NHKクローズアップ現代+公式ツイッターより。

https://twitter.com/nhk_kurogen/status/736089582966472705


 

目を背けてはならない、現実です…。皆さんから大反響をいただいた[追跡!ペットビジネスの闇]のダイジェストをUPしました。内容をテキストでまとめ読みできます!「あんまりだ!法改正の動きは?」―お寄せいただいた質問にも回答しています

 

 

以下、ダイジェストを転載します。

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3811/1.html

ペット“大量消費社会” 失われる小さな命

 

かわいらしい犬や猫。
家族の一員としてなくてはならない存在という人も多いのではないでしょうか。
ペットブームと共に拡大を続けてきたペット市場。
その規模は、1兆4,000億円に上るともいわれています。
一方で、忘れてはならないのは、その裏で、無駄に消えていく命が数多くあるという実態です。
これからお見せする映像、どうぞ目を背けずに見ていただければと思います。

 

殺処分の実態を知ってほしいと、今回、撮影に応じた和歌山県の動物愛護センターです。
引き取り手がない犬や猫が対象になります。

特殊な装置に入れられた後、二酸化炭素が送り込まれ、数分で死に至ります。
殺処分される犬や猫は、年間10万匹に上っています。

担当の職員(獣医師)
「好きでやってる人は誰もいない。
こんな仕事は無くなったほうがいいと思います。」

 

こうして処分される犬や猫の数を減らすために、3年前に改正動物愛護法が施行されました。
法律の中に初めて、殺処分がなくなることを目指すと明記されまして、その数自体は減少傾向にあります。
しかし取材を進めますと、この数字の裏側で、数多くのペットの死が埋もれている実態が明らかになってきました。

 

追跡!“引き取り屋” ペットビジネスの闇

ペットの虐待相談や、保護活動を行う日本動物福祉協会です。
全国の動物愛護団体からの情報や内部通報を受け、虐待が疑われる業者を告発してきました。
今、協会が注視しているのが、引き取り屋と呼ばれる悪質な業者です。
動物愛護法の改正以来、目立つようになったといいます。

日本動物福祉協会 町屋奈調査員
「法改正によって引き取り業者というものに対して、注目度も集まりましたし、(問題が)どんどん露呈してきていると思います。」

日本では、犬や猫は、主にブリーダーからオークション、ペットショップを経て、飼い主に渡ります。
動物愛護法の改正前、ペット業者は、売れ残った犬や猫を殺処分を行う自治体に持ち込むことができました。
しかし、法律が改正され、自治体は引き取りを拒否できるようになりました。
その結果、余ったペットを有料で引き取る、引き取り業者の需要が増したというのです。
引き取り自体は、違法ではないものの、適切な世話をせずに衰弱させるなど、虐待が疑われるケースが少なくないといいます。

2年前には、一度に80匹の犬を引き取った業者がほとんどを死なせ、河原に大量に遺棄する事件も起きました。

日本動物福祉協会 町屋奈調査員
「健康管理もされていない状態で飼い殺しになっている。
飼養管理っていうのができていないような引き取り業者があまりにも多い印象があります。」

取材を進めると、かつて引き取りビジネスに関わっていたという男性にたどりつきました。
ペットショップで働きながら引き取りも行い、収入を増やしていたといいます。

男性は、ブリーダーやほかのペットショップから、多い時には一度に100匹、不要になった犬を引き取っていました。
売れる犬は、自分の店で安く転売。
繁殖できる場合は、子犬を産ませ、それを販売していたといいます。
一方で、繁殖を終えたり、売れ残ったりした犬の世話はおろそかになっていったといいます。

元“引き取り屋”の男性
「(飼育は)全部できてたかというとそうでもない。
やっぱり扱いは雑になります。
モノっていうか、はっきりいってカネにみえる。
ワンちゃんが『諭吉』に見える。
このワンちゃんは『諭吉3枚』くらいだなとか。」

悪質な引き取り屋が生まれる背景には、ペットショップ側の事情もあります。

これまで、9軒のペットショップなどで働いてきた女性です。
実態を知ってほしいと取材に応じました。
女性が働いた多くの店が、引き取り屋に頼っていたといいます。

元ペットショップ店員
「(引き取り屋は)2か月に1回は来てた。
首根っこつかんで、犬の体を見て『あと何回か(繁殖に)使えるかな』って言って連れて帰る。」

今は販売の仕事を離れ、トリマーをしている女性。
かつて働いていた店では、売れ残ったペットは負担としか見られていなかったといいます。

元ペットショップ店員
「場所もとるし、世話する時間もかかるわけだし、邪魔なんでしょうね。
ビジネスとして考えたときにお金にならない。
(引き取り業者が)いないと成立しないから、行き場のない子たちは絶対出ているから。」

