外国人特派員協会における「電波停止発言に抗議」おバカ会見の検証-2 | マスメディア報道のメソドロジー

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マスメディア報道の論理的誤謬(ごびゅう:logical fallacy)の分析と情報リテラシーの向上をメインのアジェンダに、できる限りココロをなくして記事を書いていきたいと思っています(笑)

外国人特派員協会「電波停止発言に抗議」会見



2016年3月24日、「ジャーナリスト」を名乗る青木理氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏(海外取材のため欠席)、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏の6名(以下、「自称ジャーナリストグループ」と呼びます)が、2016年2月29日の会見に加えて、日本外国特派員協会で会見を開き、放送法に関連した高市早苗総務大臣の国会答弁の内容に抗議しました。その会見を3つの記事に分けて検証します。

今回の会見は次のような2つのパートから構成されています。

 <1> 自称ジャーナリスト各位の主張 [記事-1]
 <2> 質疑応答 [記事-2] [記事-3]

シリーズ記事の第2回目では、<2> 質疑応答の前半部分について検証します。ここで、会見の内容については、ウェブサイトの[BLOGOS]で詳しく公開されています。冒頭写真、発言の内容は同ウェブサイトから引用させていただいています。なお、同サイトの記述においては、発言内容が一部省略されています。分析に必要な部分については、正確な発言に適宜置き換えて示したいと思います。

ちなみに、2016年2月29日の会見の分析記事はコチラです。併せてお読みください。
[記事-1] [記事-2] [記事-3] [記事-4] [記事-5]

こちらは会見のyoutube映像(第2回記事の該当分 32:10-1:04:50)です。




以下、発言の下線部に着目して分析していきます。


「NHKは右から左に流しているだけ」「だから民放があるんだ」


質問者1
危機という状況について、たとえばNHKにお金を払っているような一般市民としてどういうことが出来るのでしょうか。

岸井成格氏:
今日はNHKが来ていませんが、(1)ジャーナリズムなら当たり前の批判的姿勢がNHKから感じられない。右から左に流しているだけ。でも視聴習慣で見ているせいか視聴率は圧倒的に高いのですが、あれでは本当のことは全くわからない。

NHK会長人事についても色々噂を聞いてますけれど、それで現場が萎縮して権力の意に沿おうとしている。見ていると(2)いつも最後に政府与党の言い分をくっつけることで完結させようとしていますよね。ちょっと異常です。NHKはここに来るべきですよ。

(1) 放送法で定められている放送番組の編集の要件は、「公安及び善良な風俗を害しないこと」「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」の4点です。NHKの政治・経済関連番組は、上記の4つの要件を遵守した上で、「政治上の諸問題は公正に取り扱う」「公職選挙法に基づく政見放送および経歴放送については、法律に従って実施する」「経済上の諸問題で、一般に重大な影響を与えるおそれのあるものについては、特に慎重を期する」ということであり、要件を遵守している場合には、岸井氏を含む何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、放送による言論と表現の自由を確保し、豊かで、よい放送を行うことによって、公共の福祉の増進と文化の向上に最善を尽くすということです。どこにも、岸井氏がお門違いに要求するような「批判的姿勢を感じさせること」という文言はありません。本来、ジャーナリズムの倫理的規範として推定無罪の原則がありますが、日本の政治報道の場合には推定有罪が基本となっています。そればかりか、政府批判を一切禁じていない政府を独裁国家呼ばわりして、メディアに求められる【自己批判 self-criticism】を行うことなく、記者クラブ制度で談合して他メディアを排除し、アノニマスなソースを多用するという世界標準のジャーナリズムの倫理コードに違反しているのはむしろ日本のマスメディアであると言えます。もっとも、自称ジャーナリストグループは倫理規定とは必ずしも遵守しなくてもよいというスタンスであり、この程度の倫理コード違反は許容されると考えている可能性があります。彼らにとってマスメディアは何人からも一切批判されてはならない存在であると考えられます。また、編集権への他者の介入を問題視するにもかかわらず、自らは他者の編集権に介入する発言を行うというなんともおバカな発言であると思います(笑)。

