王道の狗 | 王道の狗雑種ブログ

王道の狗

今日は私のブログのタイトルに頂いている「王道の狗」についてお話します。


「王道の狗」は「機動戦士ガンダム」のコミックで知られる安彦良和さんの作品。(2000年に第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞)


明治時代初期から日清戦争、辛亥革命へと至る激動の時代に「王道」を掲げながらも時代に翻弄される主人公の姿を描いた歴史フィクション漫画です。


「王道」とは古代中国の思想家孟子の考えた君主論で対義語に「覇道」があります。


意味合い的には「王道」は「民のために尽くし、誰もが幸福になるように働いていれば自然とその人には名誉と尊敬が集まり、人々は自ら進んで王を支えるようになる」として理想的な君主の姿であると述べられています。


それに対して「覇道」は「力づくで相手をねじ伏せ、手段を選ばず謀略や武力を用いて強制的に人々を支配する」君主の姿で王道よりも劣っていると述べられています。


「王道の狗」のストーリーは明治時代、国会開設と民主主義を唱える自由党の壮士として数々の事件に関わりながらも逃亡中に強盗事件を起こして北海道の監獄に収容された加納周助と同じく新潟天誅党の風間一太郎が石狩道路建設の強制労働現場から脱獄するシーンから始まります。


追っ手から逃れた二人はアイヌの猟師ニシテに助けられ開拓者である徳弘正輝の元でアイヌ人クワンキムイとして暮らし始めますが、そこで不当に差別され搾取されるアイヌの姿を目の当たりにします。


王道の狗雑種ブログ 加納周助

恋人を売られ激昂し事件を起こしたニシテを救えなかった無力感に襲われた加納は旅の武芸者である武田惣角に「正しいと信じる道を貫ける力が欲しいと」弟子入りし大東流合気柔術を身につけ、やがて朝鮮の近代化を計ってクーデターに失敗し日本に亡命していた革命家金玉均のボディーガードとして貫真人(つらぬきまひと)という名をもらい王道を目指すことになります。



王道の狗雑種ブログ 風間一太郎

一方、風間一太郎は徳弘正輝の妻の妹であるアイヌのタキを籠絡、山中で殺害した鉱山師財部和馬になりすまして本土に渡り明治政府の閣僚、陸奥宗光の元で覇道を目指していきます。


運命に導かれるように互いに王道と覇道の狗となった2人は激動の時代の中でそれぞれの野心のためにぶつかりあっていくことになります。


私はこの話がとても好きで主人公のアイヌ名「クワン」もハンドルネームに頂きました。

「クワン」とはアイヌ語で「まっすぐ」という意味だそうです。


ハッピーエンドとはとても言い難いラストだけれど自分や貧しい人達を利用して裏切っていった者達が栄達していく中でそれに「NO」を突きつけ自分の信じる道を進んでいく加納周助は理想の人物かな…。


物語はフィクションですが登場人物の多くは実在の人間です。


王道の狗雑種ブログ 金玉均



甲申事変に失敗して日本に亡命していた金玉均は日清両国の謀略で非業の死を遂げる。


王道の狗雑種ブログ 武田惣角



加納に武術を教えた武田惣角は大東流合気柔術の袖で伝説的な武道家。



王道の狗雑種ブログ 陸奥宗光

日本が列強国の仲間入りをするには朝鮮、台湾の植民地化は欠かせないと考える陸奥宗光。



王道の狗雑種ブログ 勝海舟


風間の奸計によって再び監獄に捕らえられた加納に坂本竜馬の姿を重ね、助力したのは勝海舟だった。


加納のように今の自分がまっすぐ生きられているか分からないけれど行動の指針みたいになっている物語です。