引き取り屋の実態調査を行っている日本動物福祉協会。
1年以上にわたって、ある悪質な業者の情報を集めてきました。

日本動物福祉協会 町屋奈調査員
「おびえきってケージの隅で震えてる子とかもいました。」

「すみません、こんにちは。」

動物を保護するために、許可を得て中に入った際、撮影した映像です。

「うわー、これはひどい。」

「耳ダニですね、耳ダニ。」

耳ダニが放置され自分でかきむしって大きな傷が出来た猫。
「こんなにひどくなること、めったにない。」

ぐったりとしたまま動かない犬。
十分な清掃もされずに、およそ170匹が飼育されていました。

業者のノートには、1匹数万円を受け取り、犬を引き取っていたことが記されていました。

「大丈夫、連れて行ってあげる。」

「ここから出たほうが絶対いい。」

命の危険にさらされている動物を急きょ、病院に運びました。

「急患です。
(引き取り)業者の犬、死にそうなんです。」

この犬は、栄養失調で体温が20度近くまで下がっていました。
点滴を行い、毛布やドライヤーで体を温めます。

「がんばれ、がんばれ。
起きろ、起きろ。」

心臓マッサージを続け、蘇生を試みました。

「がんばれよ、復活してよ。」

「この辺中心に温めてもらっていいですか。」

およそ1時間後。

「あ、尻尾が動いた。」

「おはよう、おはよう。」

「あー、よかった。」

なんとか意識を取り戻しました。
しかし、重い肺炎などを患っていたため1週間後、命が尽きました。

治療に当たった獣医師
「あの(飼育)状況を動物愛護法違反といえなければ、動物愛護法って何なんだって話なぐらい、状況はひどかった。」

日本動物福祉協会は、虐待を禁じた動物愛護法に違反しているとして、先月(4月)この業者を刑事告発しました。

警察は告発状を受理。
すでに捜査を始めています。
私たちは、この業者に直接取材。
業者は、もともと殺される命を助けていると主張しました。

“引き取り屋”の男性
「(ペットが)殺されるのが嫌だから、この商売をやっているだけでね。
とっくにこの世にいない犬たちを死ぬまで置いておいてもいいやと、そういう気持ち。
別に俺が悪いことをしているわけでもない。
できるものだったら、やめたいよ。
ただ、やめないでくれっていう声がいっぱいくるから。」

ペット業界の事情に詳しい林良博さんです。
悪質な業者は一部だと見ていますが、今の流通の仕組みが、引き取り屋を生む土壌になっていると指摘しています。

東京大学 名誉教授 林良博さん
「大量生産大量消費、これはペットには似合わない仕組みなんだということだけは間違いない。
命あるものを。
必ず余剰なものが出てきますから、引き取り屋みたいな人が暗躍する社会になりますね。」

 

ペット“大量消費社会” 失われる小さな命

ゲスト 春香クリスティーンさん(タレント)
ゲスト 森達也さん(映画監督)

今の映像をどう思った?

春香さん:本当に直視したくない、胸を締め付けられるような映像ばかりでしたが、やはり、当然ペットショップがあったら、みんながみんな飼われるわけではないっていうのは、どこかで分かりつつ、一部こういうふうになってしまうケースもあるのは、よく考えたら想像できないわけではないんですけど、ただ、やっぱり実際にふだん見に行くとかわいいとか、いいところばかり見てしまって、裏側はどうなっているのかっていうのをなかなか、私自身もそうですけど、直視しようとしていなかったのが、やっぱりこうやって見ないといけないなって改めて思いましたね。

殺処分を減らそうという動きの中で横行している引き取り屋の存在、どう見る?

