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『投資のマトリクス①』三橋貴明 AJER2015.8.18(7)
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飛鳥新社「亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな 」予約開始!
当ブログ的に重要なニュースがいくつか報じられていますが、順番に。
あ、予告ですが、来週の水曜日から土曜日については、わたくしが中国に出張するため、ブログは「亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな
」特集になります。
何しろ、中国から普通にブログのエントリーを上げられるかどうか分かりませんので、事前にアップせざるを得ないのです。とはいえ、首尾よく中国からアクセスできた場合、チョロチョロっと、近況を書き込むつもりです。
というわけで、同じテーマが四日連続続きますが、飽きずに「人気ブログランキング」のリンクをクリックして頂けると嬉しいです。
さて、藤井聡先生が珍しく「原子力発電」に関するインタビューに出ていらっしゃいました。
『【原発再稼働を語る 5】 藤井聡氏
https://www.oita-press.co.jp/1002000000/2015/08/27/KA20150806DH1299200010
原発の再稼働に限らず、社会的に大きな影響のある判断には必ずメリットとデメリットがある。それをきちんと比較した上で結論を出すことが肝要だ。東京電力福島第1原発事故から間もなく4年半となる。感情的な反原発の熱が冷めつつある今こそ、冷静な議論をすべきだろう。
原発を動かすデメリットとは過酷事故のことで、今や全国民がリアルに理解している。一方で、原発の長期停止も人命に関わる大きなリスクがあることをほとんどの人は理解していないようだ。
原発の長期停止の影響で、火力発電の燃料費など年間3・7兆円の国富が海外に流出している。これは消費税で言えば1・5%の増税に匹敵する。しかも税金のようには政府が再分配できず、ただ海外に流れるだけなので、実質的には3%増税の悪影響とほぼ同等と想定できる。
乗数効果を2倍とすれば、日本の実質国内総生産(GDP)は年間7・4兆円縮小する。この縮小は公平に負担されず、社会の弱いところに集中するから、中小企業の倒産や失業者の増加はさらに加速する。
一方、統計上、デフレ期に実質GDPが1兆円減ると年平均42人の自殺者が増える。つまり、原発停止による経済悪化で年間311人の自殺者が増えている計算になる。
原発再稼働の是非を議論するには、福島の悲劇だけでなく、原発停止に伴う経済の悪化と自殺者の増加という悲劇も直視することが必要だ。』
藤井先生が、
「乗数効果を2倍とすれば、日本の実質国内総生産(GDP)は年間7・4兆円縮小する。」
と書いていらっしゃいますが、これがいわゆる「負の乗数効果」でございます。原発を再稼働しないことで、我が国は強制的にGDPを3.7兆円(貿易赤字として)減らされているわけです。
所得(GDP)を強制的に3.7兆円減らせば、負の乗数効果が働き、乗数効果2としても7.4兆円のGDP押し下げ効果が働いてしまいます。しかも、消費増税の場合は「政府が財政出動で国民に所得を返す」という形でカバーできますが(安倍政権はカバーしていませんが)、貿易赤字の場合、所得は「行きっ放し」になります。
そういう意味で、我が国は現在、
「原発再稼働のペースが遅く、貿易赤字+負の乗数効果でGDPが抑制されている」
「安倍政権の消費税増税により国民が所得を奪われた(約8兆円)にも関わらず、財政政策で返還してもらえない」
という、二重の意味で所得(GDP)を「政策的」に押さえつけられてしまっているわけです。
そう考えると、それでもGDPが横ばい若干マイナス程度で推移している我が国の国民経済は、もしかしたら恐ろしく頑健なのかも知れません。これで、まともな政策に転じれば・・・・。
ちなみに、原発と貿易赤字の話を書くと、すぐに、
「経済のみで判断するな!」
と、お叱りを受けてしまうのですが、わたくしは(恐らく、藤井先生も)別に原発推進というわけではないですよ。日本のエネルギー安全保障が確保されるなら、将来的に「脱原発」しても一向に構いません。
が、脱原発を本気で実現したいならば、
「原発並の安定発電が可能な代替エネルギーの開発」
「実用可能な大容量蓄電池の開発」
「使用済み核燃料の再処理技術と地層処分技術の確立」
「既存の原発の廃炉技術の確立」
と、少なくとも上記に莫大な投資を実施し、技術力を高めなければなりません。そのためのおカネは誰が出すべきでしょうか。普通は、電力会社でしょう。
九電は、川内原発1号機を稼働させることで、月に75億円の収支改善効果が見込まれます。すなわち、原子力発電所を一基稼働させれば、年に900億円、利益が増えるのです。他の電力会社も、ほぼ同じです。
電力会社が原子力発電所を随時、再稼働することで、利益という「投資の源泉」が生まれ、脱原発のための投資がはじめて可能になります。脱原発、脱原発、繰り返している人は、電力会社の収益改善なしで、どのように上記の各投資を実施するのか、具体的な案を教えて下さい。
無論、政府が税金をつぎ込むのでも、一向に構いませんよ。脱原発、脱原発とうるさく叫んでいる以上、自分たちが払った税金が「脱原発のための技術開発投資」に使われることは、当然、認めますよね。
もっとも、電力会社が投資をするにしても、源泉はわたくし達の支払っている電気代なのですが、いずれにせよ脱原発のためには「莫大な投資」が必要であることを理解して欲しいのです。
ところが、未だかつて、脱原発・反原発派から、「技術開発投資」に関する具体的な話(コスト含む)を聞いたことがありません。というか、考えたことがないんでしょ、どうせ。
結局、無責任なのです。電力会社が原発を再稼働しないことで、日本のエネルギー安全保障は揺らいでいます。
ここで、何らかのイベントが発生し、日本のどこかでブラックアウト(大停電)が発生した日には、脱原発・反原発派は、
「電力会社は、何をやっていたんだっ! 殺す気かっ!」
などと、自分たちがやっていたことを棚に上げ、電力会社に責任を転嫁するに決まっているのです。彼らのこの種の無責任体質が、心の底から嫌で嫌でたまりません。
繰り返しますが、わたくし個人としては原発を使い続けようとも、脱原発を果たそうとも、どちらでも構いません(エネルギー安全保障が強化されるならば)。構いませんが、せめて「具体的な話」で議論をしましょうよ。
財政問題やデフレ対策が典型ですが、日本に欠けているのは、この「具体的な議論」なのです。抽象論(国の借金が~! ハイパーインフレーションが~! 財政ファイナンスが~!などなど)や、感情論(原発は嫌っ!とか)で問題を解決することは、この世の誰にもできないのです。
「抽象論や感情論ではなく、具体的な議論をしよう」に、ご賛同下さる方は、
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