【第3回】小保方晴子会見 | 会見観察人!梶原しげる参上!

会見観察人!梶原しげる参上!

49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に入学し
51歳で心理学修士号を取得。
「人間はどんな場面に遭遇すると、そういう反応を示すのか?」
「その発言の裏にある、その人の本音はなんだろう?」
記者会見という大舞台に立つ人を、じっくり観察してみたい。

(C)ニコニコ生放送

 

記者会見を前に、ニコ生には「割烹着で出てくれ!」など
画面にながれる文字がドンドン増えた。

そしていよいよ13時。「キター!」の洪水の中、二人の弁護士に伴われ、

小保方晴子さんが姿を現した。
入院中の病院からやって来たと言う割には実にきちんとした濃紺で

上品な透かし模様の入った、この時期にぴったりな春らしいワンピース姿。

夕方のニュースによれば、外出してショッピングなど

ままならない娘のために母親が用意したものだという。

優秀な娘を育てた母はセンスもなかなかだ。

髪も、美容師を病室に呼んでブロー&シャンプーをしたという。
前回より「押さえた感じのヘアスタイル」は謝罪にはぴったりだ。

首もとをさりげなく華やがせる真珠のネックも上品だ・・・って、
俺は丸くなったドン小西か?

背筋はピント伸ばしているが、歩く姿に申し訳なさがあふれている。
心労から顔が一回り小さくなっていた。

なでしこジャパンの澤穂稀選手が敵チームに追い込まれたときの顔に似ている。
「見た目の悲壮感」はすべて、謝罪には「好ましい」。

「それでは小保方晴子からご挨拶をさせていただきます」

同行した司会役の弁護士から、まるで「結婚披露宴の両家代表者の謝辞」みたいな

紹介をされると、憔悴気味の表情の小保方さんは、

それでも、しゃきっと立ち上がりテーブルのマイクに手を伸ばし、

口へ持って行きしゃべろうとするが、言葉がでない。

深くため息をつき口を開けるがやはり声がでない。

2~3回と、もがくように唇を動かすが声にならない。

「おいおい、大丈夫か?」

全国の大勢の人がテレビに引き込まれた五秒、六秒後。

初めて「このたびは・・」と。やっとでた声に一瞬、自分でも驚く表情をした。

意図した訳はないだろうが、これでアンチ小保方の半分以上は、この瞬間。
「彼女も苦労したんだなあ」と「頑張れ小保方」ムードが盛り上がった、かもしれない。

目をウルウルさせながら、一言一言、途切れ途切れ、時に言葉を失いながら賢明に、

噛み締めるように、およそ6分間ほど反省と悔恨と謝罪の言葉を語り、

前半、中盤、そして後半と3回にわたりほぼ7秒づつ、深々と頭を下げた。

謝罪で頭を下げる時「I AM SORRY」を5回心の中で唱え、

終わるまで頭を上げてはならないというのが「謝罪会見」の原則だ。

 

7秒間とは、「I AM SORRY」を丁度5回言い終得る時間だ!
なんて事を彼女が計算していたとは思えない。

長くなったが、会見観察人の冷徹な目で見ると、

ビジュアル的な謝罪パフォーマンスとしてはここまではほぼ満点だ。

今後記者を前に、こういう機会が有りそうだと思う人は、

是非覚えておきたいという「謝罪の形」を見せつけられた。

その後、テレビ・新聞・雑誌の記者達からの質疑応答。

質問者が手を挙げ小保方さんを挟むように座る室谷・三木弁護士のうち、

三木弁護士が司会者となり質疑応答を仕切る。

大阪人は二人そろうと即漫才になると言われるが、

今回の弁護士二人はその「期待」を裏切らず、

実にすばらしいコンビネーションで小保方さんを守っていた。

三木弁護士は当りの柔らかいおっちゃん口調の関西弁で「のんびり系」に見える。

ところが実際に観察すると実はもの凄くすばやい。

小保方さんが答えにくそうな雰囲気になるとスルッと介入して、

質問をやんわり遮ってしまう。

「そもそもあなたねえ、科学者と言うものは・・」と理屈をこねてから、

見始めた質問者の「ネガティブな空気」を感じた途端

「えー、っと。冒頭申し上げたように、ここは意見披露の場ではございませんもんですから。

 じゃあこちらの女性に行きましょか?」

グッドタイミングで他の記者に振ってしまう。

すかさず室谷弁護士が、法律家とは思えぬ理系の専門用語を

駆使した解説をはじめ、会場を煙にまいたりして場をつなぐ。

その間隙を縫って、ホテルの係員が実に上手にコードをさばいて、

次の質問者の所にマイクを持って行く。この黒服の動きが実にいい!

