今回は、悪意を持って書かれた文章のウソをどうやって見破るか? 

実戦形式のミニ講座です。

 

お時間は、30分くらい。

 

 

お題は、NATROM氏(自称内科医)の著書に、

 

片瀬久美子(博士を自慢している自称サイエンスライター)か寄稿したとされる、

抗癌剤を拒否し、民間療法を頼った人のエピソードです。

 

彼らは、私や池田としえさんに対し、名指しで批判をしていましたが、

 

先に、ご自身の襟を正した方がいいと思います。

 



 

 

まずは、こちらの文章を読んでみてください。

 ↓

http://d.hatena.ne.jp/warbler/20140625/1403691408

 

5分ほどで読めますので、一度こちらで読んでから戻って来てください。

 

できれば、印刷して読むことをおすすめします。

 

 

次に、片瀬久美子氏が寄稿した、もうダマされないための「科学」講義 に、

 

 

「デマのパターン」を解説されていました。

 

参考になる部分をいくつか要約してピックアップします。

 

 

・ ツイッター等の情報には要注意

 

・ 情報源が不明なデマ

 (情報提供者が友達の知り合いなど特定できない伝聞)

・ 「誰かが死んだ」などできるだけショッキングな話

・ 疫学の誤解と不安の誇張

・ 数字のゴマカシ

 

総論としては実にいいことを書いていました。

 

 (9割の真実に1割のウソの典型ですね)

 

では、先ほどの文章をもう一度、読み直してみましょう。

 

 

 (5分)

 

 

 

 

時間のない方は、文章の検証と設問へ進みましょう。

 

 

 

 

 

Q1) Aさんは、片瀬さんへ直接何か語りましたか? 

 

 

さて、情報源について、15年ほど前の片瀬さんの知人とありますが、

 

親密な「友人」ではなさそうです。

 

Aさんが片瀬さんへ直接語った言葉は見当たりません。

 

 

直接交わした情報は、伝聞よりも重い情報なので、

 

ライターであればなおさら、一次情報を重視して書くはずです。

 

その情報がないということは、Aさんから誰かを通して又聞きした伝聞と考えられます。

 

まず、情報ソースと信ぴょう性に疑いがありそうです。

 

そして、Aさんが死んだととてもショッキングな内容になっています。

 

 

 

Q2) 「…乳房温存手術を受けました。手術後は、本来ならば抗がん剤と放射線治療を継続して、がんの再発を抑えていく必要があります(こうした治療を受ければ、当時でも8割くらいの確率で10年以上の生存が期待できました)」

 

 

 

この記載からあなたはどのように感じましたか?

 

(1) Aさんは、8割の助かる確率を台無しにした

 

(2) Aさんは、何をしても死ぬ可能性が2割あった。

(3) 抗がん剤治療をしない場合の数字が書かれていないので、

    比較ができず、情報の価値がわからない

 

 

(1)を選んだあなたは、見事にダマされています!

 

 

 

抗癌剤を選ばない場合における数字がないので、

 

この文章だけで、治療を拒否した場合のデメリットは何もはわかりません。

 

 

Q3) Aさんは、抗がん剤や放射線治療を受けましたか?

 

 

 

 

標準治療を受けなかったはず、と思ったあなた、騙されてます!

 

 

「Aさんは病院での治療をやめて、その療法に思い切って切り替えました」

 

 

術後の治療をやめた、ということは、術後に病院で治療を受けていたということです。

 

つまり、抗がん剤か放射線の治療を受けてから、途中でやめたということです。

 

また、再入院した後の治療については何も書かれてません

 

末期なのに、抗がん剤で苦しんだかもしれないのです。

 

芸術的な誘導テクニックです。

 

 

 

Q4) 「私のような目に遭う人をなくしてほしい」はどんな意味で言ったのでしょうか?

 

 

 

(1) 代替医療で騙されたことを嘆いた

 

(2) 子供を残す無念さを嘆いた

(3) わからない

 

伝聞なので、真意はわかりません。

 

 

 

Q5) 片瀬さんは、Aさんを助けるために何かしましたか?

 

 

 

(1) 一生懸命に似非医学をやめるように助言した

 

(2) わからない

(3) 何かしていれば書くはずなので、きっと何もしていないだろう

 

 

何も書かれてないのはなぜでしょう?
 

 

 

 

Q6) Aさんは、なぜ亡くなったのでしょう?

 

(1) 抗がん剤を拒否したから

 

(2) 運命であって、抗がん剤でも助からなかった

(3) 抗がん剤による副作用と発がんで亡くなった

 

今の医療では、はっきりした答えはなく、確率の問題でしか語れません。

 

 

 

 

次に、疫学と数字のゴマカシについて検討しましょう。

 

 

 

 

ここからは、数字の入った内容になります。

 

 

 

Aさんは、乳房温存手術を受け、標準治療で8割の10年生存率と書かれています。

 

 

 

実は、術後の補助化学療法(抗がん剤)の恩恵を受けるのは、

 

せいぜい5%くらいという外国のデータがあります。

(Lancet 2012 ; 379: 432-44 )

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3273723/

 

ただ、この場合のデータは、死亡率の高い患者を対象にしており、

 