(2) 岸井氏はNHKが政府に沿った報道をしている証拠となる実データを示す必要があります。私が知る限り、NHKニュースウォッチは、「政治的に公平でなく」「ときに事実をまげた報道を行い」「意見が対立している問題についても、自説に都合の良い角度から論点を紹介する」岸井氏の報道よりは、はるかに国民の意思決定に資する報道であると考えます。


大谷昭宏氏
NHK内部の人に話を聞くと、(1)必ず政府側答弁で終わんないといけないと。よく見ていただかないといけないんですが、全部そうなっていますよ。これはおかしいじゃないか、(2)お前の所の番組は何でこうなんだ、という声を上げていかないといけない。そういう見方をしようという声を広げていただけるのが大きな力になると思います。

(1) 国会質問というものは、議員の自由な質問に対して一つ一つ答弁するわけですから、政府側答弁で終わるのは公平です。これについてもアノニマスなソースに基づく情報ではなく、証拠となる実データを示す必要があります。

(2) ここでも、編集権への他者の介入を問題視する人物が他者の編集権に介入しようとしています(笑)。


鳥越俊太郎氏
(1)残念ながら、今は国民の声を反映させる場がない。インターネットをチェックしていれば国民がこういう考えを持っているというのもわかりますが、それがオープンな形では外には出てきません。中にとどまっています。しかし、安保関連法案を機に、久しぶりに国会デモ、日本全国で反政府デモが行われました。これはおそらく一つの時代の始まりだと思いますけれども、国民は黙ってないで行動に出ますよ、街に出ますよ、ということが日本でもようやく起こってきました。

僕らにとっては60年安保、70年安保を過ごしてますので街頭デモというのは国民の権利として当然ですが、絶えて久しかった。(2)警察が完全に街をコントロールし封鎖して、国民が自由に街頭で自分の意思を表することができなくなっていた

それが最近、中高年も含め、特徴的なのはSEALDsや高校生の会といった若者たちが立ち上がって、デモに出てくるようになった。これは決して絶望したり諦めるのではなくて、そういう期待感、信頼感を持ちながらやってきたいと思います。

(1) 明らかに特定の政党とコラボしているデモの意見は、必ずしも国民の大半を占めるサイレントマジョリティの意見を反映したものではなくノイジーマイノリティのみの意見を反映している可能性があります。このような場合に、デモ参加者の意見を「国民の意見」という言葉で一括りにするのは、【偏った標本の虚偽 biased sample fallacy / loaded sample】であると言えます。

(2) 大嘘です(笑)。そんなことを警察が行ったら憲法第21条違反です。事実、デモは現在まで継続的に行われています。なぜ、公然とこんな大嘘をつけるのか本当に不可解です。あまりにも大胆な【デマゴーグ demagogue】であると言えます。


田原総一朗氏
NHKなんて、いい加減な局だからそれでいいんですよ。だから民放があるんだ。

この前の選挙のとき、萩生田光一がテレビ局に高市早苗みたいな事を言って来た。しかも文書を手渡した。(1)そのことを本来は在京の報道局長たちが集まって会議開いて、みんなで自民党に抗議をすべきだったと思います。なのにそういうことをしなかった、放送しなかった。当然NHKも放送しない…あんな局は国営放送だから良いんですよ。

実は放送したのは、僕の「朝まで生テレビ!」と金平さんの「報道特集」だけ。(2)ほとんどの局はそのとを放送もしない。放送しないで言うこと聞いてしまう。こういう流れが非常に危ないと思っています

(1) 「報道局長がみんな集まって抗議すべき」というのは言論統制であり、報道の自由の侵害に他なりません。

(2) 「放送しなかった」=「政府の言うことを聞いた」という短絡的な決めつけは深刻です。「無視した」「放送する価値がなかった」「意見が一致した」など、他の事由の可能性もあります。歯に衣を着せぬ発言をする田原氏は、発言内容が論理的な場合には非常に貴重な存在となりますが、発言内容が非論理的な場合には非常に厄介な存在になります。お願いですから、思い付きではなく、よく考えて常に論理的な発言をしていただきたいと思います(笑)。