森さん:ジレンマですよね。
じゃあ、悪質な引き取り業者は処分してしまえばいいと、なくしてしまえばいいって、それは簡単ですけれど、でもその分、殺処分される数がおそらく増えるだけでしょうし、あるいは違う存在がなんらかの違うメカニズムが生まれるかもしれないし、いずれにしても、そうした一部を悪玉に仕上げてたたく、もしくは廃棄するだけではなくて、全体の中で、あるいは根底にあるメカニズムは何なのかってところを、本当はもっともっと考えなきゃいけないし、そもそもこうした映像がテレビで出るってのはめったにないことなんですよ。
春香さんがおっしゃったように僕ら、やっぱりどうしても目を背けてしまう。
でも、やっぱり直視しなきゃいけないことはあるし、ましては命ですからね。

視聴者の方より:「ブームをあおるマスコミも悪いんではないか」
ペットのかわいい部分、光の当たる部分はものすごい量の情報がありますけれども、光の当たらない部分って、なかなかやっぱり私たちも知ろうとしてないし、届いてない部分がありますから。
今、森さんもおっしゃいましたけれども、問題の根本というのが、つまりはペットを大量に生産して消費をしている日本の流通の仕組みということなんです。

こちらをご覧いただきましょう。
ブリーダー、そしてペットのオークション、ペットショップと、それぞれを仲介するごとに、そのたびに余ってしまう動物がこのように生まれてしまうということなんです。
ペットの業者の中には、なるべくこういった余剰の動物が出ないように売れ残った動物の価格を下げて下げて、最後まで飼い主を探そうという努力をしているところもありますけれども、こういう根本的な構造の問題があるわけです。
森さんはこの問題をどう考える?

森さん:それこそ、コンビニで賞味期限を切れたお弁当は大量に廃棄されるわけで、それはやっぱり消費経済の中では余剰は絶対に出ます。
でもおっしゃるように、そこに命を安易に当てはめていいのかどうか。
ペットショップ行きますよね。
子犬がいます。
かわいいけど、ちょっと飼えないかなと。
で、また次の週行きます。
ちょっと大きくなっています。
何度も何度も行きます。
どんどん大きくなってくる。
そこでこの子、一体どうなるんだろうと。
それは考えるだけではなくて、店員さんに聞いて見るとか、そうした行動を僕らが示せば少し、少しだけ変わるかもしれないって気がします。
やっぱり、いずれにしても、やっぱり見たくないところをちゃんと見なければいけない。

 

一方で、春香さんが生まれ育ったスイスですけれども、スイスは動物の福祉に関してはとても力を入れている国ということで、日本とは流通の仕組みが異なるんです。
調べましたところ、ペットショップなどは仲介しないんですね。
一般的には、ブリーダーから直接購入したり、保護施設から入手するのが一般的な形で、しかも犬を飼う時には、飼う側が免許が必要になると。
免許がない場合は、違反すると罰金も科されるという。
日本とは、だいぶ異なる仕組み、この日本とスイスの違いをどう見る?

 

春香さん:ペットショップがいいとか悪いとかじゃなくて、単純にペットショップを向こうで見たことがなかったので、日本に来た時に、街中に普通にあるっていうのは、こんなにいっぱいあるんだなっていうのは、結構びっくりしましたね。
そもそも、環境でいくつか違いがあるのかなっていうのは、例えばスイスだと、犬に関して言いますと、公共交通機関、バスとか電車とかに犬を乗せる時は、例えばリードとかで連れて行くと、大人の半額の値段で犬用のチケットを買って。
(犬の運賃も払う?)
そうなんです。
基本的には、大人の半額の値段で。
だから犬用の1日チケットとか、年間パスとかそういうのもありますし。
私が住んでいた頃は、家の近所に犬のふん専用のごみ箱があって、そこにやっぱりマナーを守るためにっていうのもありますけど、そういうふうに、もう住んでる環境の中に、より馴染んでいたのかなっていう感じはしましたね。

犬が半額というと、子どもぐらい大事にされている?

森さん:たぶんですけど、これはスイスだけじゃないと思うんですよね。
やっぱり、ヨーロッパ全体のそういった意識は高いですし、ふと思いついたのは、日本では「愛玩動物」って言いますよね。
要するに愛する玩具、「おもちゃ」なわけですよ。
でも英語圏では「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」ですから、言葉尻を捉えるわけではないけど、やっぱりどっかで根本的に発想が、犬や猫に対しての、動物に対しての意識が違うのかなって気がしますね。

 

日本の流通構造についてなんですが、まだ、抜本的に全部を変えるというのはなかなか難しい段階で、この形で、すでに1兆4,000億円ものマーケットもありますし、なかなか今すぐにすべてを変えるのは難しいんですが、今回、環境省に取材しましたところ、流通構造の是非についてはコメントできないとした上で、しかし悪質な業者をきちんと取り締まるために、例えば繁殖回数の制限だとか、ケージの広さなど、飼育環境に明確な基準を設けることを今後検討していきたいとしていました。
ペットの大量消費を前提とした構造の中で、お伝えしていますように、いまだに年間10万匹もの犬や猫が殺処分されているわけなんですけれども、その現実を直視しようという動きも出ています。