今回のケースは、補正すると3%程度と考えられています

 (詳しくはNANAさんブログ 、NANAさん 医療否定本の嘘レビュー コメント欄)

 

なお、抗癌剤の試験自体にも疑義があるので、

 

私は抗がん剤についての効果を疑っていますが、

 

100歩譲って、3%の10年後の生存率上昇効果があると仮定して説明します

 

 


****

 

 

Aさんと同じような患者が100人いたと考えましょう。

 

 

 

<標準治療の場合>

 

 

 

100人 全員が抗がん剤の副作用に苦しむ

 

 

77人は、抗癌剤をしなくても生きれたのに、無駄に副作用で苦しむ(損する)

 

20人は、抗癌剤で苦しんだうえに、報われずに死ぬ(大損する)← 治療当初のAさん
3人は、抗がん剤で助かるかもしれない(得するかも)

 (完治ではないので延命効果だけかもしれない)

 

さらに、抗がん剤治療すると、ほとんどの人が閉経し、

 

その後、子供を産めなくなりますし、若くして更年期様症状に苦しみます。

 

抗癌剤治療中は、子供への授乳はできません。

 

キスすら後ろめたく感じてしまうかもしれません。

 

髪の毛や肌が戻らない方も少なくありませんし、QOL低下は甚大です。

 

 

 

<抗がん剤を拒否した場合>

 

 

 

全員が抗がん剤の副作用を受けず、授乳もできます。

 

 

77人は、病院から離れ、授乳でき、第2子も授かる可能性(QOLが一番高い)

 

23人は、死亡するが、抗がん剤の副作用では苦しまない 

 


****

 

 

以上から、Aさんは、必ずしも、

抗がん剤を拒否したから死んだわけではないのがわかりましたか?

 

抗がん剤治療を拒否した場合、

 

そのことが原因で、亡くなる確率は多く見積もっても 3%程度なのです。

 

Aさんは、早い時期に全身転移が見つかっていますから、

 

助かる確率は極めて低かったことでしょう。

 

 

価値観にもよるでしょうが、私なら抗癌剤を拒否します。

 

 

抗癌剤を拒否して、最もQOLの高い生活ができるのが 77%

 

抗癌剤を打っても、無駄に苦しみ損をする人は 97%

抗がん剤によって、母乳での子育てと、第2子を授かる望みはほぼ絶たれる。

 

3%は、希望のある現実的な数字には思えません。

 

リスクが高過ぎるギャンブルです。

 


Aさんは、抗がん剤を拒否したことを嘆いたとは考えにくいし、

 

もしそうであっても、大きな誤解をしていた可能性が高いですね。


 

さて、再び質問です。

 

 

 

Q7) 片瀬氏の文章と、デマの典型例の項目、両方読んでどう思いますか?

 

不確かな伝聞、死による不安の誇張、疫学の誤解、

数字によるゴマカシ、さらに文章でのミスリード、ツイッターでの拡散と

典型的なデマの手法で書かれていましたね。

 

片瀬氏の文章こそ、一見科学を装った偽りの情報操作の典型なのです。

 

サイエンスライターと名乗る心理が私には理解できません。

 

 

 

Q8) インタネットでは、このような一見科学的、公平を装った人達が、

   明らかに、ゴマカシのテクニックを駆使して誘導しています。

 

   悪意満載のNATROM氏と片瀬久美子氏を信用できますか?

   さらに、それをリツイートする人物を信じますか?

 

 

私は、科学のミスや、単なる間違いは良くあることなので、

 

 

それ自体は仕方ない面もあると思います。

 

私も、そして人間誰もがミスをします。

 

 

しかし、知っているのに意図的にゴマかす人達は許すことができません。

 

間違いを指摘されても、訂正せずにごまかし続けるのも同罪です。

 

 

NATROM氏は、過剰診断の過小偽装グラフを訂正する気配がありません。

 

 

 

また、私が指摘した若年の子宮がん検診の過剰診断の不利益問題は、

 

自分から批判の攻撃を仕掛けてきたのに、

都合の悪い反論に対しては、一切ダンマリを決め込んでいるようです。

 

勝俣範之氏、大場大氏は、悪意を持って素人をだます本を出版し、

 

誤りを指摘されると、やはりダンマリ作戦を決め込みました。

 

衣笠万里氏、上昌広氏、久住英二氏らは、高校生にまで攻撃を仕掛け最悪です。

 

 

片瀬氏は、今回の文章を自画自賛して拡散しています。

 

 

そして、1300人という数だけで空論を支持する産婦人科連合。

 

 

これが、現在の医療情報工作の現実です。

 


 

 

ウソを見抜くには、数字だけなく、国語力(読解力)も鍛えましょう。

書いていることを追いかけるのではなく、

 

 

「書かれていないものは何か? その理由は?」

 

 

 

 

といった、「視点の転換」が重要です。
 

 

 

 

今回は、算数ではなく、国語の問題を考えてみました。

 

 

ご意見・ご感想お待ちしています。

 

 

 

ネタは、NANA氏から先日のコメント欄でご提供いただきました。

 

 

素敵な実践題材を提供いただきありがとうございました。

 

関連記事

 

NATROM氏のウソ~情報操作(乳がん検診の過剰診断を過小に見せるトリック)

 

 

NATROM氏の根拠なき批判について