えば、諸政党の代表選挙においては、立候補のさいに一定金額を集めることを立候補の条件とするような不合理な方法は採られておらず、一定数の推薦人の推薦状を集めることを立候補の条件としている。選挙という制度は、一定の支持を得なければ結果として当選することはできないシステムであるのだから、事前にある程度の支持があることを証明させることは理にかなった方法であり、むしろ当然の方法であるものの、それが過剰な額の供託金ではなく、参政権のような民主主義の基礎を成す国民の重要な権利を制限するさいには、国民に対し不公正な扱いや過度の負担をかけることない手段を選択しなければならない。
そして上記のとおり、目的達成のためのより制限的でない他の選びうる手段があることは明白であり、それにもかかわらず供託金のような、参政権を著しく制限する不合理な手段を取る必要はどこにもない。

(6)民主主義の過程における、近年の司法審査の活性化の動向
 とりわけ前回衆院選後において、司法審査は、不合理な選挙制度に対し、明快な違憲判決を出し、人々が裁判所に寄せる、「多数決によっても侵しえない、少数者の人権や民主制の過程を保護するための、「人権の砦」としての期待にこたえるようになってきている。
 近時における一票の格差に関する、最高裁判決を含む諸裁判例(例えば、最高裁平成25年11月20日判決等)は、立法の不作為に明確に異議を唱えている。
 供託金制度も、不合理な差別という点では、一票の格差の問題と何ら変わりがない。司法審査による人権保障機能、民主主義の維持擁護機能が、今ほど問われている時代はない。被選挙権の行使を侵害するだけでなく、ひいては国民が真に選びたい候補者を選択する権利をも侵害するものであり、早急な是正が必要である。

3 結語
以上より,公職選挙法上の供託金制度,とりわけ国政選挙における高額な供託金は,日本国憲法が保障する選挙権,被選挙権はもとより,思想・良心の自由など、種々の基本的人権を侵害するものであり,憲法14条,15条3項,44条などに反するものであるから,申立の趣旨の通り速やかに是正するよう,国に勧告されたい。                            以  上