 

「78円の命」 ペット殺処分を考える

 

“近所に捨て猫がいる。
キキと勝手に名付けてかわいがった。”

小学6年生の女の子が書いた作文。
「78円の命」。
今年(2016年)、ネット上で大きな話題になりました。
近所の捨て猫の姿が見えなくなったことをきっかけに、殺処分のことを知った女の子。
ある事実に衝撃を受けます。

“動物の処分1匹につき78円。
動物の命の価値が、たったの78円でしかないように思えて、胸が張り裂けそうになった。”

女の子の作文をきっかけに、さまざまな動きが起きています。

作文をもとに、絵本を作るプロジェクトも立ち上がりました。
全国から寄付が400万円近く集まり、来月(6月)出版される予定です。

『78円の命』プロジェクト 戸塚真琴さん
「小さい子がここまで考えているんだったら、何か行動できることはないかと。
家族全体で命について考えるきっかけになればいいなと思います。」

無駄に失われる命をなくそうという声が高まる中、殺処分ゼロを達成する自治体も出てきています。
2年間、殺処分ゼロの神奈川県。
それを支えているのは、自治体から無償でペットを引き受けているボランティアたちです。

NPOの代表、菊池英隆さん。
殺処分前の犬をもらい受け、飼育しています。

常に70匹ほどの犬を抱えているため、散歩だけでも、かかる時間は毎日2時間以上。
病気の犬も多いため、24時間態勢で世話をしながら、新しい飼い主を探しています。
中には、悪質な業者が飼育を放棄したと見られる犬もいます。

NPO代表 菊池英隆さん
「グミちゃん、もう目が見えない。
ずっと繁殖でケージに閉じ込められていたみたいで、たぶん年で繁殖できなくて捨てられた。
来たときは何年も歩いてないから歩けなくて、目も薄暗いところにいるから退化しちゃう。」

経済的な負担も少なくありません。
治療費だけでも、多い時には月に100万円以上。
個人や企業からの寄付で、なんとか運営できている状態です。

NPO代表 菊池英隆さん
「(保護される犬が)なくならない限り、きりがないことだと思うが、1人でも多くの人に知ってもらって、『自分たちに何ができるか』と思ってもらうことが、この活動の本質だと思っています。」

 

ペットの“命”を考える 私たちにできること

私たち1人1人にできることは?

森さん:まずは、やっぱり純血信仰みたいなものを日本人は強く持っていて、雑種でいいんですよ。
僕が子どもの頃なんて、みんなもう周り中、全部雑種でしたし。
あとは、子犬信仰ですね。
結構、大きくなっても犬って慣れますから、その辺の意識を変えたほうがいいと。
だったら別に今、愛護センターにいる犬でも全然オッケーなわけでね。

春香さんは、スイスと日本の違いをよく知る立場から、どういうことを意識していけばいいと思う?

春香さん:ペットに限らずですけど、結構日本って、ブームやはやりものが好きっていう傾向はあるのかなって思うので、その前に、かわいい、飼いたいって思うのは、私もそうですけど、1回立ち止まって考えてみる。
そして、その背景にこの子はどういう子なんだろう。
私とは、どんな相性なんだろうと考えてみるのは、私自身も含めて大事なんだろうなって思います。

こういった残酷な現実から目を背けないというのは、大事なこと?

森さん:メディアがまず、どんどん報道することですね。
たぶん苦情もきます。
でも、いいんです、どんどん報道してください。
それをみんなが知ることです。
そこから始まります。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

 

質問コーナー

Q1

あまりにもひどい現実に驚きました。法律改正の動きなどはないんですか?

環境省は、動物愛護法の次の改正に向けて、今年の夏頃、検討会を立ち上げ、専門家などの意見も取り入れながら話し合いを始める予定です。 動物虐待などが疑われる悪質なペット業者の取り締まりを強化できるよう、『飼育環境に明確な基準を設けること』などを検討していきたいとしています。 例えば「繁殖回数の制限」や「飼育するケージの広さの決まり」を設けることなどが話し合われる予定です。

 

 

~転載以上~

 

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NHKクローズアップ現代+ 「追跡!ペットビジネスの闇」の反響