青木理氏
メディアの責任も大きいと思うんですね。放送法の問題なんかは、もっとテレビがガンガンやればメディアの原則もわかるのに。

僕が思い出すのは、後藤健二さんが亡くなったとき、(1)アメリカのオバマ大統領の緊急声明には、こんな一文があったんですね。「後藤氏は報道を通じ、勇気を持ってシリアの人々の窮状を外部の世界に伝えようとした」と。つまり、後藤さんへのジャーナリズム活動への経緯が入っている。しかし安倍総理の声明には入っていない。むしろシリアに行こうとしたジャーナリストのパスポートを取り上げあげちゃう。しかもそれに対して市民からもメディアからも抗議の声が上がらない。

確か「紛争地のジャーナリストの危険性をゼロにすることはできない。唯一の方法があるとすれば沈黙することだが、しかし沈黙してはならないんだ」ということを、政府当局者だったケリーさんもおっしゃった。こういう、メディアとジャーナリズムの原則論を掲げる国と、ごく当たり前のジャーナリズムの原則が共有されていない日本の現状を考えると、(2)僕達の責任かなとも思う。放送法の問題なんかはどんどんいろんな形で問いかけていく。この会見がその一歩、一助になればと思う。

(1) ここまで、質問の論点を外した回答というのも珍しいと思います(笑)。何が何だかさっぱりわかりません。

(2) その通りだと思います。青木氏のように論点をまともに議論できない人物がジャーナリストを自称し、日本のジャーナリズムのレベルを下げていると考えます。


「政権からの圧力」と「マスコミの堕落」


質問者2
中国ではジャーナリスト逮捕されたりと、非常に厳しいですよね。アメリカでも国が監視したり法的に追及したり、日本よりある意味ではひどい状況だと思うんですよ。にも関わらずなぜ、日本のメディアがこれほど萎縮するのか、そのメカニズムはなんでしょうか。どういう圧力のかけ方があるのか。もう一つは、朝日新聞の吉田調書の問題が一つの転換期というか、今の萎縮問題の始まりなのか。(マーティン・ファクラー氏)

岸井成格氏
私は明日で「ニュース23」のアンカーを降ります。いろんなことを言われましたが、(1)私に対して少なくとも直接・間接の圧力は一切ありません。それを感じさせるものも私の周辺ではありません。相手もそれをやれば、私がそれを番組で批判することを察知しているからでしょう。しかしタイミングが非常に悪かった。テレビ局の人事がちょうど動き出した時に、ご存知のとおり(2)私を批判する、飛んでもない、信じられないような気味の悪い意見広告が載った。それと時期を同じくして、古舘さんの交代や、国谷さん降板が一斉に起きて、萎縮してやっているんじゃないかという見方が出ている。

(3)政権側の今のやり方は非常に巧妙です。悪く言うと狡猾です。正々堂々と言ってこない。そういう意味では高市発言はやりすぎちゃったんでしょうね。でもやらざるえ得なかったんだと思います

また、私は今の流れは吉田調書からだとは思いません。ただ同じ時期にああいうことが起こると、ちょっと待てよ、という雰囲気が出てくる。

それよりも日本のメディアの構造的に、なぜ一斉に反発できなかったかと言うと、まさか想像もしなかったからでしょう。(4)あんな暴言。憲法否定でしょ?そんなことを言う大臣が出るとは想像もできなかった。だからそれに対する対応が鈍かったんだと思う。それから、どうしても新聞同士、テレビ同士はライバル意識が強く、(5)連携しようという発想がない。しかし、そこまでやらなきゃいけないような状況というのもこれまでは幸い無かった。ですから今初めて。現在進行形です。

また、メディアの分断があります。(6)私が信頼する内部告発などを総合すると、個別の記者を呼んで厳しく言う。それが局内で広がって、段々上の方に行く、ということが日々やられているように思います

