安全保障関連法成立 | 日本への提言

安全保障関連法成立

安全保障関連法がついに成立しましたが、これは理想憲法を掲げた平和を追求する日本の大きな転換点となった。


安全保障関連法が19日未明、参院本会議で自民、公明の与党と野党の次世代の党、日本を元気にする会、新党改革等による賛成多数で可決され、成立した。民主党など野党5党は18日、安倍内閣不信任決議案の提出などで採決に抵抗したが、否決されて押し切られた。



安保関連法は、改正武力攻撃事態法、重要影響事態法など10本を一括した平和安全法制整備法と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法である国際平和支援法の2本立て。日本の平和と安全に関するものと世界の平和と安全に関係するものにわかれる。

日本の平和と安全については、改正武力攻撃事態法に集団的自衛権の行使要件として存立危機事態を新設した。日本が直接、武力攻撃を受けていなくても、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃されて日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、他に適当な手段がない場合に限り、自衛隊が武力行使できるようにする。

また、朝鮮半島有事を念頭に自衛隊が米軍を後方支援するための重要影響事態法は日本周辺という事実上の地理的制限をなくし、世界中に自衛隊を派遣できるようにした。後方支援の対象は、米軍以外の外国軍にも広げる。

世界の平和と安全では国際平和支援法で、国際社会の平和と安全などの目的を掲げて戦争している他国軍を、いつでも自衛隊が後方支援できるようにする。この際、国会の事前承認が例外なく義務づけられる。

PKO協力法も改正し、PKOで実施できる業務を駆けつけ警護などへ拡大。自らの防衛のためだけに認められている武器使用の基準も緩める。

安保関連法は、安倍内閣が5月15日に国会に提出。衆院特別委で約116時間の審議を経て、7月16日に衆院を通過。参院特別委では約100時間審議された。



戦後日本の歩みを考えた時に、日本は先の大戦の反省を元に、愚直なまでに平和を追求し、理想憲法と言われる日本国憲法を守り、一切の戦争に直接加担する事なく過ごしてきました。1991年、湾岸戦争で日本は1.55兆円を多国籍軍に支払う事により貢献したが、イラクから解放されたクウェート政府が米国の主要な新聞に感謝広告を掲載したが、クウェート解放のために努力してくれた国々の中に日本の名前がなかった。

この事に多くの日本人と日本政府は衝撃を受けて、金だけ出すやり方が世界には通用しない事を思い知らされた。現実にはこのお金は兵士や武器や弾薬を運ぶ燃料等に使われており、間接的ではあるが戦争勝利に大いに役立ったはずだ。世界で日本だけ平和憲法を掲げて世界で起こっている戦争や問題にお金だけ出して参加するやり方は事実上否定されたのだ。

日本の平和憲法も在日米軍と自衛隊という名の日本の軍隊があるから通用する話だという事も国民の多くは知っている。安全保障関連法の審議時間が足りないという声も多いが、恐らく年内続けても進展しないのは国民の多くは分っている。つまり、日本という国は理想とする憲法と現実の間に大きなギャップのある国だからである。

例えば、安全保障関連法は憲法違反という声があり、それは一面ではそうかもしれない。ならばもっと大きな憲法違反は自衛隊という世界でも有数の軍隊を持っている事である。ところが現実を見ると自衛隊という名の軍隊は無くてはならないし、むしろ強化しなければならない事は多くの国民は分っている。戦後一貫して自衛隊の違憲を訴え、無くす為に行動してきた共産党や社民党が当面は認めると言っているのである。

つまり、現実の前にはあの共産党や社民党でさえ、自衛隊は必要悪だと言っているのである。その背景は中国であり、北朝鮮があるからである。実質の脅威である中国は1989年以来軍事費が41倍に膨らんでおり、今や日本の軍事費5兆円の3倍の軍事費にまで膨張している。勿論アメリカは中国の4倍あるからまだ本当の脅威にはなっていないが、恐ろしいのはアメリカが大幅に軍縮しているのに中国は相変わらず驚異的なペースで軍事を拡張している事である。

