アーリーベストアルバム「旅立ちの歌」歌詞と解説 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

アーティストには、「処女作は超えられない」ということわざがある。
村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」、ランディさんの「コンセント」、ばななさんの「キッチン」、オレの「COTTON100%」などなど、
ビートルズでも初期のロックンロール時代がいちばんいいというファンは多い。
オレは2001年から4年ほどONSENSというロックバンドをやっていた。もちろん作詞作曲ボーカルはオレだが、相棒のタケちゃん(小嶋剛成)のアレンジはロックだ。
タケちゃんもまた天才で、ギター、ベース、ドラム、キーボード、あらゆる民族楽器をひとりでこなしてしまう。ロックだけじゃなく、アイリッシュ、カントリー、ロカビリー、フォルクローレなど、幅広いジャンルを身につけている。
このアルバムには初期の名曲ばかりをえりすぐったが、今聴いても古くならないどころか、瑞々しいパワーにあふれている。
この勢いと疾走感、ぐいぐいと心の奥底まで踏み込んでいく力強さは、今後何十年音楽をつづけても超えられないなあ。

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アーリー(初期)ベストアルバム 旅立ちの歌(12曲 61分 2500円)

1、 旅立ちの歌
2、 ぬちどう宝
3、 なんくるないさ
4、 100億光年の孤独
5、 落涙
6、 リストカッター
7、 Sorry
8、 もしもぼくが死んだら
9、 Be here now
10、Born to love
11、おまえの舌苔を陽にさらせ
12、おやすみ

作詞作曲ボーカル:AKIRA 編曲演奏:小嶋剛成

1、 旅立ちの歌
「COTTON100%」のなかにこんなフレーズがある。

たとえばこの平均台を歩いていけば、安定した地位や名誉や成功が待っているよと誘われる。
もしもそこから落ちたらば、真っ暗闇の地獄だぞって脅される。みんなあせって青い顔してバランスとって、このせまーい一本道をだまって行進してくんだ。
 オレだって、踏みはずしたときゃビビったよ。ところがだ、落ちてった先にはいったい何があったと思う?
 地面だよ。
 落ちろ! 落ちろ! 落ちろ!
 そして目覚めろ!!
 いいかい、くもりない目で、クリアーにものを見るんだ。教育やら情報で汚れちまったまぶたをぬぐってね。ジャンキーやケモノのように自分に必要なものだけを選びとるんだ!

若者は言う。「なにかしたいんだけど、なにをしていいかわからない」
当然だ。せまい日本社会しか知らないで育った者には、2,3枚のカードしかない。まずは選択肢のカードを集めることからはじめよう。
それには旅しかない。
世界中を旅して集めたたくさんのカードの中から、必ずきみがやりたいことが見つかるはずだ。
つべこべ悩むひまがあったら、まずは旅立て!

