『太陽にほえろ!』を紐解く時、あることに気付く。それは毎回のゲストがその当時旬だったり、ビッグネームな面子じゃないことだ。


まだ、番組開始から最初の一年、のちに国民的番組だと讃えられる前の時代こそ、浜美枝、沢田研二、沖雅也(スコッチ刑事役でレギュラー出演する前の別役)、近藤正臣、藤竜也、村野武範、大原麗子と、主演テレビドラマや主演映画が飾れる男優・女優をこぞって出してはきている。しかし、二年目の途中からはその当時旬だったり、ビッグネームなゲストの出演はほとんどなくなっていくようになる。


参考「太陽にほえろ! 1972~1973年 ゲスト主演&放送リスト」

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Theater/7601/hoero1.html


これは、ゲストのネームバリューに頼らないでも高視聴率を稼げるようになったからである他ならない。以後、偉大なるマンネリと呼ばれるようになっていく『太陽にほえろ!』におけるゲストの方針は、あくまでも〝レギュラー刑事を引き立てる存在〟に過ぎなく、名が知られていても脇役専門であったり、ビッグネームでも旬がとっくに過ぎたような人しか出してこなかった。まあ、それはそれでひとつの番組の主義でもあるが・・・。


ただ、『太陽にほえろ!』の世界観に没頭出来る時期のものは良いとしても、そういった70年代のオバケ番組時代を経て、1981年前後の神田・渡辺・三田村・世良ら続々と加入してくるアイドル刑事路線で人気回復した時代が過ぎ去ると、なにがなんでも偉大なるマンネリで通していくのがいささか厳しくなっていく。


いま、日テレプラスでやっている『太陽にほえろ!』はその頃の1984年始放送のエピソード。すでにジプシーを演じていた三田村邦彦が降板、ラガーを演じる渡辺徹がいよいよぶくぶく太りだしたり、前年加入の新人刑事・ブルースを演じる又野誠治が人気でなかったりして、アイドル刑事路線は終焉を迎えようとしていた。DVDボックスや日テレプラスの放送などであらためて1983年の『太陽にほえろ』を見渡してみると、話は結構面白いのがいくつもあるんだけど、やはりレギュラー刑事のキャラが全体的に弱くなってきていると伺える。

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日テレプラス公式 『太陽にほえろ!』ブルース刑事登場編 放送スケジュール

http://www.nitteleplus.com/program/drama/taiyo_blues.html


そういった理由からか、ひさびさにその当時旬で、なおかつビッグネームのゲスト主演を招いて補う回が出てくる。それが志穂美悦子が出演した1984年2月17日放送の第590話「怪盗107号」。ご存じ、千葉真一率いるJACの看板女優であり、この「怪盗107号」近辺の他作品への出演としては、前年末から劇場公開された、薬師丸ひろ子×JACのオールスターで作られた角川映画『里見八犬伝』が大ヒットしていた頃。また、当時視聴率100%男を誇っていた欽ちゃんのバラエティ番組で、フジテレビで月曜夜9時から放送されていた『欽ドン!良い子悪い子普通の子・おまけの子』にもレギュラー出演するなど老若男女誰もが知っている存在だった。

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『欽ドン!』では、姑に怪力ネタでいじられる嫁役のコントでコメディアンヌとしての才能を開



TBS『3年B組 金八先生』が社会現象になるほど高視聴率であっても、テレ朝の『ワールドプロレスリング』にタイガーマスク登場して大ブームが起きていても、物心付いた時から常に金曜夜8時は日本テレビ『太陽にほえろ!』を見続けてきた自分、志穂美悦子がゲスト主演したこの「怪盗107号」をリアルタイムで観た時、「おっ、珍しく豪華なゲスト出してきたなあ!」と思ったものだ。


当ブログ記事 「3年B組 金八先生」vs「太陽にほえろ!」

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11207862630.html


それにこの「怪盗107号」、志穂美悦子の魅力を目一杯引き出した傑作回でもある。当時同じ日本テレビで放送されていたアニメ『キャッツ・アイ』から着想が得られたのか、志穂美悦子の役どころは美術品だけを狙うスタイリッシュな泥棒で、もちろんJACの〝売り〟である躍動的なアクションシーンも満載。それに対する七曲署捜査一係側の相手役は、神田正輝演じるドック刑事と申し分ない。


この「怪盗107号」の直後、当時『必殺仕事人Ⅳ』出演中の三田村邦彦が、ジプシー刑事としてただ一度きりの復帰&ゲスト主演回「ジプシー再び」(1984年3月9日放送)も繰り出していくなど、1984年春の番組改編期に入れ込んだ世良公則演じるボギー刑事殉職編三部作や7月の番組開始12周年記念のヨーロッパロケ前後編に向けて弾みを付けていった。