月の無い夜 | 江口昌記の 月のうさぎ

月の無い夜


夜をわかちあうことがなくなってから
さあ どのくらいたつのだろう

きみの長い髪はいつもWaveで
DIATONEのスピーカーをバックにして
壁を照らすZ-Lightの光にシルエットだった

そして
大きな音楽に
たなびく紫の煙
ニコラスのPizzaとシャンパン

あのころなにかをなしとげたわけもなく
いまだなにかをなしとげたわけでもない

月光の似あう夜だった

悔やむでもなく
恥じるでもなく
誇らしいわけもないが
一葉の写真に刻まれた
ひとつながりのサインは
ぼくの胸に半分だけ残されている

いまは
蛍光灯の下に暮らしているのかい

いや きみのことだからいまでも
浮きあがる光の海に沈んでいるだろうね
泳ぐように
詠うように
笑うように
眠るように

白状するとね
ぼくには月光が似あわなくなってきたんだよ

きみが連れて行ってしまった
月の無い夜が続いているんだ






月の無い夜

Snowy Girl / Visual Images provided by Alyssa L. Miller
 




1062014