GDP比でみてもアメリカは3.5%、中国2%強、ロシア4.5%、サウジアラビア10%強、フランス2.2%、イギリス2.1%、インド2.4%、ドイツ1.2%、日本1%と主要国で一番低く、8位なのである。勿論これは在日米軍が駐留しているからだろうが、軍事費の節約ができている国家なのである。東日本大震災の例を出すまでもなく、大災害時に自衛隊がいたからこそ何とか対応できたし、米軍や世界各国の援助も大きかった。

南シナ海や東シナ海の紛争は日本国民の大いに知るところではあるが、もっと恐ろしいのは第一列島線、第二列島線と領土領海を拡張し、太平洋の半分を自国の領海のようにしようとしている事である。つまり、日本は中国の軍事力の範囲の中の属国のようにしようとしているのである。当然、アメリカは反対しているから、今すぐの話ではないが日本の存立にも関わる大問題である。



1972年の日中国交回復時の中国は貧しく、毛沢東も日本軍のお蔭で中国共産党は蒋介石率いる国民党を追い出す事ができたと感謝までしている。国交回復に大きな力となった周恩来は私が尊敬する人物で、1989年までは中国は健全な国家だったと思うが、胡耀邦の死により起こった民主化運動である天安門事件を境に中国は共産党独裁の軍事大国を目指すようになったのである。

中国は今回の安全保障関連法成立について世界で唯一と言っていい懸念を表明している。日本の軍事力強化や戦後日本の平和国家としての歩みに対する変更に重大な懸念を抱いていると言っているのである。お笑いの様な話だが、中国の脅威があるからこそ日本は軍事費を増強しているのである。この話に安全保障関連法反対の立場の人はどう答えるのだろうか。

日本国憲法は私も理想的な憲法だと思うし、これでやっていけるなら言う事はないが、世界では相変わらず戦争が絶えないし、テロ国家まで出現している状況である。世界中の国が寄ってたかってもIS一つを滅ぼせないのが現実であり、ヨーロッパ難民の元凶となっている。日本一国しかないならこの平和憲法は成立するだろうが、他のどの国もこの平和憲法を採用した国が無いのが現実である。

世界中の全ての国が平和を愛するのであればそもそもこんな憲法さえ必要ないのである。永世中立国として日本で知られているスイスは実際は永世中立国ではなく、国民に徴兵制を強いている軍事中立国なのである。各家庭に小銃を装備し、その年取れた小麦粉は1年備蓄することにより籠城戦にも耐えられるようにしているのである。その為、スイスのパンは世界一まずいので有名である。

スイス同様に永世中立を宣言し、周辺国から承認を得ている国はオーストリア・ラオス・トルクメニスタンがあり、宣言のみはカンボジア等がある。日本が永世中立国になるには米軍を撤退させ、他国との軍事同盟や軍事援助条約、安全保障条約等の全ての軍事条約を破棄し、周辺国の同意が必要であるから事実上不可能な話である。



かつて日本の総理は人1人の命は地球より重いと言って超法規的措置でハイジャック犯の要求する赤軍派メンバー等を開放し、16億円の現金を支払った。当然世界各国は反対し、日本を批判した。当時お花畑だった日本は乗員乗客151名の命が助かったと喜んだが、その後同様の事件が多発し、かつ釈放されたメンバーが世界各地で爆破事件等を起こし、多大の犠牲者がでた。

地球が無ければ人類自体が存続できないのになぜ地球より重いのだろう、赤軍派のテロリストを解放したらまた事件を起こすのは明らかなのになぜ解放したのだろう、平和憲法が優れた憲法ならなぜ追随する国が無いのだろう、戦争絶対反対の村山元総理は中国の軍事パレードになぜ参加したのだろう、なぜ日本の左寄りの人達は中国に対して何も言わないのだろう等、日本は矛盾だらけの国である。

憲法解釈の変更は認められている事で、憲法違反には当たらない。憲法云々言う前に国民の命と国土が危険に晒されているのに憲法を守る事に何の意味があるのだろう。地球の話と一緒で、憲法を守って国土や国民が守れなくては本末転倒である。友愛精神で東シナ海を周辺国と共同管理し、日本列島は日本だけのものじゃないと言っていた鳩山元総理でさえ、常時駐留なき安保という思いを持っていたが、総理という立場になった中、その考え方は今、封印しないといけないと米軍海兵隊の存在を認めたのである。