「旅立ちの歌」

もしも君が傷ついたり
つまずいたり へこんだら
青いネガは部屋に捨てて
旅に出てみないか

空に抱かれ 海に抱かれ
陸に抱かれ 夢見る
見知らぬ街 見知らぬ人
見知らぬ自分

せまいせまい平均台 列にならんで
背中押されどこへむかう
落ちろ落ちろ! そして目覚めろ
地面が君を受けとめる

風のように 鳥のように
川のように歌うよ
へたくそでも君にとどけ
旅立ちの歌

もしも君がひきこもって
つらい思いするなら
冷めた涙雨に流し
旅に出てみないか

森と遊び 虹と遊び
影と遊び 見つける
変わる景色 変わる気持ち
変わる自分を

走る走る暴走列車止まらないなら
窓を開けて外へ飛びだそう
逃げろ逃げろ! そして旅立て
大地が君を歩ませる

花のように 草のように
月のように歌うよ
つたなくても君にとどけ
旅立ちの歌

まわるまわる星のうえで旅をつづける
人生はめぐる輪のように
生まれ死んで 生まれ死んで 生まれ
もう一度君と出会うんだ

君のままに 在るがままに
愛のままに歌おう
不器用でも天にとどけ旅立ちの歌
へたくそでも君にとどけ旅立ちの歌
つたなくても君にとどけ旅立ちの歌
ラララ

2、 ぬちどう宝
沖縄本島の読谷(よみたん)の海にほど近いところに「チビチリガマ」という洞窟がある。戦時中ここは避難壕としてつかわれていた。当時の皇民化教育によりアメリカ軍が攻めてきたら自分たちは殺されると思い込んだ住民たちは、アメリカ軍に殺されるぐらいならその前に自分たちで死んだほうがいいと教えられてきた。
もうひとつの避難壕「シムクガマ」に逃げこんだ人たちの中にはハワイ帰りの日系人がひとりいた。「いくらアメリカ軍といっても同じ人間だ」と死を選ばなかった彼らは生き延び、チビチリガマにいた140人は集団で自決した。
貧しい農民たちは銃や刀や青酸カリもない。父親が草刈鎌で自分の子供たちの喉を切り、妻、両親、最後に自分の首を切った。
その洞窟で歌わせてもらったのがこの歌だ。

「ぬちどぅ宝」

青い海に還りし命
神の贈りし赤子の瞳

灰土の島に芽吹いた命
名もなき花の可憐な姿

ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
ほかに従う理はなし
ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
あああ海がなるさ

愛しい里に育む命
風に舞い飛ぶ子どもらの声

熱き想いを秘めたる命
恋の喜び愛の苦しみ

ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
ほかに従う理はなし
ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
あああ花が咲くさ

市に売られし子豚の命
朝夕いただく海山の幸

ウタキに祈る老婆の命
森をふるわす精霊の歌

ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
ほかに従う理はなし
ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
あああ風が吹くさ

崖を飛びこむ乙女の命
耳をつんざく砲弾の音

鎌で首切る農夫の命
波に洗わる戦死者の骨

ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
ほかに従う理はなし
ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
あああ空がなくさ

ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝
ぬちどぅ宝 ぬちどぅ宝

3、 なんくるないさ

ウチナーグチ(沖縄語)講座をしよう。
「なんくるないさ」は、だいじょうぶとか、なんてことないさって意味で使われる。ウチナーグチでいちばん好きな言葉だ。あれだけ悲惨な歴史をくぐってきたウチナンチュ(沖縄人)がいう「なんくるないさ」はとてつもない重みを持っている。
「にちむどんどん」は、胸がドキドキって感じで、チョーかわいい響きでしょ。
「いちゃりばちょーでー ちむぬわてぃーち」は、出会ったら兄弟 肝はひとつって意味だ。彼らのオープンハートと仲間をむっちゃ大事にするホスピタリティーが凝縮されている。
「ちちぢむーどぅ かなさぢむ」は、近づいてくる人の心こそ愛しい心という意味だ。人生の中で出会える人は限られている。60億のなかからわざわざ自分に近づいてくれる人は、過去世でも縁があり、大切なソウルメイトだ。
「ぬちがふーどぅ しでぃがーふー」は、命は果報 生まれたのは果報という。
空の待合室にいる無数の魂から今回自分が選ばれるというのはなんというギフトだろう。
「にふぇーでーびる」は、ありがとう。
「かなさんど」は、愛してる。
このふたつだけは、なにがなんでも覚えていくように。

