消費税増税法案が10日、参院本会議で可決成立しました。これによって消費税は2014年4月に8%、2015年10月に10%へと段階的に引き上げられます。

法案には、経済環境の急変時に増税を見合わせる「景気条項」と、名目3%、実質2%の経済成長率の「努力目標」を明記しましたが、増税実施に向けた環境整備に向け、政府は「政策の総動員をしなければならない」(野田総理)として、今年度補正予算と25年度予算に景気対策を盛り込むことも検討するそうですから、何がなんでも増税したいということでしょう。

したがって、「努力目標」としての名目3%、実質2%の経済成長率は、増税したい政権のもとでは、無視されるとみて間違いないでしょう。

自民党は早期解散をしたいという願望から、3党合意を反古にする構えをみせた挙句、谷垣総裁と野田総理の会談で一転、採決合意に至りました。この空騒ぎは、自民党の谷垣総裁が、野田総理とのチキンレースに負けたということでしょう。

「近いうち」の解散がいつかはわかりませんが、民主党は野田総理を交代させれば、これを堂々と反故にするそうですから、自民党は喧嘩の仕方を知らないと言われてもやむをえません。
(12日になって輿石幹事長は、「党首の合意だから、党と党の公約にもなる」と修正していますが。)

三党合意 谷垣総裁、山口代表との会談後の野田首相(http://sankei.jp.msn.com より)


これで、ほんの少しだけ芽が出ていた消費税増税回避の可能性が全くなくなったわけですが、増税推進派が、政府の借金が1000兆円にものぼり、ギリシャのように財政破綻の恐れがある、と盛んに喧伝してきた事態は近づいているのでしょか?

しかし、国債金利は依然として1%を下回る安全圏内にあります。さらに、
2011年度末の日本国債の外国人保有比率が8.3%となり過去最高を記録しました。これは日本には、独立した金融政策とデフレながらも比較的強い経済、そして十分な対外資産があると見ているためでしょう。

ヨーロッパは、出口の不透明なユーロ危機のなかにあり、アメリカは財政問題、中国もインフレ経済の影響を受けて、比較的安全な日本国債に投資家が資金を移動させる現象が起きているといえます。

財政破綻によりユーロ危機をもたらしたギリシャですが、そのギリシャは2006年から急速に経済が悪化していきました。そう、ギリシャは、この年から消費税を引き上げたのです。

ギリシャは観光や海運以外に目立った産業がなく、経済成長戦略が稚拙で、公務員天国を放置したまま消費税を増税したことによって破綻したのです。

つまり、増税の経過が日本とよく似ているのです。これまで野田総理や財務省がよく言っていた「早く増税しなければ財政破綻する」という教訓ではなく、そのあべこべで「早く増税すると財政破綻する」という見本でしょう。

ギリシャは、債務の返済が迫るなかで資金繰りが困難なため消費税を引き上げましたが、日本は、債務のほとんどを国内で消化しており、消費税による増税が必要な政策だというのにはあまりにも無理があります。

政府やマスコミが、日本の財政危機をいたずらに喧伝してきたのは、消費税の増税を正当化のするための議論だったのは明らかです。

もっとも、税率を引き上げる前には、
駆け込み需要が一時的に発生し、見かけ上は景気上昇を示す傾向がみられるでしょうが、増税後に、その反動で消費が停滞するのは常識です。

ギリシャのような財政破綻への道を避けようとして、かえって破綻への道を加速しているのは、日本のほうなのではないでしょうか?

もし次の選挙で、民主党・自民党・公明党の3党以外で、消費税増税反対の党が政権を取って、これを廃案に持ち込めなければ、その危険性が出てくるでしょう。

そして、増税の結果、日本がギリシャのように財政破綻への道をたどるようになったら、あるいは、そこまでいかなくても、内需がさらに萎縮し日本経済の沈没がもたらされることになったら、いったい誰が責任をとると言うのでしょうか?

そのときには、野田総理も総理として在任しておらず、マスコミも増税音頭を取ったその他大勢の一人として知らん顔。

そう、いつも責任を取るのは、その政党を政権につかせた国民自身が取るしかないでしょう。

しかし、増税法案を廃案に持ち込めなくても、唯一日本を、その危機から救う道があるかもしれません。それは、日銀法を改正するか、日銀総裁の首をすげ替えて、大胆な金融緩和を行うことです。さらに、法人税などの大幅な減税と、実効性をともなった成長戦略こそ立案すべきことです。

そうすれば、消費税増税による経済危機を避けることができるかもしれません。しかし、これは民主党や自民党の失政を隠すことになってしまって、あまり他党にとっては、おもしろくないことかもしれませんが、そんな小さなことは言ってられないでしょう。

ともかく、民主党にも自民党にも、金融政策の重要性がわかっている議員はほとんどいませんから、やはり、日銀法の改正を訴える政党に政権を取ってもらわないといけないでしょう。

さらに、政党となると国防政策もしっかりしたものを持っていなくてはなりません。果たして、そのようなことをマニフェストに掲げられる新しい政党が出てくるのでしょうか?

 ⇒日銀法の改正については、
   「ほんとうに政治生命をかけるものは何か?