ラサキツユクサ(2) 連載 原発と放射能を考える (10) | 監視員Ⅱのブログ

監視員Ⅱのブログ

ブログの説明を入力します。

kansiin1の寄稿

浜岡原発とムラサキツユクサ(2)

可憐な花のメッセージを聞き取ろう・・


前回に続きます。このムラサキツユクサによる突然変異観察が、明らかに浜岡原発の影響を示したという実験は何を私たちに教えてくれるのでしょうか。

第一は、この結果は「原発の平常運転時」の結果だということです。何かの事故が起きて放射能が外にもれたからというのではないのです。そしてムラサキツユクサの遺伝子が放射性物質で突然変異したとすれば、それは動物、つまりは人間の体内でおなじようなことがおこらないという保証はありません。したがって、普通に運転していても原発は周辺の生命に影響を与えてしまう可能性を持った危険な存在だということになります。74年の実験当時の線量の上昇度合いは平均でわずか7.5μSv/年でした。それでも影響は出たのです。


kansiin2のブログ

ムラサキツユクサ


kansiin2のブログ

ムラサキツユクサ 雄蕊の毛

kansiin2のブログ

ムラサキツユクサおしべ

もう一つ問題があります。原発の排気塔から出ている気体の放射性物質は、主に放射性キセノンやクリプトンなどと、とさらにその一万分の一ぐらいの放射性ヨウ素が放出されているのですが、クリプトンやキセノンは化学的には不活性で、体内に積極的に取り込まれることはありません。ところが問題はヨウ素なのです。ヨウ素は生物体の体内にはいると著しく濃縮されることがわかっています。このように、ある化学物質が生物の体内に入ると高濃度に濃縮される現象を「生物濃縮」といいます。生物濃縮がよく知られるようになった悲劇が、実はミナマタ病でした。あの有機水銀は体内に入ると脂質と結合しやすく、体内で驚くほど高濃度になってしまいます。そしてあの悲惨なミナマタ病の症状が発生しました。そして、実はヨウ素にもそういう性質があります。

 1976年には日本の原子力委員会は、空気中から植物体の体内への濃縮倍率を260万倍と設定しました。このデータにしたがえば、たとえ原発からの排気中のヨウ素がクリプトンなどの1万分の1であったとしても、植物体の体内ではヨウ素濃度はクリプトンの260倍になってしまいます。つまり、ヨウ素の生物濃縮がムラサキツユクサの突然変異の正体ではなかったか。

 一方でヨウ素はのどの甲状腺に集まります。そしてそこで成長ホルモンをつくるのに活用されます。ですから、成長ホルモンをより多く必要とする若い生物ほど、甲状腺へのヨウ素の集まり方は早くなります。そこに本来なら自然界に存在しない放射性ヨウ素が入ってくると、このルートにのっておなじように甲状腺に濃縮されて、がんをひきおこしてしまうのです。ほかにも体内に入ると生物濃縮を引き起こしてしまう放射性物質は、いくつかありますが、それは体外で、つまり生物濃縮の前にはいずれも非常に低い濃度なのです。つまり「生物濃縮」を無視して、単なる環境中の濃度だけ議論するのは、重大なごまかしになるということに、私たちは注目していかなくてはなりません。