「なんくるないさ」

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

上をむいたら空がある
前をむいたら海がある

下をむいたら花がある
横をむいたら君がいる

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

足踏みしたら靴がへる
走り出したら鬱がへる

風が吹かぬとぼやくより
風を感じてつっぱしれ

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

金はないけどひまがある
知恵はないけど夢がある

過去と他人は変えられぬ
未来と自分は変えられる

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

胸を焦がして泣くよりも
鍋を焦がして飯を食え

善や正義に酔うよりも
歌い踊って酒に酔え

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

好きと言えずにちむどんどん
おててにぎれずちむどんどん

われかなさんどーはなさんど
それも言えずにハムサンド

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

島は島でもひとつじゃない
海の下では陸つづき

人は人でもひとりじゃない
赤い血潮で結ばれる

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

生まれ育ちはちがっても
いちゃりばちょーでー ちむぬわてぃーち

たとえはじめて出会っても
ちちぢむーどぅ かなさぢむ

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

死んで花実が咲くものか
ぬちがふーどぅ しでぃがーふー

しまんちゅ かみんちゅ うまんちゅ
にふぇーでーびる かなさんど

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ

4、 100億光年の孤独

1960年に天文学者フランク・ドレイクはアメリカ国立電波天文台でオズマ計画(英語:Project Ozma)というものを立ち上げた。いわゆるエイリアン、地球外の知的生命体を探すプロジェクトである。
2010年10月、オーストラリア・ウエストシドニー大学のラグバー博士は、銀河の彼方から地球外知的生命体らしき存在からのパルス信号が発信されている事を明らかにした。地球外の文明による信号の可能性があるという。
宇宙に限らず、人間のもっとも基本的な叫びは「わたしはここにいる」だ。
一生の間、人は絶え間なく「ねえ気づいて、わたしはここ、ここにいるよ」と発信し続ける。
存在の根源をえぐった宇宙的スケールの歌だ。

「100億光年の孤独」

ぼくらはどこから来て
どこへ帰ってゆくのだろう
夜空の星にきいても
答えはない

朝露に光る蜘蛛の巣
無限に膨張するコスモス
ひねもす考えても
答えはない

100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

ぼくらはなぜ出会って
なぜ別れていくんだろう
微笑む君にきいても
答えはない

冷めたカフェラテの紙コップ
捨てる君は携帯をハングアップ
これからどこへいこうか
答えはない

100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

あなたは誰ですか
そして僕は誰ですか
鏡に問いかけても
答えはない

毛先の反った歯ブラシ
気楽なひとり暮らし
「ただいま」とドア開けても
答えはない

100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

死んだらどうなんの
また生まれ変われんの
死人に口なし
答えはない

こんなぶさいくな毎日を
生きていてなんになるの
自分で見つけなきゃ
答えはない

100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

応答せよ
応答せよ
応答せよ

5、 落涙

自分で書いたのに、恐るべき詩だ。
大和言葉で書かれた1行1行が和歌のような優雅さと凝縮力を持っている。
古人たちのおくゆかしさは、人間的感情を視線描写に託して表現するところだ。アメリカインディアンやアイヌ民族と同じように、人と自然の間にボーダーはなく、すべてが映し鏡のように世界を見ていた。名もなき花に神は宿り、神とは自分そのものだと感じていたのだろう。
4番まで春夏秋冬、恋のはじまりから死まで人の一生が織り込まれている。

「落涙」(らくるい)

忍ぶれど色めく恋は
春野に芽吹く名もなき花
桃色の吐息残して
散りゆく桜知る人なし
はらはら舞い落ちる
うつせみの命よ
そなたの心に降り積もれ
君恋し 君恋し
我が衣手は乾く間もなし
黒髪の 黒髪の
乱れし森に落涙せよ

たまゆらの夢見し恋は
夏山の端にいざよふ月
花影に相見しときの
まばゆき瞳いとうつくし
 くるるるゆふぐれに
 くるへる八咫烏
 そなたのもとへと連れて行け
君恋し 君恋し
我が身焦がして燃え上がる
くれないに くれないに
血しぶく空に落涙せよ

たはむれに終わりし恋は
もみじひと葉の命なり
音もなく川面に落ちて
岩打つ波に泡と消えよ
 ひらひら舞い踊れ
 てふてふの御霊よ
 そなたの手のひら舞い降りろ
君恋し 君恋し
我をつくして愛せども
無常なる 無常なる
神なき修羅に落涙せよ

いたづらに過ぎゆく時よ
冬枯れの野に君は眠る
旅に死す君の面影
とわに消えまじ笑顔のまま
 さやさやささやいて
 きらきらきらめいて
 つれなき憂き世を輝かせ
君恋し 君恋し
我彼岸まで君を愛す
慈悲深き 慈悲深き
母の大地に落涙せよ

6、 リストカッター
こんな話がある。
看護士をしているお母さんは、夫がある事件を起こし服役中なため働き通しだった。
18歳になる娘はお父さんのことでイジメにあい、中学からずっとひきこもったままだ。
人に会うのが怖く買い物にさえでられない。母の苦労がわかっているだけに、気苦労ばかりかけている自分の存在を消してしまいたいと思っていた。
母に内緒で大量の農薬を手にいれ、服毒自殺を決意した。
ふと母の部屋をのぞいてみると、一枚のCDが机の上にのっていた。
なんとなく「リストカッター」という曲名が目に飛びこんできて、聴いてみることにした。
なぜか涙が止まらなかった。帰宅した母に飛びつき、今まで言えなかったことをぶちまけた。農薬を買ったこと、明日死のうと計画していたこと、お父さんを怨んでないこと、お母さんに謝りたかったこと。ふたりは泣きながら何度もこの曲を聴いたという。
娘は現在小さな裁縫工場で働いている。父の出所も近い。
たったひとつの命のためにもこの歌を産み落としてよかったと思う。

