るの祭典名古屋上映会 お昼の部 | るーちゃんのブログ

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る・ひまわりオフィシャルブログです

昨日は名古屋上映会でございました!!
ご来場くださいました皆様誠にありがとうございました!

初名古屋。お邪魔できました事に感謝です。
今度は本公演で呼んでいただけるように頑張りますので引き続き宜しくお願いします。

今回はリーディングで新作のお話を2つやらせていただきました。

以前とあるリーディング公演の際に先生方がおっしゃっておられましたが
リーディングというのは、「お客様とのガチの会話に近い」のだそうです。
自分の「読み方」次第、本当に少しの違いで客席の反応が全然違うものになって
そして、リーディング中はずっとその反応を感じながら、その反応を待って新たに台詞を紡ぐ
そんなコミュニケーションなのだそうです。

ちなみに、昨日の昼の部台本「桶狭間の戦い」の物語。
途中で、信長を襲う人たちが気持ち悪い感じで2人登場するシーンがあったのを
覚えておられますでしょうか。
あのシーンは
そんなお客様とのコミュニケーションをよくご存知の滝口氏が
出演者の皆様と相談になり
(真剣で重いシーンが続く場合に、お客様のヒト呼吸(演出の板垣さんがよくおっしゃる
お客様が一息つける瞬間)があった方が物語が見やすくなるのでは?というお考えの中で)
キャストの皆様が作られたシーンでございます。
「みね、刀なめちゃう?」「刀あるかな? あ、靴べらあった!」「オタマにしよう」
等お打ち合わせをされておられました。

また、辻本氏、安西氏が演じられた「お芝居」、秀吉&三成の物語。
こちらはリーディングではなく「お芝居」。
まず楽屋にて台詞をあわせるお二人。その時点で台詞が入っていたお二人ですが
台詞合わせの際は動きなどはついていなかったのですが
舞台上では、三成の頭をそっとなでる秀吉様。ひざまづく三成。
こちらもお二人が舞台上で作られておりました。
終演後は「緊張したぁ!!」と笑顔の秀吉様でした。

本日はまずそんな名古屋上映会より「桶狭間の戦い~信長と秀吉」をお届け致します。
※光秀からの手紙は外しております。ご了承ください。



「桶狭間の戦い~信長と秀吉」

秀吉 私の旦那様は尾張の国を治める大名です。尾張の国は隣の美濃や駿河や三河
   に比べてとても小さな国です。だけど、土地はよく肥え、人々は働き者が多
   いので、私はとてもよい国だと思ってます。そんな国の隅々まで旦那様は見
   回ります。よく晴れた青空の下、私はいつもように旦那様の馬をひいており
   ました。

信長 藤吉郎さん。嘉兵衛さんのところ、無事出産したそうですよ。
   名前を付けて欲しいと頼まれました。
秀吉 それはよかったですね。しかし、旦那様、私のことは、藤吉郎!
   と呼んでいただければ、ああ、それよりみんなが私の事をサルと呼んで
   おりますのでそのほうがよろしければ!
信長 人を呼び捨てにするのがどうも苦手でして。。それにサルはちょっと
   かわいそうです。あ、実はですね、私、あなたの名前を考えてみたのですよ。
   気に入っていただければいいのですが……秀吉というのはどうです?木
   下藤吉郎秀吉です。
秀吉 私のようなものに名を授けてくださるのですか?
信長 ダメですか?
秀吉 とんでもございません!うれしくてうれしくて、ひっくり返りそうです!
   木下藤吉郎秀吉!すごくよい名でございます!ありがとうございます!
   旦那様、私の事を秀吉!と呼んでみていただけませんか
信長 ……秀吉さん
秀吉 旦那様がつけた名前です。秀吉!とお呼びください!
信長 ……秀吉
秀吉 (元気に)はい!
信長 秀吉!
秀吉 はい!
   ……旦那様は織田家に養子に来られてすいぶん経つのに、未だ、これ
   までの低い身分での振る舞いが抜けません。陰では臆病者とあだ名がついて
   しまっているようで。私もそれを否定しません。恐らく旦那様は臆病者だと
   思います。ですが、それの何が悪いのでしょうか?この私も、臆病者です。
   百姓のせがれとして、生まれ育った私は、刀も槍も上手に使う事ができませ
   ん。なのに、まだこうして生きているのは、私の最大の武器、
   逃げ足の速さのおかげなんです。
   ある日……

信長 秀吉、出掛けますよ。
秀吉 はっ。今日はどちらに?
信長 信行さんに誘われて鷹狩りです。
秀吉 信行さんというのは、旦那様の義理の弟になる方です。
信長 無益な殺生にしか思えないので、あまり行きたくないのですが、、
   今回はどうしても断れず、、、
秀吉、申し訳ないのですが、お供をお願いしていいですか?
秀吉 何をおっしゃいますか!旦那様の行くところ、
   必ずこの秀吉がお供いたします!では、準備をしてまいります。

