視察2日目、午前中は噂の武雄市図書館に行ってきました。
私は、図書館には並々ならぬ思いがあり、1枚のスライドも一言の説明も逃さず聞いてきましたので、以下、長くなりますが総括です。
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平成12年に普通の図書館としてオープン。若者の読書離れに伴う入館者数の減少に歯止めをかけるために、民間の力を借りて再生しようと、蔦屋書店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)を指定管理に選定してリニューアルしたのが平成25年。
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~システムがどう変わり、利用実態がどう変わったか~
●施設の中にスタバ、本の販売、文具の物販、CDやDVDのレンタルなどのコーナーを設けた。
●毎日9時~21時、365日オープンに開館時間を延ばした。
●閉架図書をおおむね開架に回し、20万冊に常に触れられるようにした
8億かけて施設改修、原研哉のデザイン(無印や六本木ヒルズのデザイナー)でオシャレ感満載にした。
●iPadでの蔵書検索、iPadの貸し出し、フリーWiFiなどの整備を行った。
●イベントをたくさんやるようになった。例えば、図書館de朝ヨガ、マルシェ、著名人のトークショー、アナウンサーによる読み聞かせ、スタバで子どもバリスタ講座、スタバでコーヒー飲みながら市のALTを活用した英会話。
●遠くの人も借りやすいように、クロネコヤマトでの返却サービス。
●スタッフを20人から60人に増員(CCCやスタバの店員含む)

それでどうなった?
●年間入館者数が20万人から90万人に激増。利用の少なかった30代と、その子どもたちが目立って増える。
●各種イベントも3~4倍の人入り。
●指定管理にすることで年間運営費が減。同じ開館時間を直営でやれば年間1億余分にかかると試算。
●グッドデザイン賞金賞や、最優秀ファシリティマネジメント賞を受賞。
●ブックカフェを併設することにより、それまで平均30分程度の滞在時間(貸出型)が、1時間半~半日過ごす(滞在型)に変わる。特に20時以降の夜間に仕事終わりで来て寛いで過ごす人が1日平均500人。
●市の職員もCCCの社員も共に朝礼などを行い、サービスがホテル風、ホスピタリティに満ちている。
あえて職員さんに色々質問してみましたが、素晴らしい対応。職員のモチベーションも上がったらしい。
●それまで新刊は2冊までしか購入しなかったので、人気図書は待つ必要があったけど、施設内でだけですが本屋コーナーに並ぶ新刊をすぐにカフェに持ち込んで読める様になった。
●武雄市の知名度が圧倒的に上がった。
●経済効果20億円。

‥と、箇条書きにするとメリットのオンパレードで、確かに到着するなり、「おっ!」と思ったし、これが浦安の総合公園にあれば私は入り浸ると思います。
総合公園に憩いの場を作るべき論者の私としては、“お店”としては、ひとつの完成形であるとすら思います。
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が、“図書館”としてはどうなんでしょう。
入り口入って一番いい場所に本屋(CCCの物販部門)とスタバ、図書館は奥と2階です。
まぁそんな邪魔にならないjazzとはいえ、店内には常に音楽が流れています。(無音スペースもアリ。全体の10%くらいかな)
「本を借りるとTポイントが3ptつく」「DVDレンタルを3枚以上すれば、借りた本の郵送返却が無料」など、利用者からすれば有難いシステムなのでしょうが、民業に引っ張られ過ぎな感が否めません。
全ての市民のための施設ですが、高齢者がセルフカウンターで使いにくそうに戸惑っていた様子も気になりました。

誰の為の図書館なのか。武雄と言う自然豊かな町に明らかに不釣り合いな、そこだけが切り取られた様に存在する図書館。中では、銀座・伊東屋から仕入れた何万円もする万年筆が売られている、人口が右肩下がりの高齢化が進む町で。それは本当に市民が必要とするものなのだろうか。
もちろん、スタバがあって、銀座の文具が売られることを特に若い市民は歓迎すると思いますが、それを“図書館”の中でやる必要が?

そして、私が思う最大のデメリットは、選書をCCCに任せている点。
CCCはお洒落空間の創造と営業のプロです、私も蔦屋書店が大好きでわざわざ何度も代官山に行きました。
だけど、図書館運営や、図書館に相応しい選書のノウハウ、公共資料のアーカイブとしての使命感、という点では素人組織な訳です。
武雄市の歴史資料がCCCによって廃棄された、とか、蔦屋書店の売れ残りが蔵書として購入された、などの報道もあったので、その辺り聞いてみましたら、「選書基準はあって、その範囲でCCCが選んでる」との事。
そもそも、地方自治体図書館の使命は、選書と歴史資料の保管維持に尽きると私は思っています。
その地の知の集結した場所だというプライドが図書館の命です。そこだけは民に託さず公が行うべきだと思います。

多分これまでの投稿で一番長いんじゃないかって程ダラダラと書いてしまいましたが‥
結論、武雄市図書館は施設としては非常にいいと思いました。あんなのが総合公園にあったらいいなと思いました。
ただ、図書館ではないと思いました。
図書館の勝負の仕方は、もっと別のやり方があると思います。

今日の午後に行った熊本の森都心プラザ図書館が、まさに私が図書館こうあるべきと思う形を実践されてたので、また明日以降紹介させて下さい。

長文読んで下さって有難うございました。