「リストカッター」

どうしようもなく自分が嫌い
だからこのまま消えてしまいたい
なんとなくみんなが恐い
だからこのままそっとしておいて
大人にもまだなれなくて
子どもにもかえれない
生きてるの? もう死んでるの?
それすらわからない

青いカミソリ 白い手首に
赤い血が走る
生きてる わたし生きてる
悲しいくらいに生きてる

たえがたく自分は醜い
だから愛する資格なんかない
やるせなくあなたが恋しい
だからこのままいてもいいですか
幸せにもまだなれなくて
不幸にもなりきれない
生きてるの? もう死んでるの?
それすらわからない

青いカミソリ 白い手首に
赤い血が走る
生きてる わたし生きてる
淋しいくらいに生きてる

わすれがたく空は澄んで
だからいつかは還ってゆける
かえがたく世界は在って
だけどいつかは笑ってくれる
ふつうにもまだなれなくて
狂うこともできない
生きてるの? もう死んでるの?
それすらわからない

青いカミソリ 白い手首に
赤い血が走る
生きてる わたし生きてる
愛しいくらいに生きてる

7、 Sorry
ひきこもりや元ひきこもりの友人たちがたくさんいる。みんなやさしいやつらだ。当事者や親たちの会で講演に呼ばれたりするが、子供がひきこもることで、親がもう一度自分自身の生き方を見つめなおすきっかけになったりする。
大人たちは「経済至上主義」というハメールンの笛吹に踊らされ、絶望の崖っぷちにむかって行進していることに気づかない。
「競争社会」というウイルスに感染すると、思考停止、視野狭さく、物質依存、異物の排斥、嫉妬、行動パターンの画一化、個人行動不能、自主性の喪失、想像力の欠如、創造性の欠如などの症状が起こる。
立ち止まって考えようとすると後ろから押され、やじられ、蹴飛ばされる。その行列から飛び出した人々、それがひきこもりであり、新しい子どもたちではないか。
ひきこもりは社会というウイルスに対する正常な免疫反応だと思う。
ハメールンの行列から抜けるのには、とてつもない勇気がいる。
ひきこもるのもたいへんだ。腕を引っぱられ、望んでないのに励まされ、社会のクズとののしられ、しまいにゃ病人扱いされる。
人類自体が自然や宇宙からひきこもっているのだから、それにNOを突きつけるやつらのほうがまともなのだ。
オレたちは宇宙的引きこもりの時代を生きている。

「Sorry」

Mama sorry I’m sorry
こんなはずじゃなかったんだ
期待どおりになれなくて sorry
Mama sorry I’m sorry
一生懸命やったんだけど
いい子にはなれなかったよ sorry

空はこんなにも大きくて
僕はこんなに小ちゃくて
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう

Papa sorry I’m sorry
どうしようもなかったんだ
思いどおりになれなくて sorry
Papa sorry I’m sorry
僕なりにがんばったんだけど
偉い人にはなれなかった sorry
太陽はこんなにも輝いて
僕にはまぶしすぎるよ
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう

Baby sorry I’m sorry
君のせいじゃないんだよ
すべて僕が悪かった sorry
Baby sorry I’m sorry
もう一度やり直せるかな
ひざの砂をはらって sorry

世界はこんなにも頑丈で
僕はこんなにも無力で
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう

夢はこんなにもふくらんで
僕はもう支えきれない
わかってるよ わかってるよ
自分でも わかってるんだ

わかってるよ わかってるよ
わかってるよ わかってるんだ
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう

