株式会社経世論研究所
講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッター
はこちら
人気ブログランキング に参加しています。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
チャンネルAJER更新しました!
『「原発ゼロ」の真実①』三橋貴明 AJER2014.7.15(3)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
本日はチャンネル桜「報道ワイド日本ウィークエンド」に出演いたします。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1521
さて、久しぶりにユーロ圏経済。
2014年7月までの一年間は、ユーロ圏にとってはいかなる歳月だったでしょうか。ズバリ、
「ギリシャなどのデフレ国のデフレが継続し、ドイツを除く残りの主要国がデフレに近づく」
という一年間でした。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_47.html#Euroinfra
特に、個人的に注目しているのがオランダで、一年前に3%を超えていたインフレ率が、直近で0.2%にまで落ち込んでいます。オランダは供給能力がしっかりしているため、逆に近いうちに0%を割り込んでしまうのではないかと予想しています。
なぜ、オランダのインフレ率がここまで劇的に下がっているかと言えば、別に難しい話ではなく、不動産バブルが崩壊中であるためです。ITバブル崩壊後、ドイツの危機を救うためにECBが金利を引き下げ、過剰になった流動性がユーロ各国で不動産バブルを引き起こします。オランダの住宅価格は、ピーク時(08年)にはユーロ導入時の二倍に達していました。
オランダの住宅価格は、ピーク期よりもすでに20%ほど下がっていますが、これが対可処分所得比で世界最高水準に債務を膨れ上がらせてしまった家計を直撃しています。08年まで、オランダは家計が負債を積み上げる形で経済成長してきました。住宅価格の頭打ちは、家計の借金返済を増やし、消費を抑制し、物価がゼロに向かいつつあるという話です。
最近の世界では、よくある話でございますね。
さて、ECBはユーロ圏としてインフレ目標2%を設定していますが、現実は0.5%です。ECBは銀行の当座預金(ECB預け金)にマイナス金利を設定し、貸し出しを増やそうとしていますが、今のところお金はドイツ国債などに流れてしまっているように見えます。ドイツ国債の十年物金利は1.15%程度にまで下がってしまいました。間もなく、世界三番目の長期金利1%割れ国になるでしょう。
お金が消費、投資(設備投資、住宅投資)に回らない理由が「資金需要不足」であった場合(その可能性は極めて高いと思いますが)、政府が財政出動により需要を創出しなければなりません。ユーロという呪縛により、それができないというならば、せめてECBが国債を買い入れ、量的緩和政策を採るべきなのでしょうが、それすらもできません。理由は、ドイツ連銀バイトマン総裁が頑なに量的緩和策に反対しているためです。
『ECB総裁、頑固なドイツとの対峙必要-90年代前半と類似か
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N96YWA6K50YI01.html
今は亡きドイツ・マルク万歳!米バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの主任市場ストラテジスト、サイモン・デリック氏によれば、これがユーロ安を嫌うドイツ連邦銀行の視点だ。独連銀は今、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が検討する欧州の成長を復活させるための最も積極的な政策に反対しているという。
デリック氏は現在と1990年代前半の類似性を指摘する。92年にはドイツの圧力を受け高金利政策を取っていた英国に通貨危機が発生。フランスがリセッション(景気後退)に陥った93年、独連銀は独マルクを損ねるとして利下げ加速をためらっていた。単一通貨導入を目指す欧州の指導者たちは、仏フランを押し下げる必要性から同年7月までに自国通貨の弾力化を認めた。
18カ国から成るユーロ圏では現在、2年に及んだリセッション(景気後退)からの回復は勢いを欠き、インフレ率はECBが目安とする2%弱の4分の1程度。スペインとギリシャは失業率が20%を超えている。
これまで政策金利を過去最低に引き下げるなどしてきたイタリア出身のドラギ総裁は、ユーロ圏のデフレ阻止に向け量的緩和策を導入するか検討している。その一方で、独連銀のバイトマン総裁は強い通貨を支持し、ECBによる資産購入に反対する趣旨の発言をしている。
バイトマン総裁は5月に南ドイツ新聞に対し、「国債を買い入れない経済的理由がかつてないほど指摘できる。ECBがなぜ今、そうした市場に介入し、金利をさらに低めに誘導しようとすべきなのか」と述べた。
もしドラギ総裁が独連銀のかたくなな態度と対峙(たいじ)することができないか、その意向がなければ、「域内株式市場が弱含み続ける可能性や、ユーロ圏が危機再発に見舞われる恐れ」もあるとデリック氏は指摘する。 』
バイトマン総裁(ECB理事)は、7月18日にマドリードで行った講演の準備原稿で、
「低金利が財政再建のためではなく、新たな支出の財源として利用される危険がある」
と、指摘しました。
何が、問題なのでしょうか・・・・?
バイトマン総裁の言葉からは、日本の財務省同様に、
「財政再建が常に善。財政支出拡大は常に悪」
という「思想」が読み取れます。財政均衡主義という魔物です。
当たり前ですが、財政再建も財政支出拡大も、ついでに書けば量的緩和も、金融引き締めも、増税も、減税も、善でも悪でもありません。政策の善悪を決めるのは「タイミング」であり、政策それ自体ではありません。
経世済民(国民を豊かにする)を実現できるならば、財政再建は善になります。できないならば、悪です。
最近、再び取り上げることが増えてきた「財政均衡主義」という魔物にしても、常に魔物というわけではありません。とはいえ、現実には日本のみならず、欧州までをも浸食し、国民の貧困化を後押ししています。もっとも、ユーロ圏は「ユーロという呪縛」に縛られ、民主主義が制限されています。
日本の場合、国政選挙は近いうちには無いかも知れませんが、民主主義が制限されているわけではありません。明日、取り上げる「介護費抑制」問題もそうですが、政府が財政均衡主義という魔物に囚われている以上、「民主主義」を利用し、問題を解決するしかありません。そして、民主主義とは選挙だけではないのです。
「財政均衡主義」という魔物の呪縛を打ち払おう!に、ご賛同下さる方は、
↓このリンクをクリックを!
◆本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。
◆関連ブログ
◆三橋貴明関連情報
Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
連載中
新世紀のビッグブラザーへ ホームページ
はこちらです。
新世紀のビッグブラザーへblog一覧
はこちらです。