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『「原発ゼロ」の真実①』三橋貴明 AJER2014.7.15(3)
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昨日、新幹線で掛川に向かっていたら、ある国会議員の方が後ろに座っており、しかも「移民亡国論: 日本人のための日本国が消える! (一般書) 」を読んでいらっしゃったので、二人で爆笑してしまいました。いやあ、偶然ってすごい。
ご存知の通り、外国移民問題で悩まされているのは、別に日本に限りません。と言いますか、日本の移民問題など、欧米諸国に比べれば(今のところ)軽微もいいところです。何しろ、「まだ、取り返しがつく」のです。取り返しがつくからこそ、わたくし共は安倍政権の外国移民受け入れ策(=外国人労働者受け入れ策)に反対しているわけでございます。
しかも、日本で移民受入の論拠となっている「人手不足」や「人口減少」は、別に外国移民を受け入れなくても解決できます。そもそも、繰り返し、繰り返し書いていますが、
「未だ、完全雇用(失業率2.x%)を達成しておらず、労働参加率が世界最高というわけでもなく、生活保護の「その他の世帯」が28万世帯もあり、若年層無業者が60万近い日本」
は、真の意味で人手不足など、あり得ません。単に、以前と比べて働いていない日本人が増えたから、人手不足のように「見える」だけです。そして、なぜ一部の日本人が労働市場を離れてしまったのかと言えば、長引くデフレで所得が増えないためなのです。所得が安定的に伸びていく環境を取り戻せれば、若者の結婚や出産が増え、少子化もそのうち解決します。
土木・建設分野が典型ですが、労務単価を「適正な価格(=市場価格)」に引き上げれば、人手は戻ってきます。介護サービスなども同様です。
「そんなことをすると、人件費が上がるじゃないか!」
と、反発したくなった人は、結局のところ日本国民を低所得のままにとどめておき、「自分」(あるいは「自社」)が得をしたいという、邪な動機があると断ぜざるを得ません。我が国は、働く国民の所得が増えていくという形で、分厚い中間層を構築することに成功し、繁栄しました。確かに、日本は、
「ヒトにカネがかかる国」
などと陰口(?)を言われたモノですが、ヒト(生産者)にカネ(=所得)がかかる国とは、むしろ誇るべき話ではないでしょうか。と言いますか、わたくしは今の日本にとって「デフレ脱却」とは、我が国が「ヒトにカネがかかる国」に戻ることであると確信しています。だからこそ、政府のメトリクス(評価尺度)は実質賃金にするべきと、しつこく主張しているわけです。
しかも、移民推進派は、
「外国移民ではなく短期の外国人労働者だから大丈夫。期限が来たら帰ってもらうから、移民ではない」
などと、ドイツ等の失敗例を無視した詭弁を弄しているわけですから、尚更許せないわけです。いっそ、堂々と「日本国民の賃金を上げないために、外国移民を入れるんだよ。文句あるか!」と、本音で移民推進して欲しいです。
そうなれば、こちらも、
「文句あるわっ!」
と、「議論」が始まるわけですが。
昨今の安倍政権の「言葉」使い方は、抽象論や「真実を隠すための欺瞞」に満ち溢れているケースが少なくなく、本当にうんざりします。代表例が、
「外国移民ではない。期間限定の外国人労働者だ」
や、
「消費税増税による落ち込みは、想定の範囲内」
になります。あ、
「もはやデフレ状況になく、デフレ脱却に向けて着実に前進」
なんてのありましたね。
いずれにせよ、上記の通り「言葉」を大切にしない政権、政治家、官僚というのは、要するに国民を舐めているのだと思います。舐められるのが嫌ならば、
「外国移民の定義をせよ! ドイツなどでは期間限定の外国人労働者をローテーション制で入れ、結局は経営者からの要望を受け、長期滞在の移民と化したが、いかなる方法でドイツのような事態を防ぐのか、対策を示せ。具体的には、期間が終了した外国人技能実習生が、帰国せずに不法滞在になることを、どのような手段で『強制的に』防ぐのか、説明しろ」(例:技能実習生に本人は外すことができない位置発信機を常備させ、常に位置を把握し、不法滞在者になったら容赦なく捕まえて強制送還するとか。できるはずがないでしょう?)
「相対の範囲内とは、いかなる範囲なのか。数字で示せ」(例:97年比とか。まあ、その場合は「想定の範囲外」になってしまいますが)
「デフレ状況とデフレ脱却の定義を説明しろ」
などと、容赦なく突っ込んでいくしかないわけでございます。面倒ですが、そうするしかありません。
まずいなあ・・・、と思うのは、予想通り外国人技能実習制度について「外国(アメリカ)」が難癖をつけてきていることです。
『日本の外国人実習に懸念=「強制労働の温床」-米大使
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201407/2014070900079
人身売買問題を担当する米国のシデバカ無任所大使は8日、上院外交委員会の小委員会で開かれた公聴会で証言し、日本政府が運営する外国人技能実習制度が「強制労働」の温床になっていると改めて懸念を示した。
シデバカ大使は「人身売買業者は(外国人を)強制労働に服させるのに同制度を利用し続けている」と指摘。日本政府が運用を十分に監督できていないところに問題があるとした上で、「われわれは監督機能を強化するため、日本政府と緊密に協力していくつもりだ」と語った。
外国人技能実習制度の拡充は、安倍晋三首相の成長戦略の柱の一つとなっている。』
いわゆる「人権派」の皆様は、自分にとって都合がいいならば、アメリカ大使の「お言葉」であろうとも、平気で利用します。今後の我が国において、
「アメリカ大使もが技能実習制度は強制労働の温床だと明言している! 技能実習生の人権を守れ! 彼らに『日本人』と同じ権利を与えろ! 政府の人権弾圧を許すな!」
との声が高まってくることは、安倍政権が技能実習制度を縮小させない限り、防ぐことはできないでしょう。何しろ、人権派の方々にとっては「美味しいビジネス」でございます。
そして、人権派が日本を貶めるために技能実習生を活用すると、人件費削減を求める移民推進派(要するに経済界ですね)の希望もかなうわけです。
要するに、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)同様に、移民反対派は、
「左(人権派)からも、右(移民推進派)からも批判される」
立場になってしまうわけです。
まあ、それでも反対するわけですが、上記の「構図」を国民の多くが理解して初めて、我が国の「移民問題」について真っ当な議論が、つまりは「将来に禍根を残さずに済む」議論が可能になると思うわけです。
外国移民問題について、単なる「人手不足の解消」といった矮小化された見方をしてはいけません。「木を見せ、森を見せない」彼らのやり方に対抗するには、こちらから積極的に「森」を語らなければならないのです。
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