(1) 岸井氏の報道のような最も不公正なレベルの報道に対して何もアクションがないということは、基本的にマスメディアに対する実効性を伴う政府のアクションは何もない可能性が高いということです(笑)。

(2) 市民による定量的データに基づく論理的な問題提起に対して「飛んでもない、信じられないような気味の悪い」などと暴言を浴びせるというのは、国民に寄り添っているかのようなマスメディアが、実際には自分に批判的な国民に牙をむくという恐ろしい一面を見せていると言えます。もはや岸井氏は、国民と政府とを結ぶメディアではなく、政治活動家であると言えます。

(3) 具体的なファクトを一切語らずに政府批判だけをする岸井氏の言説は、何が何だかさっぱりわかりません(笑)。「岸井氏のこのやり方は非常に巧妙です。悪く言うと狡猾です。正々堂々と言ってこない。そういう意味では「マディアは声を上げ続けるべき」という発言はやりすぎちゃったんでしょうね。でもやらざるえ得なかったんだと思います」と批判するのと同じですよ(笑)。

(4) こういうのを「メディアの論理」と言います。国民にとって、マスメディアに不公平な情報を勝手に流し続けられることは、国民の知る権利の侵害です。おそらく多くの国民は、メディアが公平公正の原則を「守らなくてもよい倫理規範」と考える明らかな倫理違反を当然であると考えていることを想像もしてなかったと考える次第です。

(5) あたりまえです。マスメディアが談合することは、マスメディアが国民を支配するマスメディア主義国家を誕生させる一歩と言えます(笑)。

(6) 論敵を瞬殺するそのような大ネタをつかんでいるのに岸井氏が公表しないのは不合理です。不合理に公表しないアノニマスな情報ソースを根拠にして主張するのは、【自己再生論証 self-sealing argument】という誤謬です。


鳥越俊太郎氏
わかりやすい形でメディアがプレッシャーをかけられて萎縮しているということではなく、目に見えない形で、気がついたら後退していたのが現実でしょう。

いくつか理由があると思いますけれど、一番大きいのは、安倍政権は内閣支持率をなんとか維持したい。内閣支持率を保つには、テレビに安倍批判をさせないことなんです。

国民は新聞も読んでますけれども、テレビから情報を得ていますから、誰かのスキャンダルがあったという話がでてくると、支持率下がってくる。最近いくつかのスキャンダルが出て、一頃よりは下がっている。それをなんとか食い止めたい。だからこれ以上、安倍内閣の批判をテレビで言わせない。

(1)どういう風な手を使っているかというと、証拠はなかなか見つからない。文書があるとか、証言をするということでの証明は難しいんですけれども、聞いたところによると、菅官房長官が恐ろしいのはオープンな会見ではないんです。"オフ懇"、つまり大臣と記者クラブとの間のオフレコ懇談。「これはオフレコですよ、書いちゃダメですよ」といいながら話をする。その場で、例えば「昨日のニュース23の岸井キャスターのあのコメントはちょっといただけないね、あれ困るよ」みたいなことを"つぶやく"わけですね。それは表には出ませんけれども、TBSの記者はメモをして上司に上げるわけです。上司はさらに上にあげて、どんどん上がっていきます。それで、「どうも政府筋は岸井のコメントに嫌悪感を抱いているらしい」という空気感が広がっていく。そうすると現場が反応する。街頭で話を聞くときも、できるだけ穏当な話だけを聞くとか、問題の設定もできるだけ柔らかめにするとか、萎縮をしていくわけです。毅然として切り込んでいく姿勢がなくなっていく。

そういうことがずっと前からある。それを安倍政権がさらに明確にした。(2)それまでの政権は、そこまで個々のキャスターのコメントとか、個々のテレビ番組の放送内容について、いちいち文句を言ったりしたことはない

