9000度の熱 | 江口昌記の 月のうさぎ

9000度の熱

長い間生きてきたんだろ
新しく手に入れる なんて思うなよ
いつまでも発見があるなんて
ガキみたいなこといつまでもたわけるなよ

きみは利口だしもうすでにきみは見つけた
もうすでにきみは一生分の安らぎは見つけた

忘れてしまっただけで
ご主人の手の中にあるエサだけを欲しがる犬ほどに
気にしなかっただけ

きみほど長く生きられない日々を過ごしたひとは
もうこの世にはいなくなったけれど
きみがぼんやりと見過ごしたことがらを
エキスを 髄を 心臓を 血流を血だまりにして
たたきつけたいくやしさを壁に食い込み刻み込み
めくれあがりはがれ落ちヒビ割れた爪だけ残して
命 尽きた

きみはなまけていただけで
きみはなまけているだけで
きみはなまっちょろいきゅーりみたいに
季節に遅れ
時季外れだ

生き返るなら
生きて起きあがり
よみがえるつもりなら

目からは血を流し
唇からは血へどを吐きだして
その手の平に残るその夏の送り火を
殺すほどの気合いを入れてつかみとれよ

キット

キット
キット だぜ
キット

その呪いさえ憎しみさえ突き刺したい殺意さえ
ツブレテヒキズル過去を呪うその9000度の熱を
渾身のその身に糧として起きあがれ

だれかを憎んだり世間やめぐりあわせの偶然と恨むのなら

おろかなり
おろかなりきみのバカ
きみだけをうらめ

生まれついてのバカ
These Foolish Things
きみのバカだけをうらめ







0472015