チョン・ミョンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団第841回オーチャード定期演奏会、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式)。
トリスタン<テノール>:アンドレアス・シャーガー
マルケ王<バス>:ミハイル・ペトレンコ
イゾルデ<ソプラノ>:イルムガルト・フィルスマイアー
クルヴェナール<バリトン>:クリストファー・モールトマン
メロート<テノール>:大槻 孝志
ブランゲーネ<ソプラノ>:エカテリーナ・グバノヴァ
牧人/若い水夫<テノール>:望月 哲也
舵手<バリトン>:成田 博之
新国立劇場合唱団
12月にウィーン国立歌劇場で4回、トリスタンを振るチョン・ミュンフン(トリスタン:ディーン・スミス、イゾルデ:ウルマーナ)。
11月の日本公演は富山、福岡、そして今回の東京の3回である。
私の三度の飯より好きなトリスタンとイゾルデ。この曲、聴き始めるともう止まらなくなってしまう。
今日の公演、歌手が予想を上回る水準でその点では大変によかった。
トリスタンを歌ったシャーガー、私は初めて聞く名前である。トリスタン役にしてはやや線が細いけれど歌唱は終始安定していて、美声。私はこういうトリスタン、嫌いではない。当初予定されていたジョン・マック・マスター(この人の名前も初耳だ)の代役が割と直前に決まったものの、これだけ歌えるのはなかなかである。年齢が行って声が熟してきたら、おそらくさらにいいトリスタンになるであろう。
イゾルデ役のフィルスマイアー、この人も全く知らなかったが、知らない名前でこれだけ歌えるイゾルデがいたとは…声に張りがあって堂々たる声量(そしてみかけ)はまさにワーグナー・ソプラノである。第1幕最後と、第2幕では高域のフォルテが若干苦しいところがあったが、全体としてはかなりの水準。ただ、「愛の死」はなんぼなんでも声がでかすぎだろう。「愛の死」冒頭の”Mild und leise…”があんなに大きな声で歌われたのは初めて。その上、愛の死はテンポがかなり速かったが、あんまり遅いと高音がきついからだろうか…
ブランゲーネはグバノヴァ。彼女は今まで何度も聴いているが、ぱっと見ちょっと細くなっただろうか…実に安定していて、繊細。クルヴェナール役のモールトマン、ザルツブルクでドン・ジョヴァンニやグリエルモを聴いているが、今日も堅実な歌いぶりで大変好感が持てる。マルケ王のペトレンコ、この人も相当聴いているが、ワーグナーを聴くのはゲルギエフがマリインスキーを連れてきてリング全曲をやったときだけである。深い味わいのある低音が心地よく、特に弱音が美しかった。
新国立劇場の男声合唱はやはり輝かしい。出番少なかったが喝采。
今日の最大の問題はオケだろう。技術的には何の問題もないのだが、弦の音が団子のように丸まって混濁するのは、ホールのせいなのだろうか?
前奏曲は相当息が長かったが、ちょっと間延びする感じだった。そして、言っても仕方ないが全曲を通して弦がうねらないのだ。例えば第3幕の冒頭の低弦、フルトヴェングラーの録音ではもう地の底からわき上がるような壮絶な音がしているのであるが…録音はしょせん人工的な産物なので比較してもしょうがないが、やっぱりああいう音が欲しいな、と思ってしまう。
チョン、さすがに今日は譜面を見て指揮。ただ、ここぞというところで指揮ぶりと異なり、意外にも切れ味がよろしくなくてもったりしていたのが残念。
トリスタン<テノール>:アンドレアス・シャーガー
マルケ王<バス>:ミハイル・ペトレンコ
イゾルデ<ソプラノ>:イルムガルト・フィルスマイアー
クルヴェナール<バリトン>:クリストファー・モールトマン
メロート<テノール>:大槻 孝志
ブランゲーネ<ソプラノ>:エカテリーナ・グバノヴァ
牧人/若い水夫<テノール>:望月 哲也
舵手<バリトン>:成田 博之
新国立劇場合唱団
12月にウィーン国立歌劇場で4回、トリスタンを振るチョン・ミュンフン(トリスタン:ディーン・スミス、イゾルデ:ウルマーナ)。
11月の日本公演は富山、福岡、そして今回の東京の3回である。
私の三度の飯より好きなトリスタンとイゾルデ。この曲、聴き始めるともう止まらなくなってしまう。
今日の公演、歌手が予想を上回る水準でその点では大変によかった。
トリスタンを歌ったシャーガー、私は初めて聞く名前である。トリスタン役にしてはやや線が細いけれど歌唱は終始安定していて、美声。私はこういうトリスタン、嫌いではない。当初予定されていたジョン・マック・マスター(この人の名前も初耳だ)の代役が割と直前に決まったものの、これだけ歌えるのはなかなかである。年齢が行って声が熟してきたら、おそらくさらにいいトリスタンになるであろう。
イゾルデ役のフィルスマイアー、この人も全く知らなかったが、知らない名前でこれだけ歌えるイゾルデがいたとは…声に張りがあって堂々たる声量(そしてみかけ)はまさにワーグナー・ソプラノである。第1幕最後と、第2幕では高域のフォルテが若干苦しいところがあったが、全体としてはかなりの水準。ただ、「愛の死」はなんぼなんでも声がでかすぎだろう。「愛の死」冒頭の”Mild und leise…”があんなに大きな声で歌われたのは初めて。その上、愛の死はテンポがかなり速かったが、あんまり遅いと高音がきついからだろうか…
ブランゲーネはグバノヴァ。彼女は今まで何度も聴いているが、ぱっと見ちょっと細くなっただろうか…実に安定していて、繊細。クルヴェナール役のモールトマン、ザルツブルクでドン・ジョヴァンニやグリエルモを聴いているが、今日も堅実な歌いぶりで大変好感が持てる。マルケ王のペトレンコ、この人も相当聴いているが、ワーグナーを聴くのはゲルギエフがマリインスキーを連れてきてリング全曲をやったときだけである。深い味わいのある低音が心地よく、特に弱音が美しかった。
新国立劇場の男声合唱はやはり輝かしい。出番少なかったが喝采。
今日の最大の問題はオケだろう。技術的には何の問題もないのだが、弦の音が団子のように丸まって混濁するのは、ホールのせいなのだろうか?
前奏曲は相当息が長かったが、ちょっと間延びする感じだった。そして、言っても仕方ないが全曲を通して弦がうねらないのだ。例えば第3幕の冒頭の低弦、フルトヴェングラーの録音ではもう地の底からわき上がるような壮絶な音がしているのであるが…録音はしょせん人工的な産物なので比較してもしょうがないが、やっぱりああいう音が欲しいな、と思ってしまう。
チョン、さすがに今日は譜面を見て指揮。ただ、ここぞというところで指揮ぶりと異なり、意外にも切れ味がよろしくなくてもったりしていたのが残念。
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