秀吉 旦那様。お待ち合わせはこの辺りかと。
信長 信行さんの姿が見えませんね?仕方ありません、しばらくここで待ちますか?
秀吉 承知いたしました!
   ……何の疑いもなく、林の近くで休憩をしようとしたその時です。
   林の中から刀を持った連中が一斉に飛び出してきたのです。彼ら
   は旦那様を狙った刺客です。味方が数名斬られました。
   怖いです。怖くてたまらない。でも旦那様を置いて逃げるわけには絶対に
   まいりません。私は体の震えを必死に抑えて、刀を抜きました。
   でも、どうすればいいのかわかりません。見ると、旦那様が囲まれて
   しまっています。私は無我夢中で一人の刺客に体当たりを決めました。
   相手がひるんだその隙に、旦那様を馬のところに連れて行き、
   強引に乗せました。
信長 秀吉、私も戦います!
秀吉 私はうまのおしりを思いっきりひっぱたきました。
   馬はいななき、そのまま旦那様を乗せて走って行きました。
   よし、これでいい。旦那様にはできるだけ遠くに逃げてもらえればいい。
   私は刺客たちに叫びました。我こそは織田信長、家臣、
   木下藤吉郎秀吉なり!ここから先は誰も通しませんから!
   ……ですが、私はこれまで人を斬った事がありません。
   だとしたら、この先どうなるのか、答えはひとつです。
   そうです。私が斬られるわけです。
   私が盾になるのです。こんな臆病者でも、旦那様をお守りするためなら出来
   るのです。盾になれるのです。
   旦那様に別れの言葉を申し上げられなかったのは心残りですが、
   覚悟を決めました。相手は3人、刀をふりかざして私めが
   けて走りだしました。もうおしまいです。
   旦那様、今までどうもありがとうございました。私は旦那様に仕える事がで
   きて幸せでした……と、その時

馬が駆けて来る。

信長 秀吉!
秀吉 だ、旦那様!
   ……旦那様が戻ってきたのです。旦那様は馬にまたがったまま、刀を振
   りあげ、私を狙っていた刺客たちに攻撃をしかけました。その時の旦那
   様はまるで鬼神のようでした。あんな旦那様を見たのは初めてです。
   旦那様は本当は強いお人だったのです。あっという間に刺客を斬り倒し
   てしまいました。それを見た残りの刺客たちは退散して行きました。
   私はと言えば尻餅をついたまま、何もできずにいました。
   信長 秀吉、大丈夫ですか?怪我はありませんか?

秀吉 何故、旦那様、何故戻って来られたのですか?
信長 秀吉に死なれては、これから先、道中がつまらなくなるからですよ。
秀吉 そんな、私なんかを守るために、旦那様にもしものことがあったらどうする
   んですか!私なんかより、もっと大事なことがあるじゃないですか!旦那様
   がいなくなったらこの尾張の国は誰がまとめるのですか!
信長 それもそうですね。そんなこと考えもしませんでした。
秀吉 旦那様はなくてならぬお人なのです!どうかこれからは軽はずみな行動は
   お控えください!
信長 わかりました。そんな怒らないでください。

秀吉 でも、ご無事でよかった(泣きだして)ほんとうによかった
信長 ほら、秀吉。帰りましょう。
秀吉 (泣きながら)腰が抜けてしまったので、思うように、立つ事ができません。
信長 これくらいのことで情けないですよ、秀吉。
秀吉 (泣きながら)ごめんなさーい……私が泣いたのは、もう二度と会えないと
 思っていた旦那様に会えたからなのです。本当に無事でよかった。

信行様は兄の旦那様を殺し、尾張を乗っ取ろうとしていたのです。
さらにその信行様を裏で操っていた
のは、駿河の今川義元という大名でした。信行様は切腹となりました。
   その知らせを聞いた旦那様はとても寂しそうな顔をしていました。
   その頃から、旦那様のことをみんなお屋形様
と呼び始めたので、私もそう呼ぶ事にしました。

秀吉 お屋形様、お呼びでしょうか?
信長 秀吉に相談があります。
秀吉 私に?私でお役に立ちますでしょうか?
信長 教えて欲しい
秀吉 何をでございますか?
信長 何故、人は裏切るのですか?

秀吉 は?
信長 人は裏切らなければ生きていけない生き物なのですか?
秀吉 そんなことはございませんよ。
信長 ずっとこんなことを繰り返すつもりですか?人は人を裏切り続けて行くので
   すか?裏切るより裏切られた方が悪いのですか?人が人を信用する世の中は
   もう存在しないのですか?
秀吉 お屋形様……
信長 今川義元が軍勢を率いてこちらに向かっています。
秀吉 では、これからいくさになるのですか?
信長 相手は我々の10倍の軍勢です。
   戦っても、あっという間に勝敗が決まるでしょう。もちろん我々の負けです。
秀吉 そんな……だったら、お屋形様、逃げましょう。この秀吉、逃げ足だけは誰
   にも負けません。ここは逃げるが勝ちってことで
信長 逃げてどこへ行くというのです?
秀吉 私の実家は百姓です。そこに隠れていれば安全です。
信長 城にいる者達はどうします?全員、あなたの家に隠れる事ができますか?
秀吉 それは……無理です。
信長 私たちにもう逃げ場はないのです。

