図書館は誰のもの? | 浅慮相乗のブログ

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図書館法 という法律があります。 その目的は「図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与すること」です。

その中に、次のような記述があります。

「第三条  図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意し、おおむね次に掲げる事項の実施に努めなければならない。」

図書館は学校教育を援助することがその使命に含まれるようですね。

でも、このブログの一番最初のエントリ 「あなたの街のおしゃれなブックカフェ」 で触れた武雄市図書館は、中学校から嫌われてしまったようです。

12月8日に武雄市図書館に関する集まりが3件、ありました。

図書館問題研究会 群馬&栃木支部学習会:武雄市図書館を見てきた

静岡図書館友の会 2013年 第2回図書館セミナー
「ポイントが貯まる図書館は快適ですか?-武雄市立図書館の事例-」

最後の集まりに参加したのですが、そこで、耳を疑う話を聞きました。

「武雄市某中学校では、武雄市図書館は商業施設と云うことで、通うことが禁止となったそうですw」

これは、参加された方のツイートですが、私も同じ発言を聞きました。

はい?中学校の図書室って、そんなに沢山、本があって、図書館要らないくらい充実しているんですか?発言された方はご自身が武雄市に住んでおられるのではなく、お知り合いの方から伺った話として紹介されていました。

まあ、世間話って、けっこう伝言ゲームみたいに内容が変わってきたりすることもないではないですからね。まさか子どもが図書館に行くのを禁止するなんて、そんな馬鹿げた話、何かの間違いでしょうと思いました。

でも、違いました。この集まりに来られていた武雄市の市民の方が、さらりとおっしゃったのです。

「青陵中ですよね、聞いてます(´・ω・`)」

はーいー?すいません、よる年波で耳が遠くなったので、聞き間違えましたかのう。

よくよくお聞きしますと、全く立ち入り禁止というわけではなく、下校時に立ち寄ってはならないとのことでした。

佐賀県立武雄青陵中学校 は併設型中高一貫教育校です。通常の市立中学校よりも広い範囲から生徒がやってきます。時には、帰りに保護者と待ち合わせて用事を足すなどということもあるかもしれません。保護者の方は、できるだけ安全な場所で子どもと待ち合わせをしたいと考えるのが人情でしょう。その点、図書館ならうってつけです。待っている間、読書や勉強をするのにこれ以上の場所はなかなかないのでは無いでしょうか。

でも、駄目です。立ち寄り禁止だから。

武雄市図書館は閲覧場所と同じフロアに書店とカフェが同居しています。

蔦屋書店 武雄市図書館
スターバックスコーヒージャパン 蔦屋書店 武雄市図書館店

フロアの様子については、こちらの記事に50枚もの写真が掲載されています。

ハフィントンポスト日本版
「図書館総合展「"武雄市図書館"を検証する」全文(樋渡啓祐市長、糸賀雅児教授、CCC高橋聡さん、湯浅俊彦教授)激論、進化する公立図書館か、公設民営のブックカフェか?」

公式ページの館内マップ では少し分かりづらいのですが、入口からすぐのところに書店とコーヒーショップがあり、図書館本来の所蔵書籍、閲覧場所には商業ゾーンを通り抜けないと行けないようになっています。

そりゃ、中学校の下校途中に寄り道したら、必然的に商業施設に立ち入ることになっちゃいますよね。

では、高校生なら問題ないのでしょうか?

実は、県立武雄高等学校の生徒は武雄市図書館を利用するに当たり、2階の学習室しか使えません。なぜ、1階の閲覧席を使用してはいけないのでしょう?

これが原因かどうか定かではありませんが、図書館を利用した高校生がカフェの利用者専用の席を、商品を購入せずに利用したという濡れ衣を着せられたことがありました。

武雄市図書館を利用しこれからも利用したいと考えている受験生の感想 #takeolibrary

中学生は下校時に立ち寄れず、高校生は2階しか使えない。

でも、もっと小さい子ども達は?

子供コーナーはあります。一応。でも、絵本が3mの棚にディスプレイされているという有様。

武雄市図書館を訪れた方のレポートと反応

また、所蔵されている書籍も、やや物足りないとの評価も。

#武雄市図書館 観察1時間

一体、武雄市図書館は、誰の為の図書館なのでしょうか?



同じ発言を聞かれた方のブログがアップされています。

能無しの呟き《土鍋と麦酒と炬燵猫》
佐賀県武雄市図書館はブックカフェなんですよやはり

「学生に寄り道禁止令が発布されるような図書館がこれまで他にあっただろうか。」

「「あそこ立ち寄るくらいなら自宅で勉強しなさい」と言われる図書館のある町。何が市民価値の向上なのだか、さっぱりわからん。図書館だなんて言わなきゃ良いのに。雰囲気とおしゃれ感と収益を目指した結果は見えたような気がした。あそこは本当に図書館とは違う別のものになったのだね。」

同感です。是非、ご一読ください。



[12月9日追記]
武雄市の樋渡市長は、現在開催中の武雄市議会定例会において、県立青陵中学校による下校時の生徒が武雄市図書館に立ち寄ることを禁じた措置について不満を表明した模様。

「常識と違うようなことを中学が言っちゃダメ。不見識だ。青陵中学校の校長の見識を問いたい。」

地元中学生の図書館制限令を批判 佐賀・武雄市長


電話で青陵中学校、武雄高等学校に図書館に関する規制を確認された方がいらっしゃいます。
このツイート に続く一連のツイートで記述されています。


[12月10日追記]
青陵中学校が配布した プリント を Facebook にアップした方がいらっしゃいました。


新聞社系のwebにこの問題が取り上げられ、中学校側が規制解除しました。しかし、これは市による、県教育委員会への横槍であると見ることも可能です。なぜなら、武雄市図書館に登下校時の中学生を立ち寄らせることを躊躇わせる要因が除かれていないからです。

日本経済新聞

西日本新聞

私見としては、中学校側の立入制限措置は、やむをえないものだったと思います。あの図書館は物販ゾーンを通らずには本来の図書館エリアに入ることができず、中学校の規則としては登下校時に商業施設に立ち寄ってはならないとなっていたのですから。実際、改修前の図書館は立寄を制限されていませんでした。

なぜ、中学校は制限をかけなければならなかったのか?そして、なぜそれを再度変えねばならなかったのか?

考えていただければ幸いです。