今年も1月17日がやってきます。1995年のこの日、阪神淡路大震災が起きました。地震がおきたこの日の未明、筆者は大阪・箕面市の下宿で寝ていました。体験したことのない強烈な揺れに体が凍りついたようになったのをいまでも鮮明に覚えています。

 多くのボランティアが炊き出しなどの支援を行う光景が被災地の随所にみられました。

 さて、きのうのことですが、渋谷区・神宮通公園 (宮下公園北側にある通り沿いの公園)を訪れた際、当時のことを思い出しました。役所が閉まる年末年始に路上生活者・生活困窮者を支援しようと宮下公園で「越冬支援」としてテントを設置して炊き出しなどを行っていたボランティア団体に対して、渋谷区(桑原敏武区長)は12月29日深夜から30日未明にかけて、警官隊や職員100人ほどをつかって力づくで追い出しました。命を守るためのボランティア活動を税金を使ってぶち壊すとんでもない暴挙です。この暴挙による被災者というべき路上生活者と支援者が、やむをえず避難しているのが神宮通公園だったのです。

 多くの方にぜひ訪ねて、話を聞いたり壁新聞に目をとおしてほしい場所です。








 きのうの神宮通公園では、夜半になって冷え込みが厳しくなるなか、ストーブでわずかな暖をとり、「被災者」が支援者とともに炊き出しをしたり医療相談をおこなっていました。この光景が、筆者の目には19年前の阪神淡路大震災のものとダブって見えたのです。

 しかし、決定的に違う点がありました。災害をもたらしている原因がほかならぬ行政自身にあり、かつ大マスコミが徹底的に黙殺している点です。

 閉庁期間なので詳細を確認することができませんが、張り紙などによれば渋谷区都市公園条例に基づく公園の閉鎖、退去命令だとおもわれます。

 【同条例12条】
 区長は、公園の損壊その他の理由により、その理由が危険であると認め垂れる場合又は公園に関する工事のためやむを得ないと認められる場合においては、公園を保全し、又はその利用者の危険を防止するため、区域を定めて、公園の利用を禁止し、又は制限することができる

 はたしてこれが今回の追い出しの根拠になるのか、はなはだ疑問です。

 追い出しが行われた当時、宮下公園には野宿者と支援者20~30人がいたそうです。頭部に大怪我をして病院で治療を受けた後に寝ていた年配の方もいたそうです。越冬支援は御用納めの翌28日から1月5日まで予定していて、開始に先立って渋谷区役所に主催者が相談したという事実があります。つまり、今年は閉庁期間が9日と長期に及ぶため、普段やっている緊急支援や生活保護の事務処理を24時間体制でやってほしい、そして炊き出しを認めてほしい、という申しいれをしたのです。これに対して区側からは明確な返答はなかったものの、拒絶はなかったそうです。

 越冬開始の前日27日には、路上生活者が死亡するという出来事もあったとのことです。命にかかわる人道的活動に対して、区長が恣意的としか思えない理屈で追い出したわけです。こんなことが平気でなされるのであれば、たとえば東京で地震があって被災しても、おちおち公園で避難することすらできないのではないのでしょうか。

 南スーダンのPKOには熱心でも、目の前で死にそうになっている納税者にはかくも冷淡なのが、この国の現実です。世界から嘲笑をうけても仕方ありません。

 公園という公共施設を、桑原区長はまるで自分の持ちものと勘違いしているのではないでしょうか。つまるところ、こんなヤバンで品性下劣なことをやってしまう男を区長に選んでしまって税金で養ってよしとする有権者のほうにより本質的な問題がある、そういわざるをえないのです。