8、 もしもぼくが死んだら
オレの葬式ではこの曲をかけて陽気に踊りまくってほしいな。
たくさんの人が集まって祭りをしよう。AKIRA歌をみんなで歌ってほしい。
墓はいらない。おやじの骨を散骨した女峰山の頂上もいいな。
とにかく悲しまないで祝福してほしいんだ。
シアトルにいたドゥワミッシュ族は「死は存在しない。生きる世界が変わるだけだ」と言った。
死後の世界を、古代エジプト人は「アメンティ」、ヘブライ人は「バーディッシュ」、ゾロアスター教は「メノグ」、アボリジニは「アンジェア=ドリームタイム」、チベット人は「バルドゥ」、アイヌは「神の国=カムイモシリ、または死者の国=ポクナモシリ」、沖縄人は「後生=ぐしょう」と呼んだ。
オレたちは「そこ」からやってきて「そこ」にかえっていく。いわば「魂のふるさと」である。
ここ40年ほどで世界中の心理学者や精神医学者や臨床医師が膨大なデータを集め、「死後の世界」の科学的研究が飛躍的に解明されている。
その理由は、1緊急医療の発展による「臨死体験」の増大。2戸籍の整備による、「前世をおぼえている子どもたち」の追跡調査。3退行催眠による「前世療法」の拡大などである。
オレたちは輪廻の車輪をめぐって永遠に返りつづける。
だから「see You again」と笑って送り出してほしいんだ。

「もしもぼくが死んだら」

もしもぼくが死んだら
笑顔で見送ってちょうだい
涙は君に似合わない
泣き顔なんてしまんない
いやでもあの世で会えるから

もしもぼくが死んだら
川にでも流してやってちょうだい
墓石なんていらない
葬式なんてくだんない
墓場は丸ごと地球だから

Say see You again 今世はありがと
Say say see You again 来世もよろしく

もしもぼくが死んだら
みんなであざ笑ってちょうだい
最後まで救いようのない
こんなバカ見たことはない
陽気に飲んで歌ってちょうだい

もしもぼくが死んだら
「幸せもん」とねたんでちょうだい
後悔なんてはやんない
未練は鼻クソほどもない
なぜなら君に出会えたから

Say see You again 今世はありがと
Say say see You again 来世もよろしく

清少納言 You again 春はあけぼの
征夷大将軍 You again アイヌネノアンアイヌ
Say see You again 今世はありがと
Say say see You again 来世もよろしく
Adios Amigos !

9、 Be here now
ハーバード大学心理学部教授だったリチャード・アルパートは、ティモシー・リアリーとともにLSDやキノコを通して意識変容を研究した。
LSDをかかえインドにわたったアルパートは、聖人ニームカロリババに出会い、瞑想の道に進む。ババ・ラムダスと命名され、スピリチュアルムーブメントを牽引する存在として多くの人に教えを説いてゆく。
彼の悟りの本質が「Be here now」という言葉に凝縮されている。
「今ここに在れ」
過去や未来は本来存在しない。在るのは花火のように連続する今だけである。
ならば全身全霊で今ここにある自分を生きろ。

「Be here now」

まにあわないかもしれない
でも走らないではいらんない
Wake up be here now
今ここしかない

かなわないのかもしれない
でもやってみなくちゃわからない
Wake up be here now
今ここしかない

すりむいた傷
風が乾かし

ずっとずっと待っていたよ
きっときっと出会えるって
Wake up be here now
今ここしかない

過去も未来もありゃしない
あるのは連続する今
Wake up be here now
今ここしかない
be here now

とどかないのかもしれない
でも歌わないではいらんない
Wake up be here now
今ここしかない

愛されないかもしれない
でも愛さないではいられない
Wake up be here now
今ここしかない

あふれる涙
大地に沁みる

ずっとずっと待っていたよ
きっときっと出会えるって
Wake up be here now
今ここしかない

昨日の鎖をふりほどけ
明日に夢を預けるな
Wake up be here now
今ここしかない
be here now

空間を超え
時間を超え

ずっとずっと待っていたよ
きっときっと出会えるって
Wake up be here now
今ここしかない

君とめぐり会えた奇跡
この世に偶然などない
Wake up be here now
今ここしかない

10、Born to love
「ぼくらはなんのために生まれてきたんだろう?」
これは人類永遠のテーマである。
その答えを探して30年間旅してきた。
たとえば、子孫を残すためとか、何事かを成し遂げるためとか、社会を変革するためとか、自然を守るためとか、いろいろあるだろうが、究極の答えがこれだった。
「ぼくらは愛するために生まれてきたんだ」
愛とは男女間の恋愛感情だけではなく、孤独も、悲しみも、怒りも、喜びも、すべての川が帰っていく海のようなものだ。
嵐のように荒れ狂うときもあれば、鏡のように静まるときもある。そして無数の命をはぐくむ子宮でもある。
不思議なことに怒れば怒るほど自分が磨り減っていくが、愛すれば愛するほど自分が豊かになっていく。
愛とはわたしたちそのものなのだ。

