【東京フィルメックス】「祭の馬」馬はそこに生きているのに、人間の勝手で命が削られる。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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東京フィルメックスで「祭の馬」を観ました。


ストーリーは、

東日本大震災後の福島県南相馬市を舞台に、1頭の馬がたどった数奇な運命を追ったドキュメンタリー。「ミラーズクエスト」という名のかつて競走馬であったこの馬は、大した成績をあげることなく引退し、売られてきた相馬で震災に遭う。津波にさらわれ、更には原発事故の影響で2週間放置されるという苦難を生き延びたものの、怪我による化膿で男性器が異様に腫れ上がってしまった馬。いずれは食用馬となるはずであったこの馬が勇壮な神事「相馬野馬追」に参加するまでを追いつつ、その背景に震災をめぐる現代社会の問題を浮き彫りにする構成が見事だ。東日本大震災を扱った数多くのドキュメンタリーの中でも異彩を放つ作品である。

という内容です。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-祭の馬

ドキュメンタリーなのですが、前半は、マジでドキュメンタリーという感じの、インタビューがあったり、追っていくような部分があったりするのですが、後半になると、馬を中心に、その活き活きした姿を無心になって追っているような映像が多くなり、ちょっとドキュメンタリーっぽく無い感じなんです。監督は、自分で知らないうちにこうしていたっておっしゃっていたのですが、この二つに分かれた意味って、あったような気がしたのよねぇ。


大震災で、相馬の馬たちは津波に遭ったんだけど、なんとか生き延びていたんです。でもね、その映像を観ると、天災があった事は馬も理解していそうだったんだけど、何故、人間が来なくなっちゃって、どうして世話をしてくれないの?って思っているようでした。何かあっても、いつも人間は一緒に居てくれたし、身体が汚くなったら洗ってくれていたのに、津波で汚くなった身体はそのままで、ご飯も持ってきてくれない。どうしちゃったの?という寂しそうな顔に見えました。その馬たちは、その後、原発事故の為に、その地域に入れない人間のせいで、餓死してしまう馬も多数居て、何とか生き残った馬たちも、隔離されるような状態でした。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-祭の馬

全て人間のせいで、馬の人生も命も左右され、その責任を人間が取らなくてはいけないのに、ただ、自分達の事ばかり考えていて、動物たちはそのまま放置され、命を落としていくって、どう考えてもおかしいと思うのは私だけなんでしょうか。東電が被災者に責任を取るのは当たり前だけど、そこに生きていた動物たちの命に対しては、誰が責任を取るの?蟻だって、蝉だって、ミミズだって、みんな生きていたのに、全ての動物に放射能が降り注ぎ、もしかしたら、ゴジラやガメラのような動物に変化して、出てきてしまうかも知れない。もちろん、仮定の話だけど、命に対しての責任って、やっぱり取らなくてはいけないよね。それは、東電とかいうより、人間が全員で責任を取らなくちゃいけない事だと思うんです。この映画を観て、すごくそう思ってしまいました。


馬はね、被災して放置され、不潔な状態で、栄養も悪かったから、病気になったり、怪我が化膿してしまったりして、おチン○ンが腫れてしまったんです。馬だって、おチン○ンは大切よね。子孫を残さなきゃいけないし。でも、放射能を浴びてしまった馬は、子孫を残す事も許されないし、もしかして放射能のせいで、精子も影響を受けてしまっているかも知れない。どちらにしろ、おチン○ンは、使えないんです。怪我が先か、放射能で宝の持ち腐れになってしまったのが先か、彼(馬)の人生って、何なんでしょう。でも、これ、馬の話だけど、人間も、もしかして・・・。色々、考えてしまいます。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-祭の馬

