ピグブレイブでアートディレクションを担当しているデザイナーの塚本(@lavitsea_art)です。
今日はピグブレイブの制作にまつわる裏話を色々と話せたらと思います。


RPGとしての「ピグ」を作ろう

森

まず、始めにアバターサービスとしての「ピグ」を一回頭から離してみました。今までのピグの「当たり前」をRPGゲームという枠で捉え直した時に、僕たちが挑戦すべき課題がいくつか明らかになりました。

  • 箱庭式に囚われないRPGならではのフィールド表現
  • モンスターという未知の領域
  • 「きせかえ」から「そうび」への進化
  • 「PRG」向けのピグアバター化

  • クォータービューからの脱却

    RPGと聞いて僕が最初に思い浮かべたのは「広大なフィールドを巡る旅」だったんですが、ピグブレイブはMMOのようにフィールドを駆け巡ることが技術的に難しかった為、どうにか今の仕様の中でも広大なフィールド感が演出できたらなぁという想いがありまして。

    ピグ 箱庭のピグエリア。クォータービューで壁に擬似的な遠近感を出している。


    森 ピグブレイブのモック用エリア。高低差を使って遠近感を強調している。


    ピグでは「当たり前」のクォータービューの表現方法では、壁に擬似的に遠近感を出してごまかす手法が限界でした。上図の2つのエリアなんですが、上のピグエリアでは擬似的な奥行きを壁で表現しているのに対して、下のピグブレイブエリアはクォータービューでありながらも高低差を出すことで遠近感を表現しています。しかし、この手法だと限定的で高低差がない場合は結局いつものエリアと見栄えが変わらないというのが問題でした。
    ピグブレイブならではの新しい見せ方はないのかってすごく悩んでいた時、義理姉の息子と遊ぶ機会がありまして、その子が大好きなアンパンマンの図鑑を見せてもらって「あ、コレ使えそう」って発見がありまして。アニメの背景って草原とかがレイヤー上に交互に重なりあって構成されていて、それでうまく遠近感を出してるじゃないですか。会社戻ってアンパンマンの図鑑買っていったら「えっ?」って感じになりましたが(笑)

    砂漠

    ピグと大きく違う点はピグブレイブではバトルの最中、グリッド内しか移動できないという仕様があったんです。それを逆手に取って移動不可部分のパースペクティブをクォーターからさらに縦に潰して視点を下げることでフィールドの広がりを見せることが可能となりました。エリアの途中からパースが変化するのでよく見ると不思議絵に感じてしまうかもしれませんが、そこを馴染ませてごまかす工夫をエリアデザインでは徹底してます。


    モンスターという未知の領域

    ピグでは「可愛さ」と「デフォルメ感」の追求が主なテーマだったのに対して、ピグブレイブのモンスターの方向性をどうあるべきかは最初の課題となりました。

    RPGゲームではプレイヤーの敵として存在するモンスターですが、大きく分けて2種類あるかなと思っていて殺られる前に殺れ的な「定番タイプ」とモンスター同士が戦うゲームに多い「敵も味方も関係ないタイプ」です。市場の人気ゲームには、敵モンスターが仲間として活躍するゲームは非常に多く、それらのモンスターに共通して言えるのは仲間にしたくなる「可愛さ、格好良さ」がキーポイントになっている点です。現在のピグブレイブは前者の定番タイプに当てはまりますが、倒さないとプレイヤーが殺されてしまうほどの「怖い存在」にするべきなのか「可愛い存在」にするべきかが非常に悩ましいポイントでした。

    結果、あまり決め切らず良い意味で幅を持たせておくことにしました。コンシューマと違い、融通の効くブラウザゲームなのでユーザーの反応を見つつ、日々研究を重ね今後のモンスターの方向性を考えていきたいと思っています。

    また、モンスターデザイン制作の仕組みにおいては低コストで量産できる方法を確立しています。1体1体個別にアニメーションを作るにはかなりのコストがかかってしまう為、モンスターの構造をボーン(骨格)とアバター(外身)で分けています。アニメーションをボーンごとに作ってしまえば、現状10種程度のボーンに対して、外身のアバター約50体もあるため、外身のデザインさえ増やすだけで新たなモンスターが量産できるわけです。

