名前 ――氏(うじ) | 獨と玖人の舌先三寸

名前 ――氏(うじ)

氏(うじ)は、家(家族)の名称。代々引き継がれ、系統(家系)を表す名称です。姓氏(せいし)、姓(せい、本姓)、名字(苗字)。
中世後期から明治時代初期まで、氏とは“姓”(せい、本姓)を指し、“名字”(苗字)とは区別されていました。明治31(1898)年に公布された民法で、氏は“家”の名称と規定。昭和22(1947)年の改正後の民法で、氏は“名”とともに個人の名称となるものと規定されます。原則として、婚姻中の夫婦と未婚の子は、同じ氏を称するものとなりました。夫婦別姓、近代以前は、規定がありませんでした。

※姓――名字、苗字(みょうじ)や氏(うじ)とも言う。
姓、氏、名字という語は、本来別々の意味を有しますが、現在ではほぼ同一の言葉として使われています。明治時代以降は、“氏”として戸籍に記載、管理されています。
(別途:東アジアの漢字文化圏で用いられる血縁集団の名称で、その範囲は地域や時代によって変動し、氏や名字といった他の血縁集団名と様々な階層関係にありました。)

※名字(みょうじ、苗字)――家(家系、家族)の名のこと。
(別途:元々“名字(なあざな)”と呼ばれ、中国から日本に入ってきた“字(あざな)”の一種であったと考えられています。公卿などは早くから邸宅のある地名を称号としていましたが、これが公家・武家における名字として発展していきました。近世以降、“苗字”と書くようになりましたが、戦後は当用漢字で“苗”の読みに“ミョウ”が加えられなかったため、再び“名字”と書くのが一般的になったのです。)

常用漢字としての“苗”の音読みは“ビョウ”。“キ”や“ミョウ”は難読です。しかし“ビョウ”という漢語には、子孫、血筋という意味があります。“なへ”と見ても、種から芽を出して間のない草や木、稲の苗、さなえなど、土地所有と石高の所持が“貫録”の時代、“苗字”と書かれた理由も、定かではありませんが想像できます。

※氏(うじ)――家柄、家系のこと。

明治8(1875)年、太政官布告で“氏”の使用が義務化。
明治9(1876)年、太政官指令で“夫婦別氏制”施行。
明治31(1898)年、旧民法で「夫婦同氏」制定。

以来、現代まですべての日本国民が姓を有し、先祖から受け継がれてきた家庭の名称や夫婦を中心にした家族の名称を指します。家庭内や同姓がいる時は、名のみが個人を表す名称ですが、家庭以外では、姓と名を合わせた“氏名”(フルネーム)で表記することで個人を特定する名称となります。

(過去に幾度か、個人情報記入書類で、“氏名”ではなく“姓名”となっているのを見たことがあります。法に抵触してどうのこうの、とはならないでしょうが……文化の誤り、ですね。)