【読書】疑問論~なぜ今日も会社に向かってしまうのか? / 安田 佳生 | THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

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「40歳からの〇〇学 ~いつまでアラフォーと言えるのか?な日々~」から改題。
書評ブログを装いながら、日々のよしなごとを、一話完結で積み重ねていくことを目指しています。

疑問論~なぜ今日も会社に向かってしまうのか?/安田 佳生




■私は今までに八冊の本を書き、二〇〇回くらいの講演をしてきましたが、結局言いたかったのは二つだけです。「常識を疑う」ことと、「自分の頭で考える」こと。(p10)

冒頭近くに書かれている一節です。
一冊を通して、「常識を疑う」ことと「自分の頭で考える」ことの大切さを教えてくれるような本でした。

<目次>
第1章 生きること
 生きているだけで幸せですか? ほんとですか?
第2章 働くこと
 なぜみなさん、疑問も持たずに働けるのですか?
第3章 人間のこと
 人間って本当に不思議な生き物です。
第4章 世の中のこと
 社会にはルールがあります。でも正しいとは限りません。
第5章 自分のこと
 みんな自分の事が大好きで、大嫌いです。面倒な生き物なのです。


各章に大きなテーマはありますが、それぞれ独立した短めの文章でつづられているので、どこからでも読むことができます。できますが、それぞれの箇所で引っ掛かりをおぼえるのではないかと思います。

「どんなことにも複数の見方がある」 ということは知識として知っています。でも、具体的に「こういうことにたいしてこういう見方ができるのか!」ということを体感することはあまりないのではないでしょうか。

この本は、世間一般の常識に疑問を呈し、時には安田さんなりの答えを示し、人を思考の渦の中に巻き込んでいきます。当たり前だと思っていたことがそうではない、違う見方があるのだということを教えてくれます。

あるいは、常識に対してなんとなくモヤモヤしているのだけど、疑問を言葉にできないでいる状態、そんなことも思いますが、この本の中で「あっ、そういうことか!」というような言葉に出会うこともあるのではないかと思います。

どの箇所にどのような引っ掛かりをおぼえるかは人それぞれだと思うので、どこがどう、というのは書けません。自分で読んでみないとわからないことだけだと思います。

■今現在自分の頭の中に情報がない状態。これは「知らない」状態です。「知っているか?」と聞かれて「いえ、知りません」と即答する。これは正しい。 でも「分かるか?」と聞かれて「分かりません」と即答するのは間違っています。なぜならば、「分かる」という状態は「分からない」状態から思考を重ねることによって到達するものだからです。思考というプロセスを抜きに「分かる」状態にはなれない。(p52)

僕のこの記事を読んだら、「安田さんが疑問論というちょっと変わった本を書いた。それが発売された」ということを知ることはできます。でも、そこの何が書かれているのか、安田さんがどんな疑問を投げかけているのか、それは「分かった」とは言えません。 せっかくこの記事を読んで「知って」しまったのだから(笑)、ぜひ手に取って読んでみてください。そして、自分の頭で考え、なにかが「分かった」という状態になっていただけたらと思います。

この本は普通のビジネス書ではありません。
ビジネス書は「日常に戻って日常を生きていくための指南書」だと思っています。
一方この「疑問論」は「自分の常識や考え方を揺さぶられる」本です。大げさに言うと「昨日までは同じにはいられない」という状態になります。ある種、良質なアートに触れたときのような感覚を覚えるのではないかと思います。

僕らは日常に生きている以上、ビジネス書のような存在も大事です。でも時に、自分の価値観を揺さぶられるような本をあえて読んでみる、ということも必要なのではないでしょうか。