    「きせかえ」から「そうび」への進化

    ピグではモチーフやカラーなどの様々な項目別にポイント制でアイテムを点数化しランクの管理をしています。一方ピグブレイブにおける「そうび」は見た目以外に「パラメータ/スキル/ジョブ/レアリティ」という要素が含まれています。もちろんUIでジョブやレアリティは確認できるはずですが「パッと見でわかる強さ、レアリティ、ジョブらしさ」をデザイン設計してうまく表現できないか、というのが一番の課題でした。

    まずレアリティの差別化に関しては「大きさ」を一番のポイントに持ってきました。ピグの経験上ユーザー心理的に面積が大きくより目立つアイテムを好む傾向にあったので「大きさ」をベースに色使いやモチーフの見せ方などでレアリティの管理を行う方向性で進めていきました。

    一方、ジョブの差別化は「シルエット」がポイントです。防具の描き分けはシルエットがコントロールしにくく、いつか破綻するとすぐに予想できたので「武器」をきっちり分けることをポイントにしました。ナイト=剣と盾・モンク=爪・ウィザード=杖・クレリック=メイスと専用武器とそれを持つ専用ポーズを与える事でシルエットの差別化を図っています。街や部屋にいる時は武器をしまっている状態になりますが、そこでも各ジョブごとに納め方が違ったりして微妙に設定が違うのもこだわりですね。

    「改造」が加えたピグアバター

    6年目を迎えたピグのアイテム制作の中で生まれた「もっとこうできたらいいのに」を集約した「改造」が加えられています。ピグのアバターはたくさんのレイヤーが重なって表示されているんですが、今回ピグブレイブではさらに新規レイヤーをいくつか追加しており、今までできなかった表現ができるようになっているんです。すっごく細かい話ですが(笑)たとえば、エルフのとんがり耳、ドワーフのでか耳、ニャンクスの猫耳が帽子を装備した時に「耳がちゃんと出る」ような仕組みになってたりします。あとは、ツインテールとかポニーテールなどの髪型が頭装備からはみ出ないような仕組みがあったりと。きっと気づかないような変化ですが、かなり綿密に計算されているんです。

    ピグブレイブのバトルではグリッドが見える事が重要なので、見えやすいよう実はピグが縮小して表示されています。その仕様でも、ピグが可愛く見えるように顔・手足・体の比率を少し変えているんです。また、髪の毛もより立体を意識した描き方に変更していて、それに合わせて肌にも影を落としています。少しでも重厚な感じを出す為とエルフの白い肌色表現には影が必要でした。

    さいごにメイキングを

    せっかくの機会ですので、デザイン制作で描き貯めたラフなどいくつか貼っておきます。開発中のラフでボツ案もかなりありますが、興味のある方はぜひご覧下さい。

    NPCラフNPCたちのラフ。ここから各キャラのイメージを固めていきました。


    ロブロフ海賊団のラフ。ドロンボー一味やピラフ一味的なコメディタッチの3人組をどうしても入れたくて(笑)。


    モンスターラフモンスターのラフ。動き方とシルエットをセットで考えています。


    街ラフスィンガルドの各地域のラフ。地図だけじゃ伝えきれない地域性は家具で少しずつ出していこうかと。


    ハウジングラフマルマルは水辺に浮かぶデッキを張り巡らせた漁師町なんです!壊れてもすぐに修理できるよう木材がよく使われています。


    長くなりましたが、日々より良いクリエイティブをお届けしようとチーム一同励んでおります。長文におつきあい頂き、ありがとうございました。 ハウジングも実装され、好きな家具を飾って自分だけの部屋づくりも楽しめるようになりました。ピグブレイブ、是非遊んでみて下さい!


    30万人突破!MORPG
    https://brave.pigg.ameba.jp

    デザイナーの塚本でした。
    https://lavitsea.amebaownd.com
    owndやっているのでよかったらぜひ。