永遠道重。 | 劔樹人の「男のうさちゃんピース」

永遠道重。



先日の11月26日、道重さゆみさんがモーニング娘。'14を卒業しました。




13歳から25歳までおよそ12年、4,329日というグループ在籍日数。

青春の全てを愛するモーニング娘。に費やし、自らの哲学を貫き通し、その生き様で多くの人の心を揺さぶり続けた人でした。






まず僕は、これだけは断言しますよ。

道重さゆみに出会った人と出会っていない人とでは、人生の輝きが違ってくると思う。それは間違いないです!

出会っていない人は、なんなら今からでも遅くない。

騙されたと思って、彼女について知って欲しいとすら思っています。

理解出来ない奴はもう知らん!!









さて、自分の話をしますと。

卒業の発表があった半年前からずっと昂り続けていた僕の気持ちは、この一週間くらい前に何故かすっと落ち着いたんです。

それまでは、モーニング娘。に関するちょっと熱いニュース記事なんかでも泣いたりしていたのに。


その時期はなんというか、まるで凪が来たかのように心穏やかでしたね。


当日会場でも、このまま僕はもしかして、泣かないんじゃないかな、とまで思っていました。



…でもやっぱりそんなことなかったです。



オープニングの曲が鳴り響き、レーザーの飛び交う中登場したモーニング娘。'14の10人が、花道をゆっくり歩いて来た時点で涙がボロボロ出て来まして。

もうそこからはイチイチ泣きっぱなしですよ!大の大人が!



なんかネットでは、この日だけは卒業した田中れいなと亀井絵里の6期が揃って「大きい瞳」をやって欲しい、とかそういう意見も沢山見ていたんですけど、僕はそういうのはないなって思っていました。

そりゃあ、道重さんには12年という長い歴史がありますから、色々な時代に思い入れがあるファンがたくさんいるわけですけど、絶対、過去を引っ張りだして思い出で泣かせるような演出はせず、まっすぐ今の『モーニング娘。'14』の姿で勝負してくると思っていたんです。


で、実際そうだったんですけどね。
最後の「赤いフリージア」以外は全部そんな感じだったんじゃないかな。


僕が観たいのもむしろそれ、今の10人の姿だったんで、もう…とにかくグッとくるわけですよ。

そういうことでこの日のセットリストは、ほぼ今回のツアーの延長で、まあ僕は武道館公演も見ていたし、概ねわかっているつもりだったんですが…

それが、まさか…!っていう大きなドラマが待っているなんて。








あれは「ラララのピピピ」だったか…定かではないんですが、メドレーの最中に、一度道重さんが、くつのかかとを気にするような仕草をしたんです。それは確かに見ていて。

でもステージまでは正直遠かったし、僕はそこそこ目も悪いもので、道重さんに起きている異変までは気が付かなかった。


それが、「A B C D E-cha E-chaしたい」でメンバー9人がメインステージからセンターステージに移動したんですが、道重さんだけはその場に残っているって状況が起きて。


あれっ?とは思ったんですが、もう正直、そういう演出に見えたんです。

あれほど10人のフォーメーションダンスを謳っておきながら、なんで最後の最後でこんな演出にしたんだろう、なんて、ちょっとモヤモヤしながら。



ニュースなどでも言われているように、道重さんはこの時、どうやら足を痛めていて、動けなかったらしいんですよ。






でもこれって、もしかして凄いことが起きてるんじゃない…?



彼女は去年、「自分の同期や先輩がいなくても心配ないくらい、後輩たちが頼もしくなった」と言い、それが卒業を決心するきっかけとなった。

後輩たちが、自分のいる今よりももっと素晴らしいモーニング娘。を作ってくれると信じて疑っていなかった。

でも人気も実力も知名度も道重さゆみひとりがずば抜けていて、世の中もおおかた「道重がいなくなったらやばくない?」な状況は間違いないもの。



それが、この一緒にステージに立つ最後の最後で、自分が動けなくなってしまって。



残された後輩たちは、リーダーなしの9人で踊ったわけです。



リーダーの負傷を知ってからは、みんなは9人でやりきる覚悟を決めたと思うんです。お互いをフォローしながら。




もう、凄かったですよ。だって、あんなに「ひとり欠けても成立しないフォーメーションダンス」と強調していたのに、ちゃんと9人でもやれているわけですよ!

以前まーちゃんのいない9人のステージを見たことがあるんですが、それは当初10人でやってると思い込んで見ていたのにどこか違和感があって、人が足りないことに気付いたんですよ。

でも、今回は完全に9人でやり切ってた!



