かりそめの今 | 江口昌記の 月のうさぎ

かりそめの今


「雲の上にはなにがあるの?」

「みわたすかぎりの雲が晴れることはあるの?」

子が親に訊くように
ぼくらは自分と声を交わす


こがね色はひとときのもの

みえる色 みえるもの 
みえる景色 みえる果て 

それはかりそめの今

雲の上に 空があり 光があり
希望がある
でもそれもかりそめの今

空の上には漆黒の闇があり
声の無い宙があり
生気の失せる絶望がある

でもそれすらもかりそめの今
ぼくらの生きている今は
そのはざま

命と死と高揚と傷心と
打ち寄せる波と砕け散る歓喜
その海と大地と空と宙のはざま
荒れ狂う風の吹くそこにいる

海にいて大地にいて
雲をみて空をみて
漆黒の闇をすかし
宙までもがみえるとしても

ぼくらの今はいつだって
かりそめの今でしかない

答えようの無い今はただ
まだ見えぬ星々のように

こがね色に頬を染めているだけ






かりそめの今

Photo by 山根 和子


0502015