「行き届いたホテルだなあ」と感心して気がついた。

このホテルは食品偽装等々で「自ら謝罪を実践して見せた名門ホテル」だった。

ひょっとしてその経験が生きていたのかもしれない。何が幸いするか分からない。

こういう「相棒」たちに守られて、会場全体も小保方さんに

好意的な空気が広まって行くのが、私には感じられた。

小保方さんに、わずかに笑顔が見える瞬間も出てきた。

質問者はそれぞれのメディアを背負っているから

何とか他社を出し抜く「クリーンヒット」を打とうと考え、

小保方さんを責め立てようと頑張る。当然だ。

小保方さんと張り合おうとして「テラトーマ」だの「トレース」だの

「ラボミーティング」だの「科学コミュニエティー」だの「専門用語」を使い、

質問の前に滔々と自説を述べはじめると

「うーん、申し立ての範囲、超えとるんちゃうかな・・ほな後ろのブルーの人」と

三木弁護士の割り込みに涙をのむ気の毒なケースもあった。

全体に質問者のクォリティーは高く、よく勉強していて、

質問者同士の連係プレイもなかなかだった。

新聞・雑誌系メディアは専門的かつ、正攻法で責めて行き

「早稲田の博士論号取り消し問題の行方」など、「改ざん」「ねつ造」の本質をえぐり、

倫理を正す。そんな中でもテレビ・ラジオ系からは、

時折「ゆるい」質問が出されるという、何だか妙な流れが出来上がって来る。

テレ朝キャスター「実験ノートが二冊しか無いのは本当ですか?」

単純明快な質問には明解な答えが期待出来る。案の定彼女は答えた。

「理研で質問された時に、たまたま持っていたのが二冊だったというだけで、

 その二冊だけ提出したと言う事です」

その後別の局員が突っ込んだ質問を投げかける。

「もっと多いって何冊ですか?」
「日本だけではなくハーバードにも置いてありますから」

おお、何百冊もあるんだ!と期待したら。

「トータルで?」
「四冊か五冊ぐらい・・・」

「オイオイ、それって少なすぎねえ?」と正直すぎる小保方さんを

心配する視聴者(わたし?)まででる始末だ。

フジテレビ男性が「単刀直入に聞きます。STAP細胞はあるんですか?」

「はい!STAP細胞はあります!!!」

力一杯答える小保方ユニットリーダー。

ニッポン放送からはこんな質問。

「割烹着を着た小保方さんが、かわい子ぶりっこみたいに報道されましたが、

 あの報道にはどう感じましたか?」

「皆さん面白い所に興味を持つんだなあと思いました。

 (それが予想外にエスカレートして)怖いなあと思いました」

この話題に日刊スポーツが乗っかってくる。

「割烹着と、ピンクの実験室はいつからですか?」

「割烹着は3年、4年前から着ていました。

 ピンクの実験室はユニットリーダーになったときに部屋が出来て以来ですが、なにか?」

「理研の広告宣伝作戦」と言われた話しを聞いている記者に、

喧嘩を売っているのではなく、小保方さんが「世間的な興味」に「興味が無い」と

言う事を知る事ができて、これはこれでナイスな質問だった。

 

しかしすぐに弁護士から「本筋と関係のない話しはご遠慮を」と言われてしまう。

会見には、こういう「笑えるシーン」もあったと言うのに、ワイドショーでは
「小保方晴子・涙の会見」のタイトルで、会見の前半のたった1カ所、

小保方さんが流れる涙をハンカチで拭いたワンカットをCM チャンスの度に入れ込んでいた。

いかにもテレビだ。

では小保方さんが会見2時間35分の長丁場で、

たったの1カ所だけ泣いたシーンとはどんな場面だったのか?

「<月刊ザ・リバティー>の○○と申します。STAP細胞の人類への貢献を考えれば、

 すばらしい事だと思っております。理研はその再現実験を小保方さん抜きで

 やろうとしているようですが、(発案者である)小保方さんは参加されるべきだと考えます。

 いかがですか?STAP細胞がこの世から無くなったらもったいない。参加されないんですか?」

と労わるように語りかけ、小保方さんに大エールを送った。

その熱い応援に思わず張りつめた心が緩んだのか、滂沱の涙を流したのだった。

ネットで確認したら、この雑誌は、「幸福の科学」から出版されているようだ。

う~ん!会見観察人である私は、この長時間に渡る会見を繰り返し見ているうち、

科学的でも法律的でもない。1人の厳しい試練に立たされている女性が

健気に戦っていると言う図式で見てしまった。

それが彼女の作戦なら、まんまと乗せられたと言う訳だ。

そして、この会見の本来の意味であるはずの「世紀の大発見の行方」が、

私は、この先どう転ぶのだろうか?などと直ぐに疑問がわくことは無かった。

 

今回は「小保方+弁護士+ホテルマン」と、「参戦した記者達」が

皆で作り上げたこの「涙の会見」は90点!と評価した。