「Born to love」

青い青い青い砂漠にたおれ
最後の息で君を呼ぶよ
白い白い白い雲がちぎれて
君の笑顔になる

苦い苦い苦いことばかりで
生きてる意味さえわからなくなる
痛い痛い痛いほどの想いを君に伝えたい

ぼくらはなんのために生まれてきたんだろう?
なくした言葉が聞こえてくる

We were born to love
We were born to love
ぼくらは愛するために
生まれてきたんだ

We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ

黒い黒い黒い闇を背負って
ぼくは今日まで生きてきた
いつもいつもいつも自分に嘘をつき
ひとりおびえていた

なにがなにがなにがしたいんだ
自分のことさえわからないから
せつないせつないほどの気持ちが君にとどくかな

ぼくらはいつまで憎み合うのだろう?
遠い約束を思いだすよ

We were born to love
We were born to love
ぼくらは愛するために
生まれてきたんだ

We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ

赤い赤い赤い子宮のなかで
最初の夢を見ていたんだ
暗い暗い暗いトンネルをすべって
この世界と出会った
甘い甘い甘い唇かさねて
君の孤独を吸い出そう
寒い寒い寒い肌をからめて
深い傷をなめよう

ぼくらはいつのまに置き去ってしまったの?
裸の子どもが泣いているよ

We were born to love
We were born to love
ぼくらは愛するために
生まれてきたんだ

We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ

We were born to love
We were born to love
すべてを愛するために
生まれてきたんだ

We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ

11、おまえの舌苔を陽にさらせ
「舌苔を陽にさらせ」というのは、「言葉にしろ」、「表現しろ」、「さらけだせ」という意味である。
23歳でニューヨークに移り住んだオレにとって、学校はストリート、先生はドラッグだった。人間の意識がどこまで拡張できるのか知りたかった。マリファナ、LSD、マジックマッシュルーム、スピード、自分の体をすりへらして人体実験をつづけた。
オレは孤独に打ちのめされながら麻薬へと溺れていく。コカインの売人になり、自分のためのジャンク(ヘロイン)を打ちつづける。
麻薬ギャングのような生活で、仲間の売人が親元の金を盗んだ翌日イーストリバーで水死体となって発見されたり、拳銃をこめかみに突きつけられたり、友人がエイズで死んだり、まるでタランティーノの映画のような生活だった。
これはオレが24歳のころ死ととなりあわせのなかで書きなぐった詩だ。
ヒリヒリするような苛立ちと、氷の刃のような鋭さがある。今どんなに逆立ちしてもこんなすごい詩は書けない。
日本文学史において、もっとも危険な詩だろう。

おまえの舌苔を陽にさらせ

「おまえの舌苔を陽にさらせ」

ジャンクこそ神だ
静脈に突き刺さる針の痛み
それが祈りだ
真夜中の迷路 雪解けの路地を
血走った眼球を落としそうになりながら走りつづける
どこだ どこだ どこだ
神はいったいどこに隠れているんだ
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

101 South 6th St Brooklyn
それがボクらの大聖堂だ
六〇畳にもおよぶ地下ロフト
日も射さず 風呂もなく 家賃も払えず
コンクリートの天井から下がるサンドバッグを殴りつづける
錆びついた鉄パイプのベッド
床に散らばる注射器と血痕
祈れ 祈れ 祈れ
ボクたちに許されているのは
ひたすら祈ることだけなんだ
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

深夜のJトレインには
森から逃げ出した小人たちが乱舞する!
フルボリュームのカセットデッキ
極彩色のスプレーペイント
彼らは白雪姫を強姦した罪で
一生追われつづけるんだ
なんという幸福な一生だろう
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

