とあるオフィス。

若手男性社員と、その上司(男・関西人)の会話。


「おはようございます」

「おう」

「では、営業に行ってきます」

「おい、まてやコラ」

「はい?」

「遅刻した理由を説明せんかい、ボケ。3時間も遅れてきやがって」

「あ、そのことですか」

「当たり前じゃい!さわやかにスルーしやがって、このタコがッ!」

「・・・庭先でたそがれてました・・・」

「あん?!!」

「世界平和について考えてました・・・」

「―ドタマかちわるぞ、コラ」

「いけませんか」

「こんなものすごい偽善者はじめて見たわ、内臓ひきずりだすぞコラ!?」

「・・・あなたのような乱暴な人には、わからないでしょうけどね・・・・・」

3時間も平気で遅刻するお前の方が、よっぽどわからんわ!!」

「営業いってきます」

「コラーッ!!!」 

「はい?」

「耳にちゃんと、穴あけとけや!!!」

「?」

「大事なことをちゃんと聞けるように、耳そうじしとけっちゅーねん!!!」

「ああ・・・ピアスをあけろってことじゃなく?」

当たり前じゃ!!おしゃれさんやなッ!!ちゃうねん、よう聞け。・・・オレはな、クチは悪いが礼儀はちゃんとする男やねん。な、遅刻したらしたで、まずはあやまるのがスジっちゅうもんやろ?ちゃうか??」

「ごめん」

「タメぐちー?!!」

「うん、ごめんね」

「それですむなら、ケーサツいらんやろッ!!!」

「あやまれっていうから・・・」

「オイ・・・、こっちは上司やぞ?!そんな相手に、日本語をそこまでカンタンにすませるヤツ、初めてみたわッ!!え?なんや、それが平成生まれのノリか、え?!」

「いえ、ぎりぎり昭和です」

「ギリ昭和でそんな礼儀作法か!!!」

「はい」

「親のカオ、見てみたいわッ!!」

「両親は去年、交通事故で・・・」

「あ、すまん」

「すみません、だろ」

「はい、すみドタマかちわるぞ、コラ!!!」 

「営業いってきます」

「待てや!!!」 

「なんですか?仕事する時間がなくなるじゃないですか」

「だったら、もっと早よ来いや!!!もう昼やぞ?!!」 

「一緒に行きます?」

「仕事ぐらい一人で行かんかいッ!もう研修中ちゃうやろ、自分?!!」

「・・・となりのビルに新しい定食屋ができたんですよ」

「昼メシのことかいッ!!!!」 

「はい」

「はい、ちゃうわ!!!今日はメシ抜きや、遅刻して来たんやから!」

「おごって下さいよ」

「シバくぞワレ!!今メシ抜きって言うたばっかりやろがッ?!!耳そうじせんかいッッ!!!」 

「・・・かわいそうに」

「は?!」

「ごはん抜きなんて、そんな無理しなくても・・・!」

「お前のことやッ!!!」 

「サイフのヒモにぎられてんすね、奥さんに。かわいそうに・・・」

「勝手に同情すなッ!何回かわいそう言うねん!?シリにしかれてなど、おらんわッ!!!」

「大丈夫です、その店安いですから」

「メシ抜きなのッ、だからッ!!!」

「かわいそうに・・・」

「お前が、や!!!」 

「おごってあげましょうか?」

「いや、だからー!!・・・ホンマか?」

「はい」

「・・・・」

「いいですよ、遠慮しなくて・・・」

「――いや、だから、お前はメシ、抜きやねんッ!!!」 

「サンマ定食にします?」

「抜きやねんって!!!」

「いいですよ、僕は^^」

「あーーーもうーーーーッ!!! お前のドタマかちわって、しこたま並べて、フルコースにしたろか、いっそのこと!!?」 

「・・・・だから平和について考えていたのに」

「はあ?!」

「・・・アナタがすぐそういうコトを言うから、今日こそは平和にすごせますようにって祈っていたのに・・・」

「だったら、早よ来いや!!!」

「はあ」

「お前が全部悪いんやろがッ!!神経すりきれるわ!!アタマはげたら、お前のせいやぞ?!!」

「・・・じゃあ、明日は、それについてお祈りしますから」

「そうか・・・アカーーーン!!! また遅刻するやろッッッ?!!」 

「しませんよ。・・・・・少ししか

「コラーッ!!!」 

「ほんの4時間おそくなるだけです」

「ゆうメシも抜きじゃ、お前なんかッ!!!」 

「じゃあ、かわいいコになぐさめてもらいますから」

「なんで、お前がええ思いすんねん?!!」 

「ダメですか」

「そんなコおるんやったら、紹介してくれや!!」

「4歳の姪っ子ですけど」

「役に立たんッッ!!!」 

「なんの役ですか」

「それは――説明さすなッ!!ええから、お前はもう、チコクしてくんな!わかったかッ?!!」

「はい」

「ゼッタイやぞ?!!!」

「はい。・・・いい方法を思いつきました」

「なんやねん?!」

「僕、ここで暮らします」

「はあ?!!」

「ここに寝袋しいて・・・そしたら、ゼッタイ遅刻しないですから。メイワクかけません」

「・・・」

「ね、いいアイディアでしょう?」

「・・・・アホーーーーーーーッッッ!!!!!」