僕は実際そうだったし、彼女の異変を見てなかった会場のかなり多くの人が、こういう演出だと思い込んでしまったんじゃないかと思うんです。リーダーのもとを離れ、9人だけで勝負するっていう演出。

何にしても、9人すごいじゃないか!ってみんな感じたと思うんです。


でもなんならそれを一番感じたのは、もしかして道重さんなのかもしれない。

こんなかたちで、頼もしく成長した後輩たちの姿を見ることになるなんて。



僕はこの筋書きの無いドラマ…運命に震えるような思いがします。






そして、運命がさらに奇跡を起こしたと思ったのは、この9人だけでパフォーマンスしている状態から、「好きだな君が」に差し掛かるところでした。


「好きだな君が」は、道重さんと譜久村さんのふたりの曲で。

明らかにおかしいぞっていう猛ダッシュで、フクちゃんが道重さんのいるメインステージに全力疾走したんです。

譜久村聖というこの人は、この日次のリーダーとして指名されたその人ですよ。

そんな彼女がひとり、負傷した現リーダーの元に駆けつけ、彼女を支えながらふたりで歌うという状況…。

これが偶然起きているって。

ちょっと出来過ぎじゃないかと。

こんな感動的なことないですよ。




それから、道重さんはセットに座ったり、靴をひとりスニーカーに代える場面はあったものの、笑顔を絶やすこと無くラストを迎えます。

最後まで可愛くありたいから、ステージでは泣かないって常々言ってましたからね。

その気迫と覚悟は、あれだけ大きい会場の隅々まで伝わっていたと思います。







それが本編最後の「Be Alive」直前のMCで、隣で観ていたうちの奥さんが「さゆ泣いてる」って言って。

見ると確かに、道重さんは泣いていました。

きっと、ベストを尽くせなかったことが悔しかったんですよね。

もう最後だからっていうだけなら、彼女のプロ意識は泣くことを許さなかったと思うんです。




でも、そんなボロボロ泣いてる彼女の周りには後輩たちがいて、こう歌っていたんですよ。



最新はもう最新じゃない

さあ、悔やんでも仕方ない

生きてるって素晴らしいんだ

君を守る

星を守る

今日を生きる

明日に繋ぐ

君の笑顔が今を創る

(「Be Alive」)


涙が止まらないリーダーを、頼もしくなった後輩たちが守っているかのようでした。

思いもよらぬアクシデントが、こんなドラマチックな物語になるなんて。


僕も涙が止まらなくなって、この時はもはや、声を上げて泣きました。







その後の、卒業セレモニーでのメンバーたちのコメントも素晴らしかったし、手紙を使わず、自分の言葉で綴った道重さんの挨拶ももちろん最高でした。



<【コメント全文】道重さゆみ、「さゆみのファンの人たちが、ほかの誰でもない、みんなでよかった。」>



ラストは明るくなった会場で幸せな気持ちに満ちた笑顔の「HAPPY大作戦」からカーテンコール。

メンバーがステージを降り、ひとり残った道重さんが深々と一礼して、ステージの後方へ消えて行って…そして映像が流れたんですよ。



オープニングで道重さんのところにメンバーがひとりずつ駆け寄ってくる映像が流れたのですが、そのエンディングではその続き…逆にメンバーがひとりずつ彼女の元から旅立っていき、最後に残った道重さんが手に持っている本をそっと閉じると、表紙に『M。4329days Sayumi Michishige』と書いてあるっていう。



「モーニング娘。の道重さゆみ」という物語は、終わってしまった。



まさにそんな映像でした。











2014年11月26日、道重さゆみさんはモーニング娘。’14を卒業しました。




卒業コンサートは、彼女の思った通りにはならなかったかもしれない。

でも、それがより一層彼女の物語の最後を強いものにして、僕たちの心に深く刻まれたのは事実だと思う。




卒業前、道重さんを神格化しすぎるのはどうなんだみたいな議論もよく行われていました。



でも、彼女のファンなら知っていますよね。

道重さゆみは、決して神様なんかじゃないんです。



道重さゆみの物語は、何にも出来なかった一人の少女が、努力と信念でたくさんの人に愛されるまでに至る、人間の物語。


最終回まで試練ばかりだったけど、人生って素晴らしいと思える物語。


完璧じゃない、不完全な人間として、誰しもが自分を重ねることの出来る物語。



だから、道重さんの言葉は、行動は、人生は、人の胸を熱くするし、それには僕らが悩みながら生きる上での、たくさんの答えがあると思うんです。








道重さんは、「みんなに出会えてよかったです。さゆみのことを見つけてくれて、出会ってくれてありがとう」と言った。




その「みんな」は、あなたを見つけたことで、人生がとっても輝きましたよ。





12年間、本当に、本当にありがとうございました。





「時間は戻らない だから先へ行くんだ  両手いっぱい 夢を詰め込んで 」(「HAPPY大作戦」)