「火をかしてくれないか?」
客待ち顔の娼婦にきいた
「フェラだけなら十ドルでいいわ ジャンクと同じ値段よ」
十四丁目で売ってる安物の香水がからむ
「火がほしいんだ」
礼儀上タバコを差し出したとたん
「うす汚い寄生虫!」
娼婦が投げつけた紙マッチがボクのほほを打つ
ひざまづいて拾おうとする後頭部に唾が吐き捨てられる
「あたしたちは体をはって生きてんのよ!」
娼婦より卑しい階級に堕ちた喜びを誰が知ろう
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

「撃っちまえ! 撃っちまえ!」
こめかみに当てられた銃口の冷たさ
暴漢はボクのポケットをまさぐり
十ドルの全財産を強奪する
大切なのは生きのびることだ
明日打つジャンクのためだけに
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

突然バンから飛び出してきた警官たちは
いっせいにボクにつかみかかる!
のどもとに食いこむ警棒
手をつかされたボンネットの渇望
足をけり広げる鉄板ブーツの欲望
やつらは自分のコカインが切れたときジャンキーを襲う
思う存分愛撫するがいい
残念ながら三パックは靴下のなかさ
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

おぞましい重低音の唸りをあげて
野犬の群が襲いかかる
街灯に閃くよだれと狂暴な牙
ボクのけがれた肉塊で飢えた胃袋を満たすがいい
奈落の井戸を落下していく
ひとつの
腐ったトマト
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

肛門に突き刺さった頭
肩車で愛人をかかげ
チューブから酸素をほおばる双生児たちよ
肛門にねじりこまれた拳
上腕筋の根本まで腸内に受け入れる苦行僧よ
「いったいなんのために?」
子孫を残すためだけに愛を語る愚かな質問はやめろ
悟りを開くためだけに禅を組む安全な修行をやめろ
極北の苦悩を受け入れるものだけに
門は開く
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

イーストリヴァーに浮かんだ友よ
炭酸ガスで膨らんだ水死体を引きあげるな
親もとからくすねたジャンクの名は
「青い月ブルームーン」
夜の海を漂う風船は
惑星の泡となって月へ帰る
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

セント・ヴィンセント・ホスピタルによこたわる友よ
同じジャンクを分け合った針兄弟よ
「エイズは悪魔なんかじゃないよ
 ただでモルフィネの点滴を受けられるなんて
 ジャンキーたちが夢見た天国じゃないか」
おまえの留置針を今すぐ引き抜き
ボクの腕に突き立てろ
今夜もまた世界中の闇に
呪われた血液をいっぱいにつめた
針の雨が降る
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

白昼の路上で手淫する乞食よ
世界中の子宮に拒まれた精子よ
悲鳴をあげる主婦たち
のけぞり笑う女子高生の群
飽食に肥えたブロイラーたちを
酸性雨(アシッドレイン)となって焼き溶かせ
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

みんなみんな狂ってて
それに気づいちまった不幸な連中だけが
至福の正気に到達できる
まるで狂人たちのションベンを毎日飲まされても
あんなおだやかに笑ってる便器のようだ
 おまえの舌苔を陽にさらせ
 さもなくば永遠にくたばれ!

亀の島に屹立する巨大な注射器
皇帝楼エンパイア・ステート・ビルディング
世界中の薬物信者たちがひれ伏す仏塔(ストゥーパ)よ
赤いランプの灯った針先で
われわれの欲望を天にとどけたまえ
宇宙の毛細血管のすみずみにまで
この祈りがとどくよう
永遠にわれわれが不幸でありますように
幸福の罠から守りたまえ

12、おやすみ
人類滅亡の廃墟に流れる歌だ。
悪夢のような苦しみをくぐりぬけたあと、
傷だらけの体を横たえ、
この歌を聞きながら永遠の眠りにつきたい。

「おやすみ」

ぼくのうででおやすみ
みんなわすれて
くろいまつげぬらして
あらいながそう
おやすみ ひとりぼっちじゃないよ
ひとみとじればあえるよ ここにいるよ
おやすみ あしためざめたらきっと
あたらしいいのち そっとだきしめるんだ

ぼくのむねでおやすみ
かおをうずめて
ひえたゆびをくるんで
うたってあげる
おやすみ おもいださなくていいよ
ゆめだったんだ すべておわったんだ
おやすみ あしためざめたらきっと
うまれかわるんだ すべてはじまるだ
おやすみ
おやすみ
おやすみ
おやすみ

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