秀吉 私はなにかよい方法はないかと、
   ない頭をひねりましたが、思い浮かぶのは逃げる事ばかり。
   それでは埒があかないので、私は敵の偵察に向かいました。
   百姓に扮して敵に近づき、役立つであろう情報を集めました。
信長 秀吉。本当に明日、今川軍は桶狭間に陣を張るのですね?
秀吉 それは間違いございません。何人にも確認を取りました。
信長 そうですか……
秀吉 いかがなさいました?お屋形様?
信長 まともにやっては勝てない相手です。
   ですが、これで我々に勝機が生まれました。
秀吉 誠でございますか?
信長 桶狭間は見通しが悪く、隠れる場所がたくさんあります。それに明日は雨が
   降ります。馬で近づいても気付かれません。
秀吉 奇襲をかけると?!
信長 いいですか?秀吉。このことは誰にも言ってはなりません。
秀吉 奇襲をかけるのに、お味方にも内緒なのですか?
信長 この城の中に今川の間者がいるかもしれません。
   我々の奇襲は絶対に知られてはならないのです。
秀吉 お味方の中に、敵がいるということですか?

信長 もう私は誰も信用しません。
秀吉 お屋形様……
信長 私は鬼になることに決めました。
秀吉 鬼でございますか?
信長 いずれわかります。
秀吉 お屋形様……。では、どうしてその話を私に
信長 秀吉、あなたは私を裏切りません。
秀吉 もちろんです!私は一生、お屋形様についていきます!
   絶対に裏切りません!
信長 …ありがとう。それだけが、今の私の支えです。
秀吉 お屋形様……
信長 ですが、秀吉。いくさに絶対はありません。我々が負けるかもしれません。
   もちろんそれは死を意味します。それでも私に
秀吉 当たり前でございます!私はお屋形様の側を離れません!
   この秀吉、生きるも死ぬもお屋形様にご一緒いたします!
信長 思えば、ここまで二人でよくがんばりましたね?
秀吉 私は何も。お屋形様ががんばったのです。
信長 こんな私によくついて来てくれました。感謝しますよ。
秀吉 おやめください!我々は生きてここに帰って参ります。
   こんな所でお屋形様は死にません。
   なんだったら私も死にません。絶対に!生きて戻って来ます!
信長 ……その言葉が聞きたかった。
   あなたはいつでも私の背中を押してくれる。
   それが私には……心地いい。
秀吉 お屋形様。
信長 今夜はよく眠っておきなさい。明日、いつ奇襲をかけるかわかりませんから
秀吉 はい。お屋形様もどうぞごゆっくりお休み下さい。
信長 秀吉。

秀吉 はい。
信長 勝つぞ。

秀吉 はい!

明日の事を考えると本当は恐ろしいです。でも
あのお屋形様の自身に満ちた顔がそれを打ち消してくれます。
私は必ず生きて帰ります!

その夜、私は夢を見ました。お屋形様とお花見をしている夢です。
その夢はとてもとても楽しい夢でした。

  暗転
     秀吉 センターに座ったまま
     三成が下手より登場

三成  「殿下! 殿下! ここに居られましたか?」
秀吉  「三成…。夢を見ていました、遠い昔の…」
三成  「夢、でございますか?」

     秀吉咳き込む 

三成  「殿下…大丈夫ですか!?」
秀吉  「…何用ですか?三成」
三成  「はっ。殿下にお手紙が届いております。」
秀吉  「手紙?誰からです?」
三成  「それが宛名が何も無いのです。ただ、、桔梗の紋が…」
秀吉  「かして下さい」

※明智殿からのお手紙がありました





秀吉   「そうですか。光秀は生きていたのですか。」
三成  「 いますぐ。家康に使者を。」
秀吉 「 送ってどうするのです。」
三成 「きまっておりましょう。天海をすぐにこちらに
     引き渡せと申すのです。あの者は、織田信長を討った大罪人です。」
秀吉 「そして、私を天下人に押し上げた恩人です。あの者がおらねば今の私はない。
    しかも、あの者は、私が死んだ後、
    私のことを祈ってくれるのだそうです。奇特な人間でしょう。」
三成 「秀吉様。」
秀吉 「私は人に恨まれる生き方をしすぎた。 特に天下人となった後には。」
三成 「そんなことはございませぬ。私は、少なくとも私はあなた様のことを。」
秀吉 「ありがとう。三成。」
三成 「……。」

秀吉 「長い夢を見ておった。一介の農民が、天下に手を伸ばすなど。 
     お屋形様、半兵衛、、重太郎、、、私の夢はまもなく終わる。
     もう充分に夢を見た。だから、三成。お前は…。」
三成 「私の夢は終わってはおりませぬ。私は最後まで。
     殿下の見た夢を追いかけるつもりでおります。」
秀吉 「…苦労をかけるな。お前は子供の時から
     真面目で融通がきかぬから、、、心配だなぁ。。。
     さきに行ってまっておる。
     いつの日か。あの世で語ろうな。我らが見た夢を。」
三成 「殿下…御意。」