日本はマスコミの殆どが与党批判一辺倒になる為、今回の安全保障関連法成立についても野党一斉に反発と報道している。賛成している野党もあるのだから野党一斉という書き方や言い方はおかしいだろう。そもそも集団的自衛権は全ての国家に認められている権利であり、今まで憲法解釈でできないと主張してきただけの事である。周辺国家の脅威が増大した為に、憲法解釈を変更するのがなぜおかしいのだろう。



よく強行採決だと言って無効だという意見もあるが、議会制民主主義の基本である多数決がなぜ民主主義に反するというのだろう。少数派の意見も60日ルールが適用できる日まで聴いているのに時間が足りないという議員や国民は本気でこの問題を考えているのだろうか?私は少なくとも湾岸戦争の辺りからこのままではいけないという危機感を持っていてこのブログやその他で色々考えてきた。

あの反対デモに参加している人間の内、どの程度が私と同じかそれ以上考えているのだろうか?この法案を戦争法案と言っている人間は全く法案の中身を見る事なく、叫んでいるのであろうことは私でも分る。問題はこれからで、今後起こりうる色々な事象について国会の審議や検証が必要になってくるのであろう。本当に国民の殆どが反対しているのなら自民党の支持率は大きく下がるはずである。

時事ドットコムでは自民が9月に入り、24.1%→23.3%と0.8%減っているが、民主党も5.6%→4.9%と0.7%減っている。比率でみたら明らかに民主党支持の減少の方が大きい。そもそも野党第一党の民主党の支持は公明党とさほど変わらない。それなのに国民の多くが反対しているという民主党や共産党の意見は出鱈目だ。どちらとも言えないという曖昧な意見を全て反対に数えるからそうなるだけなのである。

そのどっちつかずの人を私は無視していいと思っている。戦後70年を経て、湾岸戦争等数々の戦争もあり、中国による尖閣問題や南シナ海の衝突も経験し、北朝鮮の弾道ミサイル発射も何度も経験し、未だに集団的自衛権について自分の意見を持てない人は真剣に考えていない証拠である。その点では私は反対派の方の方がましだと思っています。日本には賛成も反対も言わない事なかれの人が多過ぎる。

70年間続いた戦争で1人の人も亡くならないという奇跡の様な国家だった事が、日本人を平和ボケさせているだけの事である。しかし、世界や周辺国はそれを許してはくれません。いくら時間をかけても難しい問題には答えを出さないのが日本人の特徴です。唯一の答えを出せるのが選挙であり、来年の参議院選です。今回法案は成立しましたから反対なら来年の参議院選挙で自民党を第一党から引きずり下ろせばいいだけの事です。選挙も行かない連中が反対反対と言っているとしたら笑止千万である。

因みに私は成人してうん十年、社会党・自民党・新自由クラブ・共産党・維新の党・民主党と、公明党以外の政党の殆ど全てに投票してきました。最近は個人は民主党の議員、政党は自民党に入れていますが、国政投票で投票に行かなかったのは多分一回だけです。もし選挙に行った事が無い人がいたら文句を言う資格はないし、邪魔なだけである。意思表示ができないなら黙って従うしか存在価値の無い人間だと思っています。



長々と書いてきましたが、安全保障関連法はどこの国も実施している当たり前の権利で、むしろ70年もかかった事に反省しなければなりません。平和憲法が世界に受け入れられないと分った頃からもっと真剣に考えて成立させるべきだったと思います。最後に評論家や議員の意見を少しご紹介します。



限定的な集団的自衛権の行使を可能にすることで日米同盟がより強固になり、戦争を未然に防ぎ、我が国の安全を確実なものにする。      (自民石井準一)

安保法案はつい成立した。日本はこれで、戦後体制の縛りを解いて健全なる独立国家への重要な一歩を踏み出した。中国からの脅威に対処するのにまだまだ不十分だが、アジアの平和を守るための抑止力が確実に増強された。だからこそ、この法案はベトナムやフイリビンなどのアジア諸国から歓迎されるのだ!     (石平太郎)

昨日の暴力的な強行採決は無効だ。法案が違憲かどうかは明白で、集団的自衛権の行使は戦争に参加することだ。     (民主福山哲郎)