【読書】実学入門 経営がみえる会計―目指せ! キャッシュフロー経営/田中靖浩 | THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

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「40歳からの〇〇学 ~いつまでアラフォーと言えるのか?な日々~」から改題。
書評ブログを装いながら、日々のよしなごとを、一話完結で積み重ねていくことを目指しています。

実学入門 経営がみえる会計―目指せ! キャッシュフロー経営/田中靖浩



中小企業の経営者には会計を苦手にしている人が多い、と感じています。第一線で活躍している営業パーソンも同様です。売上増には注力しますが、会計は人任せにしがちです。でも本当はそれではダメだと思います。そうした人こそ「会計」を学ぶべきなんだと思います。

会社には様々な問題が発生します。そうしたことが起こる原因は何なのか、それはどうやって解消すればいいのか、ということに対して会計の知識は欠かせません。そしてそれはいわゆる経理処理ができるようになることではありません。財務諸表の仕組みを知り、それを読み解くことができるようになることです。

この本は、そのための基本になる考え方を知ることができます。

<目次>
はじめに
第1講 「数字に強い」とはどういうことか
第2講 企業を映し出す鏡
第3講 「投資とリターン」という基本に返ろう
第4講 「投資とリターン」を映す決算書
第5講 投資するカネを集めて増やす
第6講 カネを生む投資をしているか
第7講 会社の実力をはかる
第8講 キャッシュフロー経営への出発
第9講 儲ける仕組みをどうやって作るか
第10講 これからの経営に必要なこと


「会計」というとすぐに「簿記」の勉強を始めてしまう人がいます。ちゃんとした形で学べるならそれもいいのですが、往々にして帳簿のつくり方から入ってしまい、会計の考え方を身につけないままになってしまうことが多いように感じます。帳簿を作り、「決算書」を作成することは会社にとって大事な業務ではあります。しかし、「会計」第一目的はそれではありません。会社の状況を見える化し、会社が果たすべき目的を達成できるようにサポートすることです。

会社の目的は「決算書」を作ったり、目先の数字を挙げたりすることではありません。不況でも儲かる会社になって関わる人々が幸せになることが大切。(p227)

会社にとって大切なことは「利益」です。利益が出なければ働いている人に報酬を払うことも、次の仕事のための先行投資もままならなくなります。
売上は利益を出すための大切な手段という位置づけです。そして、以前なら売上が増えれば自然と利益も増えたでしょうが、いまはそんな時代ではありません。「増収減益」ということが当たり前のように起こる時代になりました。

利益が出る仕組みづくりを怠ったまま売上だけ伸ばしても、結果が減益になるのは当然のことです。(p192)

利益とは「売上-経費(コスト)」です。売上が増えても利益が増えないということは売上の増加以上にコストが増えていることを意味します。ここにメスを入れ「利益が出る仕組みづくり」をしない限り問題は解決しません。ただ、短絡的に「コストを削減すればいいだろ!」となるとまた別な問題も出てきます。

不況になって目先にこだわりだすと、コスト削減ばかりが大テーマになり、削ってはいけない投資が削られていきます。そして投資とともに従業員の「やる気」もどんどん失われていきます。 (p62)

これでは本末転倒です。バブル崩壊以降、日本の多くの企業がこれをやりました。景気が回復基調にあると言いながらいまひとつ力強さが感じられないのはこうしたことのツケを払っているのだと僕は思っています。これからは同じ轍を踏んではいけません。そのためには「財務諸表」の理解を基礎とした経営が大切になると思います。

財務諸表とは「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書」の3つです。「貸借対照表(B/S)」はストック、「損益計算書(P/L)」はフローを表します。 つまり、ざっくり言えば「貸借対照表(B/S)」はある時点で資産状況を表し、「損益計算書(P/L)」は利益を示します。どうやってお金を調達してそれをどのような資産で保有しているかを示すのがB/S、売上から各種コストを差し引き、利益を示すのがP/Lです。

繰り返しになりますが、会社にとって最も重要なことは「利益」です。利益、つまり儲けがなければ会社は存続できません。しかし上に見たように、決算書上の利益を確保するために必要以上のコスト削減を行うなど、無理な施策を行っていることがあります。そうした問題がないか、決算書を読み解くことで早期に発見できるようにしなくてはいけません。

また、「利益」は手持ちの現金を意味しない、ということも注意が必要になります。利益と手持ち資金が一致するなら「黒字倒産」など起こりようがないはずです。 どうしてそういうことが起こるのか。単純な例をあげれば「売掛金」が原因になります。売掛とは、品物は売って請求書は発行しているけど現金はもらっていない、ということです。この場合、P/L上では「売上」として計上します。つまり利益としてカウントされます。しかし現金はまだ手元にはありません。細かくは書きませんがほかにも「在庫」「減価償却」「繰延資産」「引当金」という概念から利益と手持ち資金は一致しないのです。

手持ち資金を理解するためには「キャッシュフロー計算書」を読み解く必要があります。手持ち資金がなければ、いくら表面上は利益があるように見えても会社はまわっていきません。

つまり「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書」の3つを一体としてとらえ、会社の状況を正確に把握することが大切になってきます。

この本には、そうしたことの基本の「考え方」が示されています。この本を読んだだけで何かができるようになるわけではないとは思います。しかし、こうした基本的な考え方を押さえないまま、具体的な経理処理の方法を学んでしまうと、「表面的な数字」に振り回されてしまう恐れがあると思います。

そうした意味でも、会計の初心者のみならず、ある程度慣れている人も「なんのために会計が必要なのか」という原点を確認する意味でこの本を読んでみることをお薦めします。きっと再確認できることが多々あると思います。

会計に表れる数字は過去のものです。過去のどんなに綺麗に見せても未来が明るくなるわけではありません。その一方、過去を正確に知ることは未来に対する指針を与えてくれます。

会計の目的とは、
表面的な数字に振り回されるのではなく、数字をうまく使って会社を良くするための方法を考えるということです。(p222)
ということではないかと思うのです。