ロシアピアニズムにおけるピアノ奏法の大きな特徴の1つに、非常に合理的で無駄のない、身体にやさしい奏法であるということが共通しているように思います。

ですから、手を傷めて腱鞘炎になることもありませんし、子供のころからピアノをやっていない、大人のアマチュアの方でも無理なく弾けるようになりますし、これはプロにも言えることですが、一般的な奏法で生じる、年齢とともに弾けなくなってゆくということもありません。



ここでは、便宜上、現代奏法と述べることにします。



本来、人間の指というものは、物をつかむようにできています。

一般的な奏法では、基本的に、指を上にあげる筋肉とさげる筋肉、両方を使いますが、現代奏法においては、指をさげることしかしないといっても過言ではありません。



そして、一般的な奏法では、指の独立、指の関節の強さ、言い換えるならば、関節の固さが要求されます。

これでは生まれ持った手の性で、その人の演奏能力が決定されてしまうことになります。

指の関節が柔らかくて反り返ってしまう方は、指が安定しないため、なかなか上達しませんし、その関節を強くするという考えが一般的に思われていますが、私の経験では指の関節自体が強くなるとは思えません。

また、一般に広まっている練習方法で努力されても、指の関節は強くなることはないと断言します。

この考えに関して、私の友人である、医学博士、岡崎史子氏も同じ見解です。

もし、その努力で上手くなるのでしたら、テクニック的な観点から見て、世界の超一流レヴェルのマルタ・アルゲリッチのようなピアニストが日本からぞくぞく出てくるはずですが、ほとんどがそのレヴェルに到達していないのが現実です。



それに対して、現代奏法では、指を上にあげることはしませんので、指の独立は関係ありませんし、指の関節で支えますが、指自体の関節を固めて支えるのではなく、手首の裏側の腱を強くし、その腱で指を支えることができるようにならなければなりません。

ですから、関節が柔らかい方でも、手首の腱で指を支えられるようになるので、指が安定しますし、指を立てようが、ホロヴィッツのように伸ばそうが、自由自在の角度で弾くことが可能になり、よってどんな作品の個所でも、自分の指の長さやバランスに応じて、楽にポジションがとれるのです。先にあげたアルゲリッチの手を見てもわかるように、彼女の指は様々な角度に変化します。



この、指が安定するということは、脱力の観点から考えて、非常に大切なカギを握っており、安定することによって、手のひらや指の緊張から解放されるのです。



特に大人のアマチュアの方に多く見受けられるのは、腕の重さを指で支えられないために生じる、腕や手のこうの力みです。



断言します。



一般的な奏法で、テクニック的な向上を目指しても、不可能だと思ってください。

それは、子供のころから専門的にピアノを弾き続けている方も同様です。50歳になっても、弾き続けたいと望むのであれば、テクニックを現代奏法に変えることをお勧めします。



現代奏法は、言い換えるならば重力奏法であり、これをマスターし、教えられる教師は、私の知る限りでも、既に日本でも数人は存在します。

私がこのブログで、皆さんにお話しさせていただいているのは、私に習えということではなく、日本に数人は存在する現代奏法、または、重力奏法を研究、教えていらっしゃる教師を探し、プロ・アマ問わず、テクニックを変えることを強くお勧めします。



あなたが50歳になっても弾き続けていたければ、そして、今よりももっと弾けるようになりたければです。

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