彼らは、元々は競走馬で、レースで勝てなかったサラブレッドが家畜となり、食用へと流用されて行くはずでした。でも、放射能を浴びた彼らは、食用とは出来ないので、そのまま、祭事の馬として使われるだけとなりました。この話の部分で、恐ろしい話があったのですが、映画に出ている方は正直な方達だったので、馬も牛も、政府に言われるようにしたのですが、どうも、政府の制限が入る前に、食用の牛や馬を、地域から持ち出した方達も居たようです。その動物たちが、食用にされてしまっていたら恐いと思うのですが、そんな事は無いと思いたいです。


そんな事があっても、馬は、真っ直ぐに人間を見て、文句の一つも言わないの。ただ、私たち人間に寄り添って、人間の仕事を手伝ってくれる。いつの時代からか、馬は、人間の家畜となり、その人生を私たちにくれたんです。だからこそ、彼らの信頼を裏切った人間は、どこまでも、いつまでも彼らに責任を取り続けて行かなければなりません。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-祭の馬

この映画が二部に分かれているように、撮り方が変わると書きましたが、私は、前半は、馬と言うものがどう人間と関わっているのかを描いていて、後半は、彼らにしてしまった事の責任を人間が取らなくてはいけないよって教えてくれているのではないかと思いました。それほどに、後半は、馬の活き活きした姿が描かれていて、こんなに美しい動物に、なんて酷い事をしてしまったんだろうという思いが沸々と沸いてきたんです。

この映画、馬を中心に描かれていますが、馬の姿を人間に置き換えてみたらどうでしょう。馬を扱っている人間を行政、馬が一般市民と思うと、本当に悲しくなりませんか?もちろん、行政もどうしようも無かったことは理解が出来ます。今更、文句を言おうと、悪態を突こうと、過去は変わりません。でも、未来は変えられる。もっと被災地の事を考えて欲しい。但し、私は、安易に原発を止めろとか言うつもりはありません。それに代わる、確かなエネルギーを早急に作る事が先決です。だって、人間は、これからも生きて行かなければいけないんですから。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-祭の馬

それと、このドキュメンタリーを撮影する時の話で、秘密保護法案が通ってしまったら、こういう撮影は出来なくなるかも知れないという話がありました。ハッキリ言って、この法案の事は良く解りません。マスコミは、恐ろしい事ばかり吹き込んでいて、真実が解らないからです。中国や韓国と緊迫している今、全ての情報が垂れ流しのままで良いはずがありません。情報が全く伝えられなくなるのは恐ろしいですが、全ての情報を一般市民に伝える必要もありません。その選択が難しいと思いますが、時間がかかったのでは、意味がありません。第三者機関とか言って、毎回、会議なんてやってたら、あっと言う間にミサイルを撃ち込まれます。これはダメ、これは良いというものを、完結に短時間で判断することが必要ですよね。ただ反対と叫ぶのはバカでも出来ます。対応策を出して、反対するのが大人の対応じゃないですか?


正しい判断を、正しい選択を、そして、最後まで責任を取るという覚悟を誰もが持つべきなんです。もちろん、この相馬の馬たちに対してもです。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-祭の馬

すごく長い感想になってしまったけど、この映画、すごく深くて、考えれば考えるほど、泣けるし、覚悟が必要になるし、凄い感動だったんです。馬という、美しく気高い動物を追っているのが、また、心にグッと来たのかも知れません。私は、本当に、馬が好きです。そう思いました。

この映画、私は、超お勧めしたいけど、上映館が少ないんですよね。もっと、色々な所で上映して欲しい。私、大震災や原発の事を描いた映画、随分観ましたけど、人間がベラベラ悲しみを話しているより、動物の真っ直ぐな瞳だけの方が伝わるんです。私たちの罪が解ります。誰の責任でも無く、人間の責任です。それを、沢山の人に解って欲しい。もし、お時間があったら、ぜひ観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。


P.S : 監督にサインを頂いて、映画館でも観ますってお伝えしたら、ありがとうって言われました。感動でお礼も出来なかったけど、こちらこそ、ステキな映画をありがとうって言いたかったです。



東京フィルメックス 「祭の馬」公式サイト     http://matsurinouma.com/