抹茶ーず目当てで宇治に行ったついでに、京都まで足を伸ばした私。
演劇女子部ミュージカル「TRIANGLE」のDVDを買ってきました。


本公演は6月に上演され、DVDも9月2日に発売済み。
遅きに失した感もありますが、個人的な感想を述べたいと思います。

①DVDは2枚組。
舞台「TRIANGLE」は、サクラ姫の視点で描かれたα編と、アサダの視点で描かれるβ編に分かれていて、一つの公演はα・βのいずれかを見るという形でした。
DVDは2枚組(さらにサウンドトラックのCDがつく形)になっていますが、これは正解でしたね。お互いが補完し合う関係になっているので、一方だけだと不完全燃焼になったかもしれません。
今回の舞台の面白さを、別の何かで例えるなら……

ベリキューの「超HAPPY SONG」でしょうか?
「超HAPPY SONG」は、Berryz工房と℃-ute、それぞれのアルバムに収録された曲「Because happiness」「幸せの途中」を同時再生することで生まれます。単体で成立しているかのように見えた楽曲が、実は一部に過ぎなかったという、つんく♂さんの遊び心にあふれた企画です。
私はα編から見たのですが、初めて「Because happiness」を聴いた時に感じた「間」を、この舞台でも感じました。
Berryz工房の楽曲に、℃-uteの歌声が入り込む隙間があったように、β編には、α編の「間」を埋める会話が入っています。
両方見ることができるDVDは、お買い得だと思いました。

②初主演の石田さんと、男役に初挑戦した鞘師さん。
まず名指しで賞賛したいのが、今回の舞台で初めて主役をつとめた10期メンバーの石田亜佑美さんと、男役に自ら志願した9期メンバー鞘師里保さん――α編で中心になる2人です。
この2人に共通しているのは、それぞれのキャラクター(サクラ姫・キリ中尉)に入り込んだ芝居をされていることと、モーニング娘。とは別の、ミュージカルの歌い方が見事にハマったことでしょう。

石田さんが演じる、恋に恋するサクラ姫は、ちょっとした仕草が可憐で愛らしく、娘。の「あゆみん」でも「だーいし」でもない、世間知らずのお嬢ちゃん(うらやましがりやのダイスより)の魅力にあふれています。
とても丁寧に演じられているので、物語にスッと入ることができました。
サクラ姫が最後にとる選択は、私にとっては自然なもので、キャラクターの成長を感じることができます。忘れてはいけないのは、サクラはイオタ女王の一人娘――次代の女王になる「この星のために我が身を捧げる」お方だということ。これが貴族なら、普通の学園ドラマなら、もう一つの選択肢を選んでいてもおかしくありませんが。

鞘師さんのキリ中尉は存在感があって、立ち振る舞いがcool。
原作の世界からそのまま飛び出したような外見と、内に秘めた想い。生々しい葛藤を、言葉ではなく、表情やダンスで表現しています。
(α編はセリフも多く、人間的な魅力を感じさせるシーンもあります)
舞台「ごかくゆう」の千秋楽を観劇して以来、鞘師さんが一番輝くのは演劇だと思っている私ですが、彼女の男役は期待以上の出来でした。
サクラ姫の選択次第では、脚本を担当した塩田さんが、以前、Berryz工房と組んで上演した「三億円少女」のイチローちゃんになってもおかしくなかっただけに、最後の「御機嫌麗しゅう」にはウルウルきますね。

③安定の工藤さんと、人生3回目な小田ちゃん。
β編の主人公・アサダを演じる10期メンバーの工藤遥さんは、1年前のミュージカル「LILIUM~少女純潔歌劇~」のファルスに続く男役。
ハロプロエッグ(現研修生)時代から素質を感じさせた演技力に自信が加わり、役者としての華もある。持ち前のハスキーな歌声が、いかにも少女漫画に出てくる初恋の相手といったアサダに似合っていました。
アサダは受け身なキャラクターで、大事なところで下手を打ちます。同じ男役でも、ファルスの経験がそのまま活かせるわけではありません。にも関わらず、工藤さんはアサダの軟弱を表現できていまスワね。
最後の「さようなら、愛しい人」にエコーがかかっていてホッとしました。

11期メンバーの小田さくらさんは、サクラ姫の侍女であり、ご学友であり、アサダに想いを寄せる重要人物・ローズウッドを好演。
自分の秘密をサクラ姫に打ち明ける「ローズウッドの告白」や、β編のラストを飾る「手をはなさない」の、ここぞというタイミングで涙をこぼす「泣きの演技」に痺れました。
涙と言えばミュージカル「シンデレラ」の高橋愛さんも凄かったけれど、小田ちゃんは「TRIANGLE」が2度目の舞台ですからね。経験が少ないのに完璧にこなしてしまう「人生3回目」感がハンパないです。

④これがハロプロの生きる道
一年前に上演された「LILIUM~少女純潔歌劇~」は、末満健一氏が手掛けたダークな世界観と緻密な設定に、演者であるハロプロメンバーの表現力もあって、これまでにないほどの盛り上がりを見せました。

DVDの売り上げも好調で、今も次回作や再演を望む声が聞こえます。
「TRIANGLE」は前売りだけで全席・全公演完売しましたが、その裏に「LILIUM」の評判があったのは言うまでもありません。
「ステーシーズ」「我らジャンヌ」「LILIUM」「SMILE FANTASY!」と、末満氏が手掛ける作品が続いた感のある、ハロプロの舞台演劇。
末満氏が関わらない「TRIANGLE」は、劇女の今後を占う作品でした。

結論から申し上げれば、関係者はプレッシャーに打ち勝ちました。
ある意味において、登場人物が成長しない(進化は求められても成長は許されない)世界で、全く救いのない結末を迎える「LILIUM」と、女王のお告げをキッカケに葛藤する主人公の成長を描いた「TRIANGLE」
「LILIUM」が本格的なミュージカルなら、「TRIANGLE」はアイドルに特化した舞台だったと思います。ハロプロを知らない方に勧めるなら前者、アイドル好きで、心臓に悪い話を好まない方に勧めるなら後者と、住み分けができるのではないでしょうか?

演歌やフォークの大御所をマネジメントしてきた事務所のアイドル――ハロー!プロジェクトの、他のアイドルに負けない軸。大切にしなければならない活動はコンサートにあると信じていますが、今後は、これにミュージカルも加わってくるのではないかと感じました。