【第3回】酒井靖之の個人的「この漫画がすごい」 | どっこい俺は生きている。

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アドルフに告ぐ



手塚治虫
http://www.amazon.co.jp/dp/4063737705/ref=cm_sw_r_tw_dp_2gU1wb0S9G5T6

1983年、イスラエル。1人の日本人男性がひっそりと墓地の一角に佇み、ある墓の前に花を供えた。
彼の名は峠草平。40年前、3人の「アドルフ」に出会い、そしてその数奇な運命に立ち会うことになった彼は、
全ての終わりを見届けた今、その記録を1冊の本として綴ろうとしていた。




日本とドイツを舞台に、アドルフという名の3人の男が辿った数奇な運命を描く群像劇の最高傑作。
ナチスドイツを背景にした作品は、映画・小説問わず多数あれど、この作品こそ、その頂点に位置するものであると信じて疑わない。

手塚先生の思想の深さには、誠に驚嘆せざるを得ない。

人間とは。戦争とは。友情とは。愛とは。イデオロギーとは。正義とは。悪とは。

人類が永遠に探し求め続ける壮大なテーマを、圧倒的な筆力とストーリー構成で、見事に描ききっている。
“大作”と謳われる映画の脚本をも超越した、まさに一大叙事詩である。



思えば僕らの世代は、手塚先生に育ててもらった世代。
毎週、「週間チャンピオン」で、「ブラック・ジャック」をリアルタイムに読んでいた。考えてみれば、幸運な世代である。

あらゆる雑誌に手塚先生の作品が載っていた。週間誌にもかかわらず、これらの作品はいつも、圧倒的な完成度であった。
子供心にも、手塚治虫という人物に畏敬の念を抱いていた。

後に、昭和の巨匠と呼ばれる漫画家たちのほとんどが、手塚先生に影響を受けていたと知る。

また手塚先生は、大のディズニーファンであったらしい。
当然、アニメーションにも情熱を燃やしていた。というか、漫画家で稼いだお金を、アニメづくりに費やしていたという。

「24時間テレビ」が始まった当初にOAされたTVアニメ特番「マリンエクスプレス」
その圧倒的スケールは、テレビアニメの範疇を大きく超え、アニメの持つ可能性を極限にまで昇華した。
やがてそれは、宮崎駿ワールドに受け継がれていく。

手塚先生の著作は、どれもこれも傑作揃い。
全集を読んでも、つまらないと思った作品はない!
どれが一番すごいかと聞かれると、とても迷うのだ。

「ブッダ」と、自身が“ライフワーク”と言っていた「火の鳥」は文句なしの最高傑作。
でも僕は、前述した「アドルフに告ぐ」などの、後期の作品が好き。
「陽だまりの樹」や、未完となった「ネオ・ファウスト」「ルードウィヒ・B」など。



陽だまりの樹

手塚治虫
http://www.amazon.co.jp/dp/4091920519/ref=cm_sw_r_tw_dp_lE71wb11WVS43
動乱の江戸末期、来たるべき近代国家への苦悩と希望を描いた巨編!!時代の流れに翻弄されつつも、自らの使命を全うした武士・伊武谷万次郎と医師・手塚良庵。二人の男の生き様を軸に、近代国家幕開けまでを作者自らのルーツを折り混ぜながら描いた幕末感動ロマン!!



ネオ・ファウスト

手塚治虫
http://www.amazon.co.jp/dp/4022607270/ref=cm_sw_r_tw_dp_lt71wb1T7PT68
手塚治虫が命を燃やして描いた未完の絶筆!人間に絶望した一ノ関教授は悪魔メフィストと取引し、魂と引き換えに新しい人生を手に入れた。彼は自らの手で生命を創造するという恐ろしい野心を抱くが……!?






ルートヴィヒ・B

手塚治虫
http://www.amazon.co.jp/dp/4063737861/ref=cm_sw_r_tw_dp_Az71wb1WPBEAR
手塚治虫が描く、ベートーベンの波乱の生涯耳にハンデをもちながらも、音楽の才能を開花させるルードウィヒ・B。不幸な生い立ちからルードウィヒを憎む貴族・フランツ。2人の交差する運命とは!?





これらの作品は、先生の集大成であり、生きている間にどうしても伝えたいテーマだったのだろう。今さらながら、早すぎた死が惜しまれてならない。

日本が世界に誇る「漫画・アニメ」の礎を築いた手塚治虫先生の魂は、今でも僕たちの胸にしっかりと生き続けています。合掌。



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