練馬駐屯地・宮崎広明士長の闘い


 86年春ごろ 宮崎(26歳)の自宅に突然、警視庁公安部がロケット弾を打ち上げたゲリラ事件を口実に家宅捜索。


 駐屯地正門を出た直後、20名前後の私服警官に取り囲まれ、身体捜索令状をもって調べられる。
 別の日、私服警官は営内にまで尾行し、同僚隊員数名と共に私服警官を弾劾。


 87年9月中旬 何度か家宅捜索を行われた後、10月下旬をもって4年間の再任用拒否通告。


 10月中旬 不当な再任用拒否の共同署名を第1通信大隊に呼びかけ、在隊陸士の殆ど18名が応じる。
 宮崎は、同僚3人と大隊長に面会。


 10月24日 那覇での天皇来沖反対集会に現職自衛官として参加、再任拒否の思想弾圧を告発。


 10月25・26日 自宅に幹部隊員が張り付き、帰宅を待って懲戒処分を狙うが、処分発動できず、26日再任拒否で追放。
 

 本書の巻末には、鼎談と苦情申し立てや訴状などの資料がつき、仕事外での私的な用事をさせる仕事関係などが話される。


 全体的にアジっている文体で、機関誌を読んでいるような感じで、読ませるものではない。
 それでもこのような内部での闘いは知られるべきだし、外部と連携すべきだったのだが、それはなされないまま、反戦自衛官や内部告発をした人々は追放されていった。


 現在、いじめを受けている兵士は知っているし、『告発! 隠蔽されてきた自衛隊の闇 元防衛省女性事務官が体験した 沖永良部島基地「腐敗といじめの20年』や三宅勝久氏の著作などにも詳しいが、抗う兵士はいるのだろうか?


 一職場のコップ内の嵐でなく、一般の人々がつながりを築けずにいたことで、今でもいじめや体罰事件などを続ける体質のままだ。
  
 著者の小西氏や佐藤・片岡両氏は、現在「米兵・自衛官人権ホットライン」を立ち上げ、現職の相談に乗っている他、片岡氏は『海外派兵!―手記・ゆれる自衛隊員たちの心』なども執筆。
 懲戒免職裁判は負けたが、活動を続けている。


 領土を守れだなんだと勇ましいことを言う連中も、兵士の労働条件や人権を守らずに、どう有事の際に身を挺してくれるのか、考えた方が良い。