次の危機が近づきつつある-9 終わりの始まり | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

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このシリーズを書き始めてまさに…というタイミングで世界的な株の暴落が始まっている。個人的にはやはり来るべきものが来たという気持ちだし、タイミングがドンピジャじゃないかと気持ちよさもあるが、タイミングを充てるのは至難の業なのでまあたまたまであるのも事実だ。タイミングをドンピシャで充てる力などそもそも自分にはない。同時にこれから暗い時代(実際はそうではなく多くの人は本当は経済成長など必要ないと思っているはずなので成長をあきらめることは財政問題を除けば国民の幸せに寄与する と考えているが、) が続くかと思うと正直頭が痛い限りでもある。

少し危機が始まる…のここまでの議論とはずれて今うが書いておきたいと思ったので今日は更新させていただく。

過去数年の株高相場の前提 が今すべて崩れ去ろうとしているのが現状だ。だから、この株安は市場心理がどうとか中国がどうとかそういうれべるでは決してない。アメリカ経済は3%成長に回帰し、アベノミクス(もしくは黒田緩和)で日本経済は大復活し多くの企業がそうであったように資源投資と新興国投資で大もうけできる。ところが、その前提はすべてもろくも崩れ去ろうとしている。そこに歴史上まれにみる割高な水準に株価があるのだから株価が大きく下落するのは小学生でもわかる自明の理であったはずだ。

加えて、中銀による金融緩和はもはや実態経済の浮上には何の役になった来なかったことも明らかになっているのだ。アメリカのカンザスシティ連銀によればQEは潜在成長をむしろ押し下げるという論文が先日発表されていた。緩和を刷れば景気が回復するというリフレ派の考えを真っ向から否定する論文だが、実際に過去30年にわたって日本経済に起こってきたことを見れば非常に説得性があるということにもなる。

おそらくこれは終わりの始まりである。実際にはアメリカや欧州の経済指標は大きくは悪化していない。だが、アメリカでは資源関連部門や製造業部門が非常に軟調である。今後、過去数年成長をリードしてきたこれらの部門が鈍化すれば労働者の所得に大きなネガティブインパクトを与え消費も軟調になることが予想される。アメリカの企業在庫はリセッション入りといってもいいレベルまで上昇しており明らかにモノが売れていない状態である。

また、以前書いたようにアメリカの株高の多くの部分はコストカットと自社株買いによって成り立ってきた 。今回のマーケットの崩れによって債券を発行して(借金をして)自社株を買うなどという株価のつり上げ方はもはや成り立たなくなるだろう。またコストカットにも限界があるのでやはりこれも株価の圧迫要因だ。さらにコストカットが進めば比較的堅調な労働市場に悪影響が及び経済全体にさらにネガティブなインパクトが発生することは間違いない。

加えてアメリカの企業債務は過去最高レベルに達していることもここまで書いてきたとおりで、成長鈍化とインフレ率の低下はおそらく数多くの企業を圧迫し日本の1990年代後半から2000年代初頭のような企業倒産の増加を招くことは間違いない。すでにエネルギー関連の企業ではそれが始まっているが、その波はその他の業種にも広がるだろう。

おそらく資源国、新興国そして膨大な債務を抱えている米企業部門が今後苦境に陥る。日本は相対的には大丈夫だろうが世界の景気後退の影響を受けないことはないし、ここ1年から2年のGDPの推移を見るに以前から指摘するように日本の潜在成長力はもはやマイナスに入っているだろう。おそらく世界的なリセッションが終わりに差し掛かるかいったん終わるであろう2-3年後に日本財政の危機問題がいよいよ再燃し本格化するだろう。年金に株を大量に買わせるというアホらしい政策ミスもその時に大問題になることは間違いない。

暗い話ばかりで申し訳ないが…。ふつうに考えるとそのような帰結が導かれるのが当然だろうと個人的には思っている。