ただ一つだけあるのは、(3)安倍さんがまだ一国会議員であるときに、NHKの従軍慰安婦の問題で番組に介入して内容を変えさせたというある事象があるわけです。これで安倍さんは味をしめたんだと思う。それで、メディアというのは政治が手を突っ込んでいけば、後ろに下がってしまうという経験を安倍さん自身がした。(4)第一次安倍政権ではお腹の具合が悪いとかって辞めちゃいましたけれも、メディアをきっちり監視しろと。つまり、(5)メディアが権力を監視するというのが世界の常識。しかし日本では権力がメディアを監視する。

(6)ひとつひとつの番組をチェックして、おかしいことは文書にして残す。これは当然言わなきゃいけないと思ったら、然るべき人に言うとか、そういうかたちで政権側の意思を伝えるということを日常的やっていると、物を言わなくなってくる。これ以上言ったら地雷を踏むという手前で止まっている。

その一番顕著な例がNHKです。もともとはあんなんじゃなかったんです。「ニュースウォッチ9」の河野さんは、最終的に何を言ってるのか全然わからないですよね。僕は見る気がしないですもん。大越さんのときはまだ言ってましたけど。

もう一つは世代交代があって、メディアの中の世代も若くなっています。我々ここにいるのはロートルですが、(7)青木くんのような世代がメディアの中で、もっと自分たちが学んで来た、メディアとはどうあるべきかを発言すれば良いんだけれども、上からプレッシャーかけられて後ずさりする、ということが日常的にあっちこっちのテレビ局で起きている。その結果、NHKでも民放でも見ていたんでは本当のことは何もわからない、という状況だと思います。

(1) これだけ伝聞情報をまことしやかに語るというのも、UFO研究家やUMA研究家と共通する一つの才能だと思います(笑)。鳥越氏は「オフ懇」なる談合の会で交わされた立証不能な会話についての伝聞を根拠にして自説を主張しています。これは、否定する証拠がない言説を真であると主張する【立証責任の虚偽 burden of proof】という誤謬です。誰も会話の内容をばらさないという協力によって、「本音」なる最大利益を得る「オフ懇」の構図はまさに【囚人のジレンマ prisoner's dilemma】です。この会が有害であると考えるのであれば、この会から去ればよいだけです。まず鳥越氏が指摘したTBSは、今後二度とこの会に参加しないことをおススメします(笑)。

(2) マスメディアが、自分の信条や主張の批判を【タブー taboo】として拒否することで自説に対する批判を回避するのは非論理的です。政権が報道の不合理な点を論理的に批判するのは国民の代表者としての当然の権利であり、畏縮することを根拠にタブーを正当化するのは非論理的です。もしそのような批判によって萎縮するのであれば、萎縮しない他の業者に電波の使用権限を譲るべきであると考えます(笑)。

(3) 2001年のNHK番組改変問題においては、政治的圧力による変更はなかったと調査を行ったNHKが政治的圧力の関与を否定しています。それを圧力による変更があったと断言することこそ不公平・不公正であると言えます。それに対して、民主党政権による個々の番組に対する圧力は周知の事実であり、鳥越氏の言う

(4) このように個人の深刻な病気を揶揄する発言を与党議員が行ったとしたら、おそらく大騒ぎで議員辞職まで覚悟する必要があるでしょう。

(5) 日本もメディアが権力を監視すべきであると私も思います。ただし、監視は「論理的」に行う必要があります。「非論理的」な自称ジャーナリストにその資格はありません。不当な監視とプロパガンダによる国民に対する情報操作は、政治を不必要に萎縮させ、政治の遂行に有害です。メディアはメディアでこのような有害な自称ジャーナリストを自律的に排除する

(6) 情報が即座に社会に伝搬すると同時に情報の重要度がますます大きくなっている現代社会において、ひとつひとつの番組をチェックして、おかしいことは文書にして残し、それを指摘して国民に知らせることは非常に重要なことです。このような当たり前のことをタブー視することは、国民の知る権利を侵害し、国民を愚弄するものです。法的根拠がない事案をあたかも倫理規範であるかのように勝手に設定し、それを他者に遵守することを求める傲慢さは、法の支配を危うくするものです。

