2015年5月30~31日 *掲載順が前後します。

 5月30日から1泊2日でシンガポールに飛んだ。 年1回、当地で開催される「アジア安全保障会議」(いわゆる「シャングリラ・ダイアローグ」)に出席するためだ。 

 前日は沖縄(琉球放送)で生中継された「朝まで生テレビ」に出演。 睡眠ゼロの状態で、那覇から羽田に移動。 そのままシンガポール行きの飛行機に飛び乗った。 土曜の夜にシンガポールに到着。 日曜日の遅い便で現地を発ち、月曜の早朝に帰国するという強行スケジュールだった。 結局、参加出来たのは、最後の一部のセッションだけ。 それでも、シャングリラの会議に顔を出せたのは意味があったと思う。

 毎年、5月にシンガポールのシャングリラホテルで行われる「シャングリラ・ダイアローグ」には、米国を含むアジア太平洋地域30数カ国の国防大臣が集結する。 今年の会議には、米国からカーター国防長官が出席。 日本からは、中谷防衛大臣が足を運んだ。 中谷大臣がスピーチで打ち出したこの会議の機能をさらに高めようという「SDI(シャングリラ・ダイアローグ・イニシアチブ)」は好評だった。

 中国は意図的に閣僚レベルの派遣を控え、人民解放軍の幹部を出席させている。 が、今年、中国の代表としてやって来た人民解放軍副参謀長は、昨年より一段格上の人物だった。

 この会議を主催しているのは、英国に本拠を置く世界有数のシンクタンク、IISS(英国国際戦略研究所)だ。 世界各国の軍事力を分析した年報「ミリタリーバランス」の発行元としても知られている。 当然、「シャングリラ・ダイアローグ」は、誰でも出席出来るというものではない。 今回の会議出席にあたっては、IISSの友人たちが親身にサポートしてくれた。(感謝X10)

 昨年のシャングリラ・ダイアローグには、日本の首相として初めて安倍総理が出席した。 これも日本の総理として初の基調演説をやった。 過去のブログにも書いたが、内閣府特命担当大臣だった当時、総理のシンガポール行きを2度に渡ってお薦めした。 産業競争力会議の議事録にも、「総理の国際発信力は歴代総理の中でも図抜けている。ぜひ、ダボス会議やシャングリラー・ダイアローグような舞台を最大限に生かして、日本の政策や立場を発信していただきたい」という山本一太大臣の発言が残っているはずだ。

 日本にとって、なぜ、シャングリラ・ダイアローグが重要なのか? 最大の理由は、この会議がアジア太平洋地域の安全保障問題を論じる最も発信力のある舞台になっていることだ。 すなわち、日本の外交、安保政策を内外に打ち出すツールとして、これほど効果的な装置はない。 実際、昨年の安倍首相のシンガポールでの演説は、海外の多くのメディアによって大きく報道された。 安倍総理個人への注目度が高かったことに加え、タイミングが抜群だった。 東シナ海、南シナ海で強引に海洋進出を進める(=力による現状変更を試みている)中国への警戒感が関係各国の間に広がっていたからだ。

 安倍総理が出席した昨年のシャングリラ会合の中国政府の代表は国防大臣ではなく、人民解放軍の幹部だった。 この国際会議で、中国は明らかに孤立していた。 特に驚いたのは、米国が容赦のない表現で中国を手厳しく批判したことだ。 

 習近平政権が日本へのアプローチを軟化させた要因の一つに、「中国首脳部が『シャングリラ・ダイアローグ』の雰囲気を見て中国孤立化の雰囲気を感じ取り、軌道修正した」可能性を挙げる専門家は結構、いる。 逆に言うと、この会議を効果的に活用することで、中国の動きを牽制出来るということだ。

 日本政府が「シャングリラ・ダイアローグ」を重視すべきと考えるもうひとつの理由は、この会議を主催するIISS(英国国際問題戦略研究所)と日本政府との連携強化に結びつくということだ。

 英国を拠点とするIISSの特徴は、情報分野に強いこと。 たとえば、「シャングリラ・ダイアローグ」の期間中に各国の情報関係者が非公式に集まる枠組みがあることは、(関係者の間では)よく知られている。 日本国内外のテロを防ぐために、日本政府の情報収集、分析能力の強化は急務だ。 IISSの知見や彼らの情報ネットワークを取り入れることは、サイバーセキュリティーの強化にも繋がる。 

 シンガポールのホテルに到着するや否や、熱いシャワーを浴びて、ビジネスサマーカジュアル(?)に着替えた。 シャングリラホテルの前で専用バスに乗り、首相公邸の夕食会に向かった。 会場では、スウェーデンのカール・ビルト元首相を含む要人と言葉を交わすことが出来た。 IISSの友人たちとも再会した。 メインテーブルに座っていた中谷防衛大臣にも話しかけた。 さすがは元自衛隊レンジャー部隊。 中谷大臣は、体力的にも、精神的にもタフだ。 連日の国会答弁で消耗しているのではないかと心配していたが、すこぶる元気だった。 スマホのカメラで大臣とのツーショットを撮り、さっそくツイートさせてもらった。 

 翌日は2つの全体セッションに参加した。 特に中国の代表(人民解放軍副参謀長)が登場した最初のセッションは超満員だった。 「南シナ海は平和そのものだ」という副参謀長の冒頭の発言には、会場から苦笑が漏れていた。 2つ目のセッションの議論も充実していた。 パネリストの中には、シンガポールとニュージーランドの国防大臣もいた。

 今回の会議では、何かのパネルに参加するとか、スピーチをするとかいう予定は最初からなかった。 全体スケジュールの最後の部分しか出れなかったし、スピーチや議論の準備をする時間もなかった。 それでもひとつだけ反省していることがある。 全体セッションの中で(急遽、席上のパソコンでエントリーしたものの)質問が出来なかったことだ。

 全体セッションのモデレーターを務めていたIISSのチップマン博士(所長)とは、何度も会っている。 少し前に来日した際にも、夕食をご一緒した。 IISS関係者に頼んで事前に根回しをしておけば、必ず指名してくれただろう。 が、直前まで、何の働きかけもやらなかった。 睡眠不足で疲れていたこともあり、質問の中身を考える時間もほとんどなかった。 

 あーあ、厳しい日程を無理やり調整し、6時間もかけてシンガポールまで行ったのに!(残念+反省) 何の発言もしないというのは、存在しないのと同じだ。 たった一言でも、何らかの発信は残しておくべきだった。 が、まあ、こういう時もある。 ひとつよかったのは、翌日の昼食会で隣に座ったチップマン所長と30分近く意見交換する機会を持てたことだ。

 そう言えば、今年の「シャングリラ・ダイアローグ」には、米国の議員団が参加していた。 マケイン上院議員の記者会見の様子を現地のマスコミが報道していた。 ふうむ。 来年は有望な若手議員に声をかけて、日本チームでシャングリラに乗り込むという手もある、な。

追伸:沖縄ー東京ーシンガポールー東京という行程。 1泊2日の忙しい旅だったが、乗り換えはとてもスムーズだった。 客室乗務員の人たちも、とても親切だった。 お陰で機内ではゆっくり休むことが出来た。(感謝) 

 海外出張の度に思う。 日本の航空会社のサービスは(フライトスケジュールの正確さも含めて)世界一だ、と。(ニッコリ)


◇山本一太オリジナル曲:
「素顔のエンジェル」
「マルガリータ」
「かいかくの詩」
「一衣帯水」
「エイシア」