(7) メディアが勝手に国民を名乗って主権者となってしまうという鳥越氏の根本的主張を国民が認めることはないでしょう(笑)。


田原総一朗氏
僕は今の鳥越さんには異論ありなの。要するに、官房長官がオフレコでこう言っているというのが伝わって、それに従うと。冗談じゃないよ。僕は若い時から官房長官とも幹事長とも何回も会ってますが、そんなこと言ったら文句言いますよ。

記者っていうのは、官房長官がくだらないことを言ったら文句を言って、違うんじゃないかと言うのが記者でしょ?そうでしょ岸井さん!岸井さんも毎日の記者の時そうだったでしょ?官房長官がこういうこと言ってますよと上に言うのは、記者の堕落でしょ?

(1)僕はむしろ安倍内閣がどうこうと言うよりね、マスコミが堕落しているんだと思う。それが一番の問題だと思う

(1) 田原氏の主張に100%同意します。なお、そのことがわかっていてこんなおバカ会見に参加する田原氏の論理は本当に理解不能です。(笑)。


岸井成格氏
TBSと私の関係上、立場上、鳥越さんのお話を全部肯定するわけには行かない部分があります。そういうことでなかなか難しいんですけれどね、(1)私に対する全面広告を見れば、全部安倍さんの応援団ですよね。そこに官邸の気分が出ていることは感じます。

それから、先ほどからの議論の流れですが、(2)世論に訴えていく上での壁は、安倍政権は言葉が踊っているんですよ。キラキラネームばっかりなんですよ。それにメディアは流されやすい。「一億総活躍」「女性が輝く」とか。あらゆることにそういう言葉がある。よほどメディア戦略のチームが考えているだろうなと思いますが、それを右から左にNHKが流します。

(1) 意見が一致することを根拠にして「応援団」と【レッテル貼 labelling】するのは、論理が飛躍しています。もし岸井氏の論理を適用すれば、安保法制反対の意見を持つ岸井氏は、民主党の応援団であり、共産党の応援団であり、山本太郎と仲間たちの応援団であると言えます。

(2) 【スローガン slogan】を批判するのならば、民主党の「国民の生活が第一」「最小不幸社会」「全ての人に居場所と出番を」「1人ひとりを大切にする国へ」「立とう!女性たち!」とかも言葉が踊っていませんでしたか(笑)。


田原総一朗氏
はったりだってわかるじゃない全部。簡単にそんなものひっくり返せるよね。

岸井成格氏
だけどそのままそれが流れちゃう。(1)安保法制も"平和"でしょ、法律の名前もそうだし、中身も"平和"と"安全"の羅列だけど、(2)だけど本当に結果的に日米関係が強化されて絆が強くなって、その抑止力で日本が守られるんですよと。それは存立危機事態というはっきりしないものを作って。なにそれ?って

つまり今まで日本の今までの防衛、なんで自衛隊という名前か。あくまでも専守防衛だったんですよ。これも議論していると騙されやすいんですけれども、憲法解釈だって今までやってきたじゃないですか、一番大きいのは絶対「戦力はいけない」と言っときながら自衛隊を持ったじゃないですか、だから憲法解釈ってあるんですよ、集団的自衛権という憲法解釈だってありえるんですよ、っていう話がありました。

しかしその時は、どの国だって自衛権だけはある。しかも同時に朝鮮戦争が始まってたんですよね。そういうことがあったんで、何らかのそういうものは持たなきゃいけないだろうと。しかも自衛権というのは本当に全世界共通に与えられている自然権だと。だからということで、その代わり、海外に自衛隊を出す時はあくまでも派遣なんです。武力行使はしない、紛争地・戦闘地には立たない。これがいままでの(3)絶対に踏み越えてはいけない一線だったのに。自民党政権でもずっとそれを苦労してきた。派兵か派遣か言葉遣いのようなところがありますけれど、それを一気に派兵に変えたんですよ。(4)日本の自衛のためじゃないんですよ。そういうところの言葉でマスコミまでがやられちゃうんですよね。私はそういう問題を番組で取り上げた、それだけだったんですけどね。そういう違いを知りましょうねと。

(1) 平和のための戦争抑止力の増強を目的にして提案した安保法案の名称に、政府が「平和」を付与して「平和安全法制」とするのは極めて論理的であると言えます。「戦争」を付与して「戦争安全法制」とでもすべきだったとでも言うのでしょうか(笑)。

(2) この言葉から、岸井氏は、国論を二分する政治課題である安保法案を、先入観でとらえて否定していることがわかります。キャスターが個人的意見を持つことは保障されなければなりませんが、それによってテレビで情報操作が行われることは国民の知る権利を侵害する暴挙です。

(3) 時間の流れとともに世の中のシステムが変化していく中、岸井氏は過去の経緯を持ち出し、「絶対に踏み越えてはならない一線」などというスレッショルドを勝手に設定して、現状を変えることを【タブー視 taboo】しています。タブー視というのは、現況を直視することを避けて思考停止するものであり、必ずしも安全側に機能するストラテジーであるとは限りません。安全保障で重要なのは、将来の戦争を避けることであり、過去の環境下で用いられた方法を無批判に死守することではありません。

(4) これも根拠ない決めつけです。岸井氏の言説を詳しく検証するとわかりますが、岸井氏は、このような根拠のない決めつけを報道の自由と混同している可能性があります。【思考停止論証 just because fallacy】とも呼ばれている根拠のない決めつけは、【分析解 analytical solution】を提示するではなく、【あて推量 guess】に賭けるものであり、ギャンブルをしているのと同じです。ジャーナリストを自称する人物がこのようにあて推量することは社会に大きな悪影響を与えます。そして、その影響を最も受けやすいのが、メディアリテラシーを持ち合わせていない一部の国民です。メディアリテラシーが欠如している人物は、自分で考えることなしに、漠然としたメディアの意見に賛同することで、あたかも自分で考えて主張しているようなつもりになる傾向があります。これは【クリプトムネシア cryptomnesia】という記憶バイアスによるものです。そして彼らがマネする対象として理想的なのが、岸井氏や鳥越氏のような根拠を言わずに反権力の主張をする人物です。それは、(a)根拠を言わないためマネするのが簡単であることと、(b)権力に対して戦っているようなポーズが自尊心を満足させたり、自分を他者に高く見せる道具になると思うからです。このうち(b)は【反対者バイアス contrarian bias】と呼ばれています。一般に人間は、権力者に悪意を持つ傾向があると同時に、自分が自由意思を持つことを自分または他者に証明するため、権力者の言説に反対する傾向があります。安保法制反対デモでは、このような反対者バイアスが作用していると考えられる事例が多数認められました。反対の根拠を論理的に述べることなく、「どうしても黙っていられなくなり、デモにやってきた」「自分の言葉で考え、勇気を出して声を挙げている」「戦争が嫌だから反対する」とだけ主張した一部の高校生・大学生・ママなどは、メディアリテラシーの低さにつけこまれて、自称ジャーナリストに踊らされた典型例であると思います(笑)。

 関連記事:「NEWS23」岸井成格氏による安保法制に関する報道の論理的検証 [1] [2] [3] [4] [5]


大谷昭宏氏
つくづく(1)ここでやっているような議論をそのまんまテレビで放映できたらそのときに日本のメディアはまともになるんだと思いますね。

(1) そうなると思います。多くの視聴者は、大谷氏を含む自称ジャーナリストの主張に対して異論を唱え、国民の意見を察知した日本のメディアは大谷氏を含む自称ジャーナリストを排除する方向に進むと予想されます。このとき、日本のメディアはまともになると思います(笑)

田原総一朗氏
「朝まで生テレビ!」ではやってるよ。




この会見においても、高市氏の発言に対しての論理的批判はほとんどなく、論点はどんどんそれていっています(笑)。

非論理的な言説はとどまることを知